カテゴリーアーカイブ:著作と講演

資料整理、廃棄

2023年12月27日   岡本全勝

年末に、執務室の棚を少し整理しました。過去の講演会の資料です。
講演会ごとに半封筒を作り、関係資料を入れます。講演骨子や配付資料などとともに、依頼状など庶務的なものです。2年前に市町村アカデミーに来る際に捨ててきたのですが、その後の半封筒がたくさん貯まっていたのです。年間50回くらい引き受けていますから。

私の講演は、主に東日本大震災体験と職員研修です。基本は変わらないのですが、主催者の要望や聴衆に応じて内容を変えます。資料を見ると、少しずつ関心の重点や話す要点が変わってきています。
捨てる資料を見ると、「こんなこともしゃべっていたよなあ」「こんなこともしゃべっていたのだ」と発見があります。忘れているということですね。

積み上げて30センチ近くあったのを、半分くらい捨てました。

連載「公共を創る」第172回

2023年12月21日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第172回「政府の役割の再定義ー官僚に求められる「交渉能力」とは」が、発行されました。

これまでの官僚に求められた能力について説明しています。前回から、官僚が国家全体の利益を考えず、自身の属する省庁や局の利益を優先することがあった点について論じています。
官僚はそれぞれの政策分野での専門家です。しかし、社会や国家全体を忘れて専門分野の利益拡大に力を注ぐことがあったのです。省庁の幹部候補生(上級職。現在の総合職)を育成する際、省内(業界や専門機関を含んでいました)ではさまざまな分野を経験させるのに、省外に出して幅広い視野を身に付けさせることはしませんでした。

官僚には、理解力と説明力という「頭の良さ」とともに、交渉力もあります。官僚は実務家ですから、必ず折衝の相手がいます。折衝には、自らの考えを相手に理解してもら
わなければならない場面だけでなく、相手からの提案や依頼を断ったり後回しにしたりする場面があります。その際には自説を述べるだけでなく、相手に納得してもらう必要があるのです。

このほかにも、官僚に求められた「変な能力」があります。例えば、理不尽なことに耐える能力です。時に、国会議員に無理難題を吹っ掛けられたり、与野党に対する説明の場で厳しい追及に遭ったりするのです。

年内はこれで終わり、新年は1月11日号からです。

コメントライナー寄稿第15回

2023年12月19日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第15回「日本型職場の功と罪」が12月14日に配信され、19日のiJAMPにも転載されました。

驚異の経済発展を遂げた日本。その職場は当時、世界が注目するところでした。しかしいまや、日本の労働者の時間あたり生産性は、経済協力開発機構加盟38か国の27位です。労働の質の面でも、二流になりました。この原因として産業構造の転換の遅れが挙げられますが、私は、職場慣行もあると考えています。

かつては効率的だった大部屋主義が、今では短所になってしまったのです。日本では、仕事が係に割り当てられ、社員は前任者からの引継書を見ながら、同僚の支援で仕事を進めます。これに対し諸外国では、仕事は各人に割り当てられ、職務記述書と執務要領で仕事をします。
「係員全員で助け合って仕事をする」職場は効率的でしたが、前例通りに仕事をこなせばよい時代が終わり、新しい仕事に対応しなければならなくなると、目標を与えられないままでは、社員はどちらに進んだらよいかわかりません。
そして、一人に一台パソコンが入り、職場はいつの間にか個人で仕事をするようになりました。大部屋ではなくなったのです。すると、誰が何をしていて何に困っているかわかりません。各人も、係全体の仕事がどのように進んでいるかを知ることができません。上司が、部下に指示を出し、部下の悩み答えなければなりません。しかし、管理職はそのような訓練を受けていません。

困難に直面しているのが、管理職です。係で仕事をする職場では、管理職は「部下に任せた」ですみました。管理職養成も先輩を見て覚えるもので、社員の中から優秀な者を管理職に抜擢していたので、管理職を育成する仕組みがなかったのです。
日本の職場の生産性を上げるためには、管理職に管理職の仕事をさせることと、管理職を意識的に養成することが必要です。

連載「公共を創る」第171回

2023年12月14日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第171回「政府の役割の再定義ーその変化を巡る考察」が、発行されました。前回から、成熟社会での官僚のあり方を議論しています。まずは、官僚に求められる能力の変化です。

これまでの官僚の役割は、日本を豊かにするために産業を振興し、行政サービスを充実させることでした。そのために、新しい政策や制度を導入し、必要な資源を配分してそれらを実現させることでした。その手法として、欧米の制度を理解し、日本の実情に合うように加工すること、それを関係者に訴えて実現することでした。
これらを遂行するための能力は特別なものではなく、理解力と説明力です。しかし、これまで求められた理解力には、偏りがあったようです。官僚の多くは、技官などを除くと東大をはじめとする法学部出身者が占めてきました。

そして、新しい政策を考える際に情報源を外国に取ったので、外国語の能力が重要でした。また、関係業界からの情報も重要で、それらとの付き合いも必要でした。

官僚は各省に採用され、その分野の専門家として育成されました。しかし、その専門性にも問題がありました。省内では、短い期間で移動を繰り返し、例えば局単位での専門家としては育てられませんでした。他方で、関係業界や学会は身内ですが、省外とは排他的な所管争いをしました。

連載「公共を創る」第170回

2023年12月7日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第170回「政府の役割の再定義ー官僚の人事政策─その現状」が、発行されました。

日本社会の変化を背景に、第157回から官僚の役割について議論してきました。根底には、発展期から成熟期へという社会の大きな変化に、政府も官僚も対応できていないという問題意識があります。しかし、これからの官僚はどうあるべきかについては、十分に議論されてきませんでした。今回からは、行政と官僚の役割の変化に応じて、官僚の仕事をどのように変えればよいか、また官僚をどのように育成すべきなのかについて検討します。

官僚をどのように採用して、どのように育成し、選抜するのか。これについて、制度はもちろんありますが、雇い主である政府の考えを明らかにした人事政策は、最近までなかったように思います。役所の仕事はどうあるべきかについても、共通した方針が示されていたとは思えません。
その原因は、それを考える人事管理部門が重視されなかったせいですが、さらに言えば、人事政策を考える必要がなかったことにあると考えます。
採用後の人事は各省に委ねられ、そして各省には人事政策の専門家がいなかったのです。