カテゴリーアーカイブ:政治の役割

倒産防止かゾンビ企業延命策か

2018年12月11日   岡本全勝

12月9日の朝日新聞連載「平成経済 リーマンの衝撃12」「大変革迫られた中小企業」から。

・・・政府は中小の倒産を防ぐために、手厚い政策をとった。その一つが、2009年に施行した中小や住宅ローン利用者の借金の返済猶予を促す「中小企業金融円滑化法」だ。中小からの求めがあれば、貸し付け条件の変更に応じるよう金融機関に求めた。13年までの間、約30万~40万社が貸し付け条件の変更などをしたとされ、全国の中小の約1割にあたる。

「運転資金としてお金を借りるのは初めての経験。『禁断の実』に手をつける気持ちやった」。工作機械や航空機部品をつくる「大阪工作所」(東大阪市)の高田克己会長(74)は振り返る。1億5千万円の機械を購入できるほど業績は安定していたが、リーマン後は赤字続きで、金融機関から約1億円を借り入れた。「国に助けてもらえなければ、消えていたかもしれない」。新入社員の採用を再開するなど、経営は軌道にのりつつある。

08~09年に1万5千件を超えた倒産件数は、17年には8400件まで減った。円滑化法の効果があったとされる一方で、政府が技術力もない中小を延命させたという「ゾンビ企業」批判もつきまとった。
関西の中小企業団体幹部は「企業数が温存され、業界によっては消耗戦が続く。力のある企業の競争力を奪っており、ゾンビ企業が残った弊害だ」と指摘する・・・

難しいところです。各種の政策には、副作用もあります。それは、薬も同じです。その際に、どれだけ副作用を小さくするかが、課題になります。
また、緊急時は、副作用を知りつつ、強行する必要がある場合もあります。しかし、平時になっても、緊急時と同じことをしていると、批判が出ます。
アダム・スミスの時代のように、経済や産業に国家が介入しない時代なら、こんな問題は生じなかったのですが。国家と経済の関係、国がどこまで介入するかは、永遠の課題です。

税金を逃れる国民

2018年12月7日   岡本全勝

日経新聞12月5日のオピニオン欄、The Economistの翻訳「中国、所得課税強化の皮算用」から。
「「もちろん払っていませんよ。私はバカじゃありませんから」。個人所得税を納めたことがあるかと聞かれて、北京の運転手リュウ・ヨンリ氏(仮名)はこう答えた。同氏の所得は納税が免除される水準を大きく超えているが、税逃れをしていてもとがめられたことはない、としゃあしゃあと語った」という書き出しです。

・・・中国の昨年の全税収に占める個人所得税収は、わずか8%にとどまった。彼のような強い思い込みをしている人が少なくないことがその一因かもしれない。ちなみに一定規模の経済国家のグループである経済協力開発機構(OECD)加盟国における個人所得税収の全税収に占める比率の平均は24%だ。

中国財政省の推計では、個人所得税を納めるべき国民は1億8700万人に上る。だが2015年に実際に個人所得税を納めたのは2800万人と全人口の2%にすぎないと財政省のある元職員は言う。中国政府は現在、中国共産党機関紙「人民日報」によれば歴史的に「最も抜本的」な個人所得税改革を進めている。だが、その抜本改革は理論的には税収基盤を拡大するのではなく、縮小するものだ。

10月1日から所得税の課税最低限を月収3500元(約5万7000円)から5000元に引き上げたのだ。この結果、財政省は課税対象者が6400万人に減ると見込んでいる。その一方で、財政省は、納税義務が生じる国民には確実に納税させる決意を固めているようだ。政府のこの方針転換は、政治的に極めて大きな意味を持つ可能性がある・・・

膨大な赤字財政の責任

2018年11月21日   岡本全勝

11月21日の日経新聞、坂口幸裕記者の「財制審、消費増税の必要性訴え」から。

・・・財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は20日にまとめた2019年度予算への提言で、19年10月に確実に消費税率を10%に引き上げるべきだと訴えた。増税対策に万全を期す必要性を訴えつつ、将来の財政膨張にクギを刺した。一方、財政が悪化した平成の30年間を「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める圧力にあらがえなかった時代」と総括。財制審には悔悟と無力感が漂う。
「税財政運営にかかわったもの全てに責任がある」。財制審の榊原定征会長(前経団連会長)は20日、提言した後の記者会見で、財政再建が遠のく現状に無念さをにじませた。「警鐘を鳴らし続けながらも、このような財政状態に至ってしまったことは反省しなければならない」とも語った・・・

・・・借金以外に財源の裏付けがないのに歳出が積み上がる財政構造になって久しい。1989年に始まった平成は国の借金が膨れあがった30年間だった。90年度に大蔵省(現財務省)の悲願だった「赤字国債発行からの脱却」をいったん実現したが、わずか4年で終わった。国の借金はいま900兆円の目前だ・・・

財政制度等審議会の提言はこちら

「財政再建より経済再生」と財政規律

2018年11月7日   岡本全勝

11月4日の朝日新聞連載「平成経済」は「「リーマン」免罪符、歳出膨張」でした。

「2008年9月のリーマン・ショック後の日本経済は大きく落ち込んだ。「財政再建より経済再生」という大合唱のもと、政府は過去最大の経済対策を打ち出し、財政は一気に悪化した。危機対応だったはずの経済対策や増税延期は、「経済最優先」という名のもとで10年後のいまも続き、財政規律は緩んだままだ」という書き出しです。中に。次のような記述があります。

・・・2009年5月に成立した補正予算に盛り込まれた経済対策の規模は、過去最大の15兆円超。財源のうち10兆8千億円は借金で賄う計画で、当初予算と合わせた09年度の予算額は初めて100兆円の大台に達した・・・
・・・リーマン・ショック直後の09年当時は、衆院解散・総選挙が迫っていた時期だった。それをにらんだ与党内からは、「奇策」も飛び出した。・・・しかし、麻生氏や与謝野氏はこうした案を退け、当面は経済再生を優先させつつ、3年後には消費増税にめどをつけ、財政再建を進めると訴えた。当時の最大野党・民主党が消費増税を封印し、子ども手当や高速道路無料化などをアピールしていたことに対し、あえて財政規律を重視する姿勢を示し、「責任政党」をアピールする狙いもあった・・・

当時、麻生総理、与謝野経済財政担当大臣の最も気を遣われたところが、この点です。

定住外国人政策

2018年11月3日   岡本全勝

10月30日の朝日新聞オピニオン欄「多民社会、ニッポン」、鈴木康友・浜松市長の「ロボット扱いしない制度を」から。
・・・国は90年当時から、ずっとダブルスタンダードです。経済産業省は「労働力として必要」という。けれども法務省や文部科学省、厚生労働省は腰が引けています。外国人の支援に乗り出すと、事実上、移民を受け入れることになってしまうからです。本音と建前が相反したままではよくありません。国に欠けているのは、外国人を受け入れる覚悟ですね。
労働力と考えてすませようとするからダメなんです。入ってくるのはロボットではありません。血の通った人間の集団です。どうやって社会に統合するかということを考えなければなりません。
今回、外国人労働者の受け入れを本格的に進めることにした国の方針は一歩前進だと思います。ただ滞在を原則5年にし、家族帯同も認めないといった規定はどうでしょうか。それは人をロボット扱いしていることになります。
「入国管理庁」を設置し、入国審査をしっかりするという方針にも賛成です。ただ残念ながら、社会統合に取り組む部署ではなさそうです。日本に入れたら現場まかせで、問題が起きたら犯罪者として捕まえるくらいのことしか考えていないように見えます・・・

10月28日の朝日新聞には、遠藤乾・北海道大学教授の「外国人政策 国が地方に丸投げ」も載っていました。