日経新聞1面連載「戦後70年、これからの世界」8月11日は、佐々木毅・東大名誉教授の「政治主導、ルール明確に」でした。「官僚主導から政治主導に変わりました」という問に対して。
・・・政治主導とは政治家主導だと多くの政治家が思ってしまっている。問題は政権党が公約で約束したことに沿って行動するかどうかだ。
政治家と役所の役割分担は非常に難しい問題だ。大臣・副大臣・政務官チームと役所チームがどうつながるかをもう少しルール化しないといけない・・・
新聞記事と、インターネットの記事、さらには映像とは、表題も内容も一部異なっています。新聞(インターネット)の記事とともに、ネットの記事、映像での語りもご覧ください。
カテゴリーアーカイブ:行政
中曽根元総理の第2次大戦観
読売新聞8月7日、「中曽根元首相、終戦70年寄稿」から。
・・・第2次世界大戦は、帝国主義的な資源や国家、民族の在り方をめぐる戦いであり、欧米諸国との間の戦争もそのような性格を持ったものであった。
他方、アジア諸国に対しては侵略戦争でもあった。特に中国に対しては、1915年の「対華21か条要求」以降、侵略性が非常に強くなった。軍部による中国国内への事変の拡大は、中国民族の感情を著しく傷つけたと言わざるを得ない。資源獲得のための東南アジア諸国への進出も、現地の人からすれば日本軍が土足で入り込んできたわけで、まぎれもない侵略行為だった・・・
・・・ただ、300万人以上の国民が犠牲になったという厳然たる事実を拭い去ることはできない。本来なら、当時の指導者の戦争責任を他者による東京裁判という形ではなく、日本人自らの責任においてこれを裁き、決着を付けるべきだったが、東西冷戦が始まったことで日本社会としての戦争の総括が中途半端に終わってしまった。それが、その後、長く日本人の意識の中で、晴れぬわだかまりとして残る結果となった。
やはり、先の戦争は、やるべからざる戦争であり、誤った戦争であった。
戦後日本の起点はポツダム宣言受諾に始まると考えるのが国際的通念であり、あの戦争と敗戦から学ぶべき教訓を我々日本人は胸に深く刻む必要がある。歴史を正視し得ない民族に、政治の長期安定性もなく他の民族からの信頼も尊敬もあり得ない。点検と反省により、事故の歴史の否定的な部分から目をそらすことなく、これらを直視する勇気と謙虚さを持つべきであるし、汲み取るべき教訓を心に深く刻み、国民、国家を正しい方向に導くことこそが現代政治家の大きな責務でもある・・・
国の財政の全体像・分析
行政の構造的課題2
行政論
行政の構造的課題
2005年5月19日に、東京大学公共政策大学院で講演したときのレジュメです。2004年5月13日のレジュメを差し替えました。官僚論の一環です。公務員改革議論の整理については、公務員改革論議をご覧下さい。
提言・国家官僚養成、一橋大学での講義もあわせお読み下さい。
日本行政の成功と機能不全
-政策課題と構造的問題-
1 国家行政の課題-二つの視角
このリレー講義では、各講師はそれぞれ、省の政策課題をお話になるでしょう。私は、そのような個別課題でなく、日本の行政全体の課題をお話します。たとえて言うと「縦割り」でなく、「横断的視野」からです。
図1
うまく描けないので言葉で書きます:日本の行政には国家行政と地方行政があること。それぞれ、執政(政治・政治家)と執行(狭義の行政・公務員)がある。国にあっては、内閣と官僚。この行政が、日本社会という環境から課題を取り上げ、政策を出力する。
| 国家行政 | 地方行政 | |
| 執政 (政治) |
内閣 (政治家) |
首長 |
| 執行 (行政) |
各省 (官僚) |
市役所 |
(1)各省が取り組んでいる個別テーマ
政策課題、アウトプットとしての課題
(2)国家行政機構が抱えている仕組みの課題
構造的課題、内在する課題
(私がこのような問題関心を持ったのは、これまでの経歴からです)
2 政策課題
構造的課題に入る前に、個別政策課題について簡単に触れておきましょう。
(1)小泉内閣が取り組んでいる課題
→テーマから見た分類
「小泉構造改革内閣」【別紙1:官邸HP】
図1で言うと、国家行政のうち執政(内閣)が取り組んでいる課題。政治主導といってよいでしょう。各省の政策を聞いているだけでは、日本の行政課題全体像を見ることはできないのです。
数多くの項目がありますがそれは、次のような理由からです。
理由の1:小泉首相の意向「構造改革」を掲げている
理由の2:社会が多くの改革を迫っている
理由の3:各省縦割りの官僚制で処理できない
【別紙2:官邸HP】
(2)各省が取り組んでいる課題
→担当部局から見た分類
政治主導に対し、官僚制による対応といってよい。
例えば、この「リレー特別講演」、白書、HP、政策情報誌(「外交フォーラム」「ESP」「自治研究」「地方財政」等の月刊誌)
(3)総務省が取り組んでいる課題【別紙3、パンフレット】
①行政の基本構造 ②分権改革 ③IT
3 構造的課題=国家行政機構そのものの課題
今日の話の中心。まず問題提起から始めましょう。
戦後日本、あるいは明治維新以来、日本社会は世界第一の水準まで発展しました。その際に、行政もまたそれに貢献し、世界一の水準を達成しました。安全、衛生、教育、福祉、社会資本などです。
しかも、貧富の差や地域間の格差を小さくして、日本社会全体で、高度な行政サービスを実現しました。社会は、平等・発展・安定を達成しました。拙著「新地方自治入門」を参照してください
世界一優秀と評価されていた日本の官僚。それが近年、大きな批判にさらされています。その批判を、分類してみてみましょう。
(1)官僚批判
①「官僚の失敗」に対する批判
ア 社会情勢の変化に対応できない:ムダを指摘されている公共事業の続行、需要予測を誤った公共事業
(例)交通量の少ない山の中の道路、米余りのなか続けられる農地造成・干拓、「巨大釣り堀」と揶揄される港湾、水余りの中作り続けられるダム、赤字の本四架橋・東京湾アクアラインなど
実は、これは「与えられた任務を遂行する」という、官僚制の特徴の裏返しです。
イ 業界と一体の行政
(例)BSE問題(外国では危険を指摘されていたのに、対応が遅れたこと。また、輸入牛肉を消却する際十分な確認をせず補償金を払ったこと。これは刑事事件になっています)、
薬害エイズ事件(非加熱製剤の使用禁止が遅れたこと。これも刑事事件になっています)、
金融危機対応(護送船団行政、破綻処理の先送り。公的資金投入が巨額になった)、
補助金行政の続行(地方団体が要らないと言っている補助金を押し付けようとしていること)、
規制改革への抵抗(自動車の車検緩和が進まず。幼保一元化も進みません)
これは官僚制の「部分に特化」によるものです。
ウ 政策の統合ができない:政策の優先順位がつけられない、変更できない
(例)社会福祉より公共事業を優先していること。
道路財源が余り、一方で赤字国債や年金が破綻すると言っているのに、道路財源を回せないこと。公共事業の事業別シェアが変わらないこと。
これは、官僚制の「縦割り組織」によるものです。
エ 費用対効果の疑問:優秀な官僚が毎晩遅くまで残業しているが、それだけの結果がでているか
これは、「目標設定と効果測定は誰がするのか」という問題です。これは次の②につながります。
②「官僚主導」に対する批判
責任の所在はどこにあるか。行政に対する入力は政治の責任。
今日は省略。「新地方自治入門」第10章政治と行政の在り方p287~