カテゴリーアーカイブ:社会の見方

経済の金融化

2011年12月20日   岡本全勝

ロナルド・ドーア著『金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱』(2011年、中公新書)がわかりやすかったです。金融業が実体経済を上回って拡大し、経済活動の中で大きな比重を占めるようになったこと、金融が実体経済と遊離して動き、時には金融市場と世界経済を危機に陥らせることを、分析しています。
この20年間の世界経済の変化を大まかに言えば、国際化と金融化と言えるでしょう。この本は、後者の金融化について書いたものです。

そして経済と政治との関係は、その変化に対応するための自由主義的改革と、金融・経済危機対策であったと言えるでしょう。しかし、日本はまだ十分な経済産業構造の改革を見いだせず、世界各国政府は十分な金融危機対策を打てていません。
何度もこのホームページで書いているように、国際化によるアジア各国の追い上げで、日本のひとり勝ちは許されなくなりました。加工組立型工場とコメの保護によって成り立っていた地方経済は、成り立たなくなりました。これが、失われた20年の原因の一つです。
金融危機に対しては、2008年のリーマン・ショックには、世界各国が協調してひとまずの対応ができましたが、今年のユーロ危機は、まだ続いています。そして、制度的押さえ込みは、まだできていないでしょう。

ところで、ドーア先生には、かつてコラムで私のホームページの記事を引用してもらったことがあります(2007年10月22日の記事)。お礼のメールを打ったら、イタリアから返事を頂きました(10月23日の記事)。

アジアの社員が日本人従業員を指導する

2011年12月14日   岡本全勝

少し古くなりますが。タイの洪水で工業団地が浸水し、日系企業も操業停止に追い込まれました。企業が生産を続けるために、タイ人従業員を日本に呼び寄せて、部品の生産を始めました。
例えば12月4日の日経新聞は、電子部品会社の例を取り上げています。そこでは、タイから来た熟練工が、日本人従業員を指導していることを書いています。1989年にタイに進出して以来、技術を蓄積していて、「日本人では量産ラインを管理できない」と、日本人社長が述べています。
労働力不足を補うために、外国人労働者の入国を増やすべきか否かの議論がありました。その議論より、現実はもっと先を行っているようです。アジア各国が、経済や技術の面で日本に追いつくことは、「日本は優秀だ」と思っていた人にとっては、少々残念なことでしょう。しかし、日本が世界と共に繁栄するためには、アジア各国と日本の経済格差が縮まることが必要です。

日本企業はアジアで稼ぐ

2011年12月10日   岡本全勝

12月8日の日本経済新聞に、興味深いデータが載っていました。主要128企業が、どの地域で収益を上げているかのグラフです。2011年上期(4~9月)では、アジア・オセアニアで48%です。半分をアジアで稼いでいます。欧州が19%、アメリカが18%。日本(国内)は、4%でしかありません。国内が4%というのは、驚きです。もちろんこの数値は主要128社ですから、企業全体では国内比率は大きくなるでしょう。

日本の感覚

2011年12月4日   岡本全勝

(日本の感覚)
このページでも時々紹介していた、原研哉さんの連載が、本になりました。『日本のデザイン―美意識がつくる未来』(2011年、岩波新書)です。各紙の書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いでしょう。連載時の表題「欲望のエデュケーション」は、私にはわかりにくかったですが、この本になって理解できました。
日本人の持つ日常生活での美意識や感覚を評価し、それを伸ばすとともに世界に輸出しようという主張です。それは、繊細、丁寧、緻密、簡潔といった価値観であり、コンパクトな車や小さくても快適な住まいなどです。
日本文化というと、江戸時代以前の伝統文化、わびさび、茶道、華道、数寄屋造り、和服、日本画などが取り上げられます。この本で取り上げられているのは、「現代日本の生活文化」ともいうべきものです。すなわち芸術文化ではなく、古典文化でもありません。今の日本人の暮らしの中にある生活文化であり、都市の日本人の生活です。それは、経済発展を続ける新興国の中間層にとって、憧れなのです。
ヨーロッパの貴族やアメリカの富豪がつくった生活文化は庶民の憧れですが、それを手に入れることは多くの人にとって困難です。しかし、日本の中流家庭が手に入れた快適な生活は、新興国の人にとって手の届く目標になるでしょう。車でいえば「アメ車」でなく、日本の小型車です。ビバリーヒルズの豪邸でなく、戸建てかマンション(日本の集合住宅)での暮らしです。そこには、こぎれいなキッチン、快適なお風呂とウオッシュレットのトイレ、広くはないが居心地の良い居間(リビングルーム)、省エネの電化製品があります。
これからの日本が世界の中で生きていく際に、ヒントになることがたくさん書かれています。勉強になりました。ご一読をお勧めします。

人材の鎖国

2011年12月4日   岡本全勝

12月3日の日経新聞の特集「ニッポンの企業力」は、日本企業の人材に関して、鎖国状態にあることを取り上げていました。高度な外国人の活用が、先進国の中で最下位なのだそうです。高等教育を受けた居住者のうち、国外から流入した外国人が占める割合は、0.7%。オーストラリアは29%、欧米主要国は10%台です。外から来る外国人に門戸を閉ざすだけでなく、外に向かっても行かない。日本人留学生の減少は、既に指摘されています。
これは、日本が高等教育や研究を、日本人だけでまかなえることができることをも意味しています。明治以来、お雇い外国人を日本人に置き換え、先進技術を輸入し、日本語で教えることができるようになったのです。大学教育、大学院教育を、自国語で行える国は少ないです(英語、フランス語、ドイツ語などを除く)。これは、大したことでしょう。
しかし、20世紀末からのグローバル化で見えたことは、鎖国状態の繁栄は難しくなったということです。技術を輸入・翻訳し、工業製品を輸出して稼ぐとともに豊かな生活を享受する。このモデルが、世界市場で勝ち残れなくなりました。
このページでも書いているように、それは企業だけでなく、政治行政の分野、社会科学系の研究教育分野でも、迫られていることだと思います。自然科学の研究者、いくつかの分野のスポーツ選手は、すでに海外でも活躍しています。そのほかの分野でも、勝負の土俵が国内から世界になったということでしょう。