カテゴリーアーカイブ:社会

学歴が評価されない日本、高学歴が減る

2019年12月10日   岡本全勝

12月8日の日経新聞1面トップ「チャートは語る」は、「博士生かせぬ日本企業 取得者10年で16%減」でした。
・・・世界は新たな「学歴社会」に突入している。経営の第一線やデジタル分野では高度な知識や技能の証明が求められ、修士・博士号の取得が加速する。主な国では過去10年で博士号の取得者が急増したのと対照的に、日本は1割以上減った。専門性よりも人柄を重視する雇用慣行を維持したままでは、世界の人材獲得競争に取り残されかねない・・・

少子化の影響ではありません。4年制大学の入学者は、増えているのです。多くの人が4大卒で満足し、大学院まで進まないのです。その背景には、企業や社会が大学院卒を求めていないことがあります。その基礎に、大学での教育に専門性を期待していないことがあります。

日本の企業は、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待しているようです。採用面接の際に、「大学でどのような学問をしたか」ではなく、「学生時代に一番力を入れたことは何ですか」と問うのだそうです。学生の答は、サークル活動とバイト経験です。
学問に励まない学生、卒業生という「製品」に品質保証をしない大学、大学に学問を求めない企業。三者のなれ合い構造です。そしてそれを当然と思っている国民も、同罪です。「企業の採用面接に見る日本型雇用」

詳しくは記事を読んでいただくとして。グラフがいくつか付いています。諸外国との比較が一目瞭然です。

と書いていたら、12月5日の朝日新聞オピニオン欄に、ジョセフ・M・ヤング、駐日アメリカ臨時代理大使が「減る日本人の米留学 関心高め同盟の土台に」をかいておられました。
・・・日本への米国人留学生数が増える一方、米国へ留学する日本人が激減しているのだ。1997年に約4万7千人いた日本人留学生は昨年、約1万8千人となった・・・

中根千枝先生「タテ社会と現代日本」

2019年12月9日   岡本全勝

中根千枝先生の新著『タテ社会と現代日本』(2019年、講談社現代新書)を読みました。『タテ社会の人間関係』(1967年)は半世紀にわたるベストセラーなので、読まれた方も多いでしょう。「紹介」

新著は、タテ社会から現代日本を読み解いたものです。
タテ社会では、参加者は全面的な参加を要求されます。それが、長時間労働を生みます。契約や資格によって参加していないので、長くその組織にいる者が上位に来ます。それが、新参者へのいじめ、非正規雇用問題を生みます。家族という小集団が、家庭内虐待問題を生んでいることなど、ハッとさせられる指摘が並んでいます。

『タテ社会の人間関係』は1967年、昭和42年の出版です。東京オリンピックが昭和39年、大阪万博は45年です。高度経済成長の前半期でした。それから半世紀、日本社会は大きく変貌しました。しかし、場を重視するタテ社会という、日本社会の基本構造は変わっていないようです。
いま、連載「公共を創る」で、社会の文化資本、この国のかたちを書いているところです。中根先生の本も、引用しています。この項続く。

ネット社会でも共有されない情報

2019年12月8日   岡本全勝

12月4日の朝日新聞オピニオン欄、今年のノーベル化学賞受賞者、吉野彰さんのインタビューに、興味深い話が載っています。
「ネット社会が進み、情報を共有しやすくなっていますしね」との問いかけに。先生は、「ぼくは逆だと思う」と否定しておられます。

・・・表面的な情報はみんなが共有しているけど、肝心の情報は意外とつかめていないんですよね・・・情報を出す側は差し障りのない情報は出すけど、ひそかに自分で考えているアイデアなんて、絶対に出さないですよね。もし出すとしたら、夜の席でワインを傾けながらでしょう・・・
原文をお読みください。

詰め込み教育からの脱却

2019年11月29日   岡本全勝

11月27日の朝日新聞が「変わる定期テスト ノート持ち込みOK」を伝えていました。詳しくは記事を読んでいただくとして。

定期テストに、自学ノートなら何冊でも持ち込める公立中学が紹介されています。もちろん、記述式です。この自学ノートは、毎日1ページ以上自宅学習し、教員に提出する自作のノートです。原則手書きのみで、教員が毎日、中身を点検します。

良い改革だと思います。これまでの試験の多くは、記憶力を問うものでした。一夜漬けで、試験が終わると忘れて、それでおしまいになってしまいます。そして、それら覚えることは、社会人ではほぼ活用されません。それよりは、考えること、それを文章にすることの能力が重要です。

私も、大学で教える際は、試験は記述式にしました。そして最近は、ノートも書物も持ち込み可にしています。学生たちに暗記を強いることは、非生産的です。それより、ポイントを理解し、どこを調べれば分かるかという能力をつけて欲しいのです。

欧米のエリート採用

2019年11月28日   岡本全勝

11月26日の日経新聞夕刊、海老原嗣生さんの「就活のリアル」は「超高年収新卒採用の課題 エリート選抜の根拠甘く 」でした。欧米のエリート採用の厳しさが、紹介されています。

・・・ブランド校の学生数が極めて少なく、少数精鋭となっている。米国の主要大学、ハーバードやスタンフォード、エール、プリンストンなどは文理合わせて1000人超の定員数だ。同様のフランスの名門グランゼコールは500人程度だろう。対して日本は慶応大学が7000人、早稲田大学にいたっては1万人にもなる・・・

・・・とりわけ米国のエリート採用は厳しい。リーダーシップ・プログラムという選抜システムがあり、入社後2年間に時限的プロジェクトを多々任され、それを修了した後に本採用となる。その間の脱落率は5割にもなる。ここまでやるから、エリート待遇も成り立つ。

日本の甘い甘い採用慣行の中に、形だけ欧米要素を取り入れてもうまくはいかない。こうした奇をてらう学生集めは、毎年打ち上げ花火として耳目を集め、しばらくすると消えていく。
雇用関連を見つめてもう30年になるが、いつもながら感じるのは大企業の人事は流行ものに弱いということだ。学歴不問採用、一芸採用、異能人材など一風変わった採用で耳目を集めたケースは多々ある。ただ、そんな小手先の施策は、決して良い結果は残していない・・・

この内容を見ると、日本は確かに甘いですわね。これまでは、それでやれたのです。しかし、競争相手のいなかった唯一の追いかけ国だった昭和の日本と、欧米だけでなくアジア各国と国際的に生き残りを賭けた競争をしなければならない令和の日本とでは、条件が大きく変わりました。
優秀な幹部を育てない会社は淘汰されます。では、地域独占企業である自治体はどうか?