ブログ「自治体のツボ」を紹介します。最近も、頻繁に記事を書いておられるようです。地方行政の課題、政府の課題など、結構辛口の評論があります。他方で、身の回りの話や趣味まで。幅が広いです。
去年に紹介したことがあります。
カテゴリーアーカイブ:行政
データでみる首相官邸
日経新聞が12月29日から、「データでみる首相官邸」という連載を続けました。
29日、官邸支える人材3割増、首相が精鋭指名 官僚機構も強化
30日、内閣府・内閣官房の出身省庁、経産が最多
31日、首相と面会、外交・安保トップ急増 財務次官は少なく
1月1日、経済財政諮問会議、小泉政権より4割減少
第2次安倍政権になって、官邸の仕事の仕方が変わったと、多くの人が指摘してます。しかし、それらの指摘は断片的で、実証的ではないようです。
このように、数値を挙げて検証することは良いことですね。あわせて、政治主導はどのように変わったか、その方法の解説も欲しいところです。
かつては、各省庁の仕事の仕方について、マスコミや研究者が検証しました。ところが、官邸と内閣官房のしくみや仕事の仕方については、これと言った研究がありません。
そして、この連載でも取り上げられたように、内閣官房は急速に組織人員、仕事の範囲が広がっています。
省庁改革直後の2001年には、515人だったものが(予算定数)、現在では1,188人と2.4倍に膨らんでいます。この外に、併任発令職員がいると思います。
内閣人事局、国家安全保障局という実施組織もできました。1府13省庁と並んで、内閣官房が省庁並みの組織になっています。組織図。組織と定員。
行政学としても、取り上げて欲しい組織です。
企業と役所の思考の違い、その2
「千に三つ、役所と企業の違い」(9月8日)の続きです。このような企業と行政との思考の違いを、広げてみましょう(これもまた、下書きをしたまま、放置してありました)。
一つは公平な取扱いです。
企業の場合は、買ってくれる層を対象とします。買わない人は、相手にしません。しかし、役所の場合は公平原則で、対象となる人は全員平等に扱います。もっとも、企業であっても「公共的サービス」は、平等に扱うことが求められます。
時間についての、意識の差も出ます。
企業は、他の企業に先駆けて新しい商品やサービスを売ろうとするので、なるべく早く作るのが良いことです。完璧を期す必要はなく、やってみてダメだったらやめればよいのです。これに対し、役所の場合は税金で行うので、新しいサービスを作る際に検討することが多くなり、時間と手間がかかります。
もっとも、役所のすべての事業や仕事の進め方を、このような基本的条件の違いで説明することは問題でしょう。
「お役所仕事」という批判です。そこには、遅い、融通が利かないという指摘が含まれています。企業との違いを前提としつつも、そのような批判に説明できるように、しなければなりません。
あなたがやっている仕事について、それが正しいかどうか。その「試験」は、簡単です。あなたが、住民の立場に立ってみることです。
あなたBが申請者であって、市役所の担当者であるあなたAに向かって、「それはおかしいだろう」と言うようでは、あなたAの仕事ぶりは失格です。「公平原則」や「慎重な検討が必要なのです」は、言い逃れでしかありません。
政治家が示す目指す社会像
12月4日の朝日新聞オピニオン欄、国分高史・編集委員の「仏改憲が教えること めざす社会像、論じるのが先」から。
・・・ フランスは戦後、昨年まで27回の憲法改正を経験している。多くは議会の行政監視機能の明確化など統治機構に関するものだが、憲法院(憲法裁判所)による違憲判断を克服し、研究者に「特筆すべきだ」と評価されている例がある。
1999年と2008年に、男女の平等な社会参画を促す条項を加えた改正だ。前者は議会選挙の候補者を男女同数にすることを政党に義務づける「パリテ法」制定に道を開き、後者はそれを議会だけでなく、企業の取締役など広く社会一般に広げることを目的とした。
仏国民議会(下院)の女性議員比率は、改憲前の水準から4倍近い40%になった。ひとまずここまで来るには、女性たちの粘り強い運動や議会内外での論争など、国民合意に向けた長年の積み重ねがあった・・・
・・・フランスでは家父長制の伝統が根強く、1789年の人権宣言でも女性は対象外とされた。女性参政権が認められたのは、欧米ではかなり遅い1944年のことだ。
それでも70年代から女性の政界進出の機運が高まった。82年には社会党の女性議員が北欧発祥の「クオータ制」を地方議会選挙に導入する選挙法改正案を提出。候補者名簿に25%以上の女性を載せることを政党に義務づける内容で、議会を通過した。
だが、憲法院はこの改正案を違憲と判断した。全ての市民は法の前に平等であり、性で候補者を区別するのはフランス共和主義の理念に反するという理由だった。
この壁を乗り越えるには、どうしたらいいのか。そこで出てきたのがパリテの理念だ。一定割合を女性にあてるクオータ制には、男性への逆差別との批判がつきまとう。これに対し、パリテはざっくり言えば「世の中は男女半々なのだから、議会も男女半々に」というものだ・・・
・・・政治の動きを、最後に後押ししたのは世論だった。憲法のどの条項を改正するかをめぐり、政府・国民議会と保守的な元老院(上院)が対立すると、一般紙だけでなく大衆紙や女性ファッション誌も競うように賛否両論を特集。関心が薄かった市民を巻き込み、パリテに消極的と見られた上院に批判的な論調が強まっていった。
上下両院は妥協に向かい、政府案提出から1年後の99年6月、「選挙で選ばれる公職への男女の平等なアクセスを促す」など二つの条項を加える案が、両院合同会議で可決された。採決では、国民投票がなくても成立する「有効投票の5分の3」を超え、ほぼ満場の賛成票を集めた・・・
・・・この経験から日本が得られる教訓は何か。「多くの人が正義だと考える政治課題の実現を憲法が妨げている時、合意をつくって改正という最終手段をとる。これこそが憲法改正のあるべき姿だと思います」と糠塚さんは話す。
私は、日本でも女性議員を増やすためにすぐに改憲すべきだと主張したいわけではない。フランスでも改憲までの丁寧な合意形成やその後のフォローアップがなければ、前進はしなかっただろう・・・
アメリカ外交に見る官僚の重要性
12月2日の日経新聞オピニオン欄、ジャナン・ガネシュ(ファイナンシャルタイムズ・USポリティカル・コメンテーター)の「米の官僚「不在」、対中冷戦に影」から。
・・・米国が旧ソ連との冷戦に勝利するのにブルージーンズやロック音楽、ベルリンの壁の撤去を呼びかけたレーガン大統領の演説などが効いたと思うと喜ばしい。
もっとも冷戦で「封じ込め」政策を提唱したのは国務省のジョージ・ケナンだった。それを軍事的戦略に仕立てたのも同じ国務省のポール・ニッツェだ。中国をソ連から引き離す取り組みは1972年のニクソン大統領の中国訪問より何年も前から水面下で続けられていた。
政権交代に影響されない官僚が舞台裏にいなければ、米国がソ連を制することはできなかっただろう。裏方の努力で大局的な見地や揺るぎない方向性といった民主主義国家が独裁国家に対抗するうえで重要なものがもたらされた。
米国が今度は中国と向こう数十年、覇権を競うというなら「ディープステート(闇の政府)」が再び必要になる。ホワイトハウスの元ロシア担当フィオナ・ヒル氏や在ウクライナ大使館の参事官デービッド・ホルムズ氏など、トランプ大統領の弾劾調査で議会証言したような官僚たちだ・・・
・・・米国人でない筆者にはディープステート、つまり行政府は米国の宝のように思える。行政府は誰にでも開かれた民主主義を支える。先日、議会証言した人々のように勤勉で公共心が強く、専門的な資格を持つ官僚が大勢働いている・・・