7月24日の朝日新聞に、「やめられないのか、答弁書 官僚激務「ブラック霞が関」」が載っていました。
・・・長時間労働が常態化し、「ブラック霞が関」と呼ばれる官僚の働き方。最大の原因は、国会審議の答弁書の作成とされる。しかし、そもそも政治家が質問を政府側に事前通告し、官僚が作った答弁書を閣僚が読み上げるという国会審議のあり方に問題はないのか・・・
・・・国会審議では長らく官僚が事前に議員から質問内容を聞き取る質問取りをし、通告内容を元に答弁書を用意することが常態化。内閣人事局が官僚の働き方を調査したところ、今年の通常国会中(2月5日~3月31日)、官僚が答弁を作り終えた時刻の平均は、委員会当日の午前0時48分。与野党は、官僚の負担軽減のため通告は「委員会2日前の正午まで」と申し合わせているが、ほぼ守られていない。委員会の2日前までに質問が通告されたのは1260件(50・4%)で、前日午後6時以降の通告は173件(6・9%)あった。
長時間労働が問題になる官僚の働き方は「ブラック霞が関」と呼ばれ、官僚離れが進む。官僚による答弁書作成はその最大の原因とされる。
しかし、参議院規則第103条は「会議においては、文書を朗読することができない。但(ただ)し、引証又(また)は報告のためにする簡単な文書は、この限りでない」と規定。原則的に文書の「朗読」は禁じられており、衆議院規則でも似たようなルールがある。にもかかわらず官僚任せの答弁はいつから始まったのか。
終戦直後、衆参本会議では議員同士が自由に意見を述べる「自由討議」が設けられた。田中角栄氏が「明朗なる政治、すなわちガラス箱の中での民主政治の発達助長に資すること大なり」と演説した。だが1955年の国会法改正で規定が削除。自民党一党優位による「55年体制」以降、官僚作成の答弁を読み上げる形式が定着していく。
原因の一つが自民党の「事前審査制」の導入だ。法案は自民党内で議論、了承を得たうえで、国会に提出されるようになった。学習院大学の野中尚人教授(比較政治)は「与党が国会論戦を回避するための仕組みで審議が形骸化した。国会は野党の抵抗の中で、与党が事前に党内で決めたものをただ追認する場となった」。
ただ、過去には官僚答弁からの脱却をめざす動きもあった。98年には、小沢一郎氏率いる自由党(当時)が、自民党と連立政権を組む条件として、閣僚に指示された官僚が答弁を担う政府委員制度の廃止を主張し、その後に実現。党首討論も導入された。
2009年に誕生した民主党政権も「政治主導」を掲げて答弁のあり方を見直そうとし、質問取りは政治家である政務官が担うとした。だが政権発足から1カ月ほどで平野博文官房長官(当時)が官僚に質問取りを要請したことが発覚。民主党政権は短命に終わって次の政権交代可能な政治状況が作られなかったこともあり、再び官僚任せの答弁は定着した。
一方、欧州諸国の議会は日本と異なる。日本と同じ議院内閣制の英国(下院)では、首相との討論では質問の事前通告はなく、閣僚への質問では通告不要の補充質問が認められている。フランスでも首相や閣僚に対する口頭質問では事前通告しない・・・