カテゴリー別アーカイブ: 地方行政

地方行財政-地方行政

地方創生10年の評価

地方創生が始まって10年になります。6月に、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局と内閣府地方創生推進事務局が、「地方創生10年の取組と今後の推進方向」をまとめています。
そこでは、「地域によっては人口増加等をしているところもあり、この中には地方創生の取組の成果と言えるものが一定数あると評価できる。
しかしながら、国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要」と要約しています。

一方、11月12日付けの日経新聞が「地方創生空転10年、深まる国依存 分配ありき、成長と逆行 かすむ分権」が、数値を示して簡潔に評価をしています。
・・・安倍政権が地方創生を掲げて10年。人口減や少子化はむしろ加速し、成長は鈍った。この間、政府が配るお金に自治体が群がる構図が定着した。コロナ危機も経て進んだのは地方の自立ではなく国への依存だった。中央省庁の権限や財源を移譲する分権の理念はかすみ、伸び悩む税収を自治体間で奪い合う不毛な光景ばかりが広がる・・・
そこに、目指した将来像と現実との比較が図で載っています。
合計特殊出生率は、10年前(2014年)では1.42で、めざしたのは1.8でした。2023年では1.2です。
東京圏の転出入は、2014年では10.9万人の転入超過で、均衡を目指しましたが、2023年では11.5万人の転入超過です。
実質成長率は、2013年までの10年間平均は0.7%で、1.5~2%を目指しましたが、2023年までの10年間平均は0.5%でした。

市債権の徴収一元化

時事通信社の行政情報サイト「iJAMP」10月10日に、橋本一磨・愛知県豊田市東京事務所長の「市債権の徴収一元化を実現」が載っていました。

・・・2013年当時、税を専門的に扱う納税課主査として、ある高齢男性の窓口対応に当たったときの出来事がきっかけだった。男性は、税や後期高齢者医療保険料、市営住宅使用料といった納付書を持って窓口に訪れ、「全部は払えないから相談したい」と話した。しかし、税の部署なので税以外のものは相談を受けることができないと伝えると、怒って帰ってしまった。
男性にとって市役所は一つなのに、税以外の相談は受けられない。役所自ら市民の信頼を失う組織体制をつくり出していることに気付いた。異なる部署でばらばらに行われている債権回収業務を、一つの窓口で行えるよう組織体制の見直しが必要だと感じたが、主査という一担当職員の力ではどうにもならないことも分かっていた。

そこで、14年に各部対抗のプレゼン大会の場を使って太田稔彦市長に直接提案したところ、市長から具体的に検討するよう指示を受けた。15年度に一元化に向けたプロジェクトチームを発足。翌年度から組織体制の見直しやシステム整備を進め、19年度までに26部署がそれぞれで取り扱っていた60種類もの未収債権を一つの窓口に集約した。併せて、17年度に納税課から債権管理課へ名称変更。19年度には、弁護士チームと連携し、官民連携による債権回収を始めた。

債権回収は、多くの課で本来業務ではないとの意識が高く、後回しにされがちだった。税と税以外を重複して滞納する「滞納のプロ」のような人もいて、対応する職員側も専門性の高さが求められる。このため、税務職員の滞納整理に関する知識と経験を、市の全体的な歳入確保のために最大限活用して効率的・効果的な債権回収に取り組んだ。併せて、システム整備に着手。関連情報を紙やエクセルで管理している課が多く、これらを整理して情報を一元的に管理するシステムを構築し、効率的な業務につなげている。
一元化した初年度から成果が数字として表れ、介護保険料や後期高齢者医療保険料の収納率は中核市の中で1位に。一元化後の6年間で、約28億円の未収債権を回収した。

一方で、滞納者の中に一定数、「無い袖は振れない」生活困窮者がおり、支援の必要性を感じていた。債権回収業務は、「取る」「押さえる」「落とす」のいずれかを判断して進めると学んできたが、「立て直す」の視点を追加。これは、債権回収の現場で発見した生活困窮者を福祉部門へつなぎ、自立に向けた支援を行うことだ。弁護士、社会福祉協議会などと合同で納付相談会を開き、弁護士相談で発見した生活困窮者をシームレスに社会福祉協議会へつないでいる。
地方自治体の基本は「住民の福祉の増進を図ること」で、歳入確保による財政健全化の視点と福祉的な側面への配慮の間に、常にジレンマを抱えている。故に、単に債権回収すればいいというものでなく、福祉的側面への配慮など債務者の個別事情を踏まえた対応が必要となる・・・

地方公務員の離職防止対策

9月7日の日経新聞に「地方公務員の離職防げ 福岡県、若手が「働きやすさ」提案」が載っていました。

・・・全国の都道府県が職員の離職抑制に力を入れている。2022年度の自己都合の退職者は全国平均で17年度より46%増えた。就職人気も低下しており、働きやすい職場づくりを進めて20〜30歳代などの定着を目指す。福岡県は若手職員による改善提案制度や長時間勤務の削減などを通じて退職者の増加を抑える。
総務省の「地方公務員の退職状況等調査」から、定年退職などを除く自己都合の退職者を抽出した。22年度実績を都道府県別データの公表が始まった17年度と比べると、全ての都道府県が増えた。県庁職員などの行政職や教育職の増加が目立つ。都道府県別では、鳥取と福岡が増加率を1割未満にとどめたのに対し、熊本は2.6倍、秋田も3.8倍となった。

福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・

・・・福岡県は17年に県庁における働き方改革の取り組み方針を制定。21年度に始めた若手職員による提案制度には3年間で約8600件の改善案が寄せられた。代表例がデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用だ。
補助金の手書き申請のオンライン化、チャットの活用によるペーパーレス化などを実現。デジタル機器の整備といった現場ならではの提案も多い。担当者は「業務効率化に加え、自らの意見が実現することで若手のモチベーション向上にもつながる」とする。
長時間労働の是正では、執務室で退勤処理をした後もサービス残業を続けるといったことがないように、県庁玄関で出退勤を管理するシステムを導入。職員への迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けたマニュアルや掲示用ポスターも用意する・・・

千代田区、複数職員で議員対応

7月31日の読売新聞夕刊に「千代田区が官製談合受け再発防止策「複数職員で議員対応」」が載っていました。

・・・東京都千代田区の発注工事を巡り、区議が職員から聞き出した入札情報を漏らした見返りに業者から賄賂を受け取っていた事件を受け、同区が設置した検討委員会は、複数の職員で議員への対応に当たるなどの再発防止策をまとめた・・・

・・・職員へのアンケートでは、過去5年以内に議員や元議員から公表前の予定価格などの情報提供を求められた職員が部長級の幹部で13・6%に上ることが判明。議員から大声で罵倒されたり、依頼を断ると「お前の人事異動がどうなっても知らない」と威圧されたりするなど、議員によるハラスメントの実態も浮かび上がった。
再発防止策をまとめた報告書では、事件の背景について「議員と良好な関係を構築し円滑な議会運営に貢献したい職員の思いが、適切な判断を誤らせ、非違行為につながった可能性が高い」と指摘。議員に対する職員の行動基準として、「複数職員での対応」「対応記録の徹底」「議員など部外者の執務室立ち入り禁止」などを盛り込んだ・・・
千代田区の発表

地方創生10年

7月18日の朝日新聞に「地方創生、夢の跡 提唱10年、東京一極集中変えられず 交付金、計1.3兆円」が載っていました。

・・・第2次安倍政権が「地方創生」を打ち出してから10年。東京一極集中に歯止めをかけ、人口減少を食い止めようと、これまで約1・3兆円を自治体に配ったが、政府は6月の報告書で「大きな流れを変えるには至っていない」と結論づけた。今後の戦略も描けておらず、「地方創生」の旗印は行き場を失っている。

地方創生は、第2次安倍政権が2014年に新たな成長戦略の目玉として掲げた。異次元の金融緩和で大幅な株高が実現し、富裕層を中心に恩恵が広がっていた時期だ。翌年春に控えていた統一地方選をにらみ、「アベノミクス」の果実を地方に波及させる姿勢を打ち出す狙いがあった。
政府は、地方創生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」を設置。雇用創出や移住などを基本目標にする「総合戦略」を14年12月に閣議決定し、自治体にも数値目標を盛り込んだ地方版の総合戦略をつくるよう求めた。それに応じて新たに創設した「地方創生推進交付金」を配った。

ただ、成果は乏しい。例えば、東京一極集中の是正をめぐり、政府は生活コストの高い東京への人口集中は少子化につながるとみて、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)から地方への転出増を重要目標の一つに掲げた。しかし、政府がまとめた報告書によると、23年の東京圏への転入数は転出数を11・5万人上回り、14年時点の10・9万人より増えた。報告書は「国全体でみたときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていない」と認める。当時より人口が増えている自治体についても「多くは移住者の増加による『社会増』にとどまっており、地域間での『人口の奪い合い』になっている」と指摘した・・・