カテゴリーアーカイブ:政治の役割

能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援

2024年2月28日   岡本全勝

2月22日の日経新聞に、斉藤徹弥・編集委員の「能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援」が載っていました。詳しくは原文をお読みください。

・・・能登半島地震で被害の大きい石川県の奥能登地域を対象に、住宅再建の支援金を実質的に上乗せする政府の方針が波紋を広げている。災害大国の日本は誰もが被災者になり得る。被災した地域や時期、居住形態で手厚さが異なる制度は、公平性などの観点から十分な検討が必要だ。
住宅再建への公的支援は被災者生活再建支援法に基づき、300万円まで支給される。これに加えて政府は奥能登6市町の高齢世帯などに、さらに最大300万円を給付する新制度を打ち出した。支給額は最大で2倍の600万円になる。

支援金は国と都道府県が折半で出資する基金から拠出している。総務省は全国知事会に引き上げを打診したが、知事会は「引き上げる根拠はない」と否定的だった。
引き上げは知事会でもかつて議論したことがある。ただ過大な公的支援は地震保険加入や耐震改修などの自助を損ないかねない。地域事情に応じて独自に上乗せする都道府県もあり、財政負担を考えれば全国一律の制度は最低限が望ましい。
議論の末、知事会は「自助、共助、公助のバランスが重要」「支援金は見舞金的なもの」として300万円の上限を維持する報告をまとめた。今回の対応もその方針に沿ったものだ。

「できる限り支援したい気持ちはみな持っている。その中でなぜ能登半島地震の被災者にだけ、これだけ多額の税金が投入されるのか。政府の説明は十分でない」。千葉県の熊谷俊人知事はこう注文をつけた。
熊谷氏が挙げる問題点は住宅支援を巡る課題の本質を突く。
まず過去の災害や今後の災害との整合性だ。昨今の物価高を反映するのはよいが、被災した時期で額が2倍も異なるのは公平性を損なう。
次に地震保険に加入したり自費で耐震改修したりした人との間にも不公平感が生じかねない。被災後、賃貸を選んだ人への支援は最大150万円で、持ち家世帯と数百万円の差がつくことをどう考えるか。

行政は本来、住宅などの私有財産の形成に公費を投じるのは避けるべきだという考え方がある。
被災者生活再建支援法は、住宅は復興に不可欠で公共性があるとして住宅再建への公的支援に踏み出した。だが、防災の基本は自助、共助、公助。それぞれが機能するよう常にバランスに気を配る必要がある。
政府は新給付金を奥能登に限った特例としている。だが災害時の特例は新たな前例として踏襲されやすい。南海トラフ地震や首都直下地震で上乗せするなら給付金は巨額になる。丁寧な議論が欠かせない。

鳥取県知事時代、国に先立って住宅支援制度を設けた片山善博氏は「軽はずみだ。公的支援には経緯もバランスもあり、個人財産に税金を使う根源的な問題もあるのに、そうした議論を素通りしている」と指摘する。
被災地に寄り添う姿勢を見せることで政権浮揚を狙ったと見透かされれば、多くの地域の反感を買い選挙にも逆効果だ。行政の公正さこそ、信頼回復の第一歩である・・・

私がコメントライナーに書いた「工程表のない政治」の問題とも共通します。

定額減税の事務負担

2024年2月26日   岡本全勝

2月14日の日経新聞に「定額減税、事務負担に苦慮 企業・自治体1回限り」でも改修」が載っていました。

・・・岸田文雄首相の肝煎り政策である定額減税を盛り込んだ所得税法改正案が13日の衆院本会議で審議入りした。減税開始まで半年を切り、企業や自治体からは事務負担への懸念が強まってきた・・・
詳しくは本文をを読んでいただくとして。事務負担の課題は、大きく3つあるようです。
一つはこの記事にあるように、1回限りの減税でも、企業などは従業員への給与支払いの際に源泉徴収するので、そのシステム改修が必要です。
もう一つは、今回の減税は所得税3万円、住民税1万円で合計4万円。家族がいるとその人数分です。一月の源泉徴収額がこの数字を超えていれば、その金額を減額すればすみますが、引き切れない場合は、翌月以降から引き去ります。その計算が必要です。

さらに面倒なのが、次の問題です。
税金を納めていない低所得世帯は、この減税の恩恵を受けることができません。その世帯には10万円給付します。これで二本立てになります。さらにこの間に、税金は納めているけれども、減税額までは納めていない世帯があります。その世帯には、減税しきれない額を給付します。これはかなり複雑になります。

そもそも減税は、税金を納めていない、あるいは少ない納税額の低所得世帯には効果がない、効果が少ない政策です。その人たちを念頭に置くなら、減税より給付金の方がはるかに簡便です。マイナンバーカードに銀行口座を紐付けておけば、簡単に給付できます。

IMF、所得税減税の効果疑問視

2024年2月24日   岡本全勝

2月10日の日経新聞が「IMF対日経済審査、所得税減税の効果疑問視」を伝えていました。

・・・国際通貨基金(IMF)は9日、日本政府が6月に実施する所得税と住民税の定額減税について「成長に及ぼす影響は限定的と予想される」との見解を表明した。物価上昇率が日銀目標の2%程度に落ち着くと見込み、大規模な金融緩和を終わらせ、段階的な利上げに踏み切るよう促した。
年に1度の対日経済審査を終え、声明を公表した。
日本の財政政策に関して、厳しい見方を示した。経済が引き続き回復していることから、歳出抑制など引き締め策に軸足を移すべきだと提起した。
なかでも、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税は債務状況を悪化させると指摘・・・
このほかにも、補正予算を毎年編成する慣行も、改めるべきだと訴えています。

至極まっとうな議論と思うのですが。
日本人、特に日本の報道機関などは、世界からの評価を気にするのに、このようなことは気に掛けないのですかね。自分に都合のよいことだけ、引用するのでしょうか。

OECDの対日経済審査報告書

2024年2月1日   岡本全勝

1月11日に、経済協力開発機構(OECD)が2年に1度の対日経済審査の報告書を公表しました。ウエッブで「主な結論」をクリックすると、日本語の要約を読むことができます。
日経新聞、1月12日「日本に定年制廃止を提言 OECD、働き手の確保促す」は、次のように伝えています。
・・・経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。

OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。

高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。
OECDに加盟する38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。
日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。
職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。
OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した・・・

このほか、次のような項目も提言しています。
・段階的な消費税増税などの税収確保
・年功序列賃金からの脱却
・同一労働・同一賃金の徹底
・非正規労働者の被用者保険の適用拡大

批判もする友人の意見を聞く

2024年1月27日   岡本全勝

1月10日の朝日新聞オピニオン欄、藤田早苗さんの「「人権のレンズ」持てる教育を」の続きです。

―日本の人権状況について、国連の人権機関や専門家から繰り返し、懸念が表明されたり、勧告が出されたりしてきました。
「驚くのは、日本政府は勧告にまったく耳を傾けようとしないことです。2021年に国会提出を断念した出入国管理法(入管法)改正案に対し、国連人権理事会の3人の特別報告者などが国際人権基準に照らした問題点を指摘したところ、当時の上川陽子法相が『一方的な見解で、抗議せざるを得ない』と反発しました。『クリティカル・フレンド』(批判もする友人)である特別報告者の勧告を無視して、国際社会で信頼と評価を得るのは難しいでしょう」

―「クリティカル・フレンド」とは何でしょう。
「相手のために耳の痛いことでも忠告してくれる友人という意味です。国連人権勧告は友人による建設的な忠告と受け止めるべきなのに日本政府はそれができない。部活動の先輩やコーチから的を射た忠告を受けたとき反論や無視をしますか。多くの国連加盟国は勧告に真摯に向き合い、建設的に対話を重ねています」

もっとも、まったく意見を聞かない国や人もいて、ひんしゅくを買っています。日本がそうなってはいけませんよね。