カテゴリーアーカイブ:社会の見方

市場が解決できないこと

2012年5月20日   岡本全勝

日経新聞5月14日オピニオン欄、マイケル・サンデル教授の「市場第一主義と決別を」から。
・・過去30年間、米国では行き過ぎた「市場勝利(原理)主義」が席巻してきた。政治は問題の本質的な解決に踏み込まず、表面的な管理を重視するようになった。つまり政治が正義、平等・不平等、家族・コミュニティーの存在意義などを巡る問題に取り組まなくなったのだ。それこそ米国、日本などの国々に共通する人々の不満の源泉となっている。
この問題と向き合う唯一の方法は、市場が扱う品物について公正な議論を重ねることだ。市場の価値と市場ではないものの価値、すなわち家族やコミュニティー、民主主義といったものとの間で、より良いバランスを取る必要がある。市場が生み出す公的なサービスとそうではないものについて、開かれた議論をしなければならない。
経済成長だけで全ての問題が解決できないにもかかわらず、市場が正義や共通善まで定義できるかのような考えがまかり通っているが、それは間違っている。この「市場勝利主義」から抜け出し、新たな政治的議論を通じて市場の道徳的限界を考えなければならない・・
サンデル教授の『それをお金で買いますか―市場主義の限界』(2012年、早川書房)も出版されました。

少し話が飛躍しますが、日本の行政や議会も、その議論は「モノとお金」に偏ってきました。正義や平等、家族やコミュニティーなどの議論を避けてきたのではないでしょうか。国会や地方議会では、予算が議論の中心です。しかし、予算額では地域の暮らしやすさや行政の成果が測れないことを、『新地方自治入門』で解説しました。

日本人の消費・モノから人のつながりへの変化

2012年5月12日   岡本全勝

三浦展著『第四の消費―つながりを生み出す社会へ』(2012年、朝日新書)を読みました。大正元年(1212年)から現在までを、国民の消費という切り口から4つの時代に分けて、日本社会と国民の意識の変化を分析しています。
私は、日本の行政を考える際に、社会の変化が重要な要素であると考えています。家族、地域社会、消費、幸福感、勤労、ライフステージなど。当然のことながら、社会の課題によって行政の任務が変化するのです。『新地方自治入門』でも、そのような観点を取り入れ、三浦さんの著書も紹介しました。ウイキペディアの三浦さんの項でも、取り上げてもらっています。
私の問題意識や社会の見方に、三浦さんの考えと共通するところが多く、今回もいくつも納得しながら読みました。詳しくは本を読んでいただくとして、私が最も共感を覚えた点は次のことです。
すなわち、消費が、モノの消費から、人的サービスの消費に変化すること。そしてそれは金銭を払うことでサービスを受けるだけでなく、人間の関係を求める人が増えること。すなわち、豊かさがモノからつながりに変化すること(例えばp204)。これは拙著『新地方自治入門』の基本テーマでした。三浦さんの本は家族・個人の消費についてであり、私の本は地方自治体の課題についてです。
そしてそれは、消費が個人にとって、時間や人生の消費(消耗)ではなく、時間や人生の充実に変わることです。人生を浪費するのか、人生を満足するのかの違いです(p246)。地方行政にあっては、「住民が行政サービスを受ける客体から、参加する主体になることです。モノとサービスの20世紀から、関係と参加の21世紀へ」と、拙著(p346)では書きました。

そのほかに、なるほどと思うことが、たくさん書いてあります。例えば、16~24歳の若者が自動車運転で起こした死亡事故で、スピード違反が主因になったものが、1990年には1,600件あったのに、2009年には120件に減少しています。若者の車の使い方・かっこよさが、変化しています。
近過去や現代を扱った教科書・概説書が少ない中で、この本は重要な教科書だと思います。日本社会の変化にご関心ある方は、ぜひお読みください。

新聞記者のツイッター記事

2012年5月9日   岡本全勝

5月1日の朝日新聞が、「記者ツイッター、あり方は」を、特集していました。朝日新聞では、記者が、朝日新聞の記者を名乗って、肩書きを公表して、ツイッターを発信しています。そのガイドラインも、発表しています。
私は、ツイッターを読んでいないので、詳しいことは論評できません。しかし、新聞記事のあり方を問う、基本的な問題に触れると思います。
ツイッター記事は、記者が個人ではなく、新聞社の一員として書くことです。「記事の内容は社を代表するものではない」とガイドラインは書いていますが、それは当然でしょう。しかし、代表しないとしても、記者の書いたツイッターが「事件を起こした場合」に、社は責任を問われるでしょう。
その点で、「署名」と「社の意見」という点からは、記者が書くものは「ツイッター記事」「本紙の署名記事」「無署名記事」「社説」に別れると思います。
そのような観点からは、新聞の署名記事と、ツイッターはどのような点が違うのでしょうか。署名記事は、社を代表するのでしょうか。
「社の組織による編集」をどう考えるかです。
さらに触れるなら、社説とは何でしょうか。これは「社を代表する意見」だと思いますが、記者はそれに縛られるのでしょうか。特定のテーマについて、社内にもいろんな意見があると思います。どのような手続で、意見を集約して「社の意見」としておられるのでしょうか。議事録はあるのでしょうか。ある論説委員の署名の意見なら、理解できるのですが。

日本企業人材の国際化

2012年5月8日   岡本全勝

4月30日の日経新聞オピニオン欄「グローバルオピニオン」は、スイスIMD学長のドミニク・テュルパン氏の「日本企業に多様性必要」でした。IMDは、世界各国の競争力ランキングを発表することで有名です。
・・長年日本をウオッチしてきた私にとって、日本企業に元気のない現状はとても残念だ。世界経済が大きく姿を変えつつあるなかで、日本企業はうまく対応できていない。あるいは日本の社会そのものも、豊かさを達成したことに満足し、以前は旺盛だった外への関心を失っていると思う。
日本企業の弱点は、多様性の欠如だ・・
・・日本には昔からジョブローテーションという優れた仕組みがあり、自分の専門の分野だけでなく幅広い業務を経験させることに熱心だった。自動車会社のエンジニアなら、エンジンの開発ばかりではなく、生産なども経験することで視野を広げ、タコつぼ化を避ける狙いだ。
だが、世界のさまざまな市場を渡り歩かせて、キャリアを積ませるネスレ型のグローバルローテーションはほとんど実践されていない。グローバル人材は、一朝一夕には養成できない。長期を見すえたブレのない取組が必要だ・・

外国人が日本で買っていく物

2012年5月4日   岡本全勝

外国人観光客が、日本で買っていく物はなんだと思いますか。日経新聞電子版の「映像ニュース」が伝えていました。「映像ニュース」の「話題・特集」から、「秋葉原で外国人に人気の商品」(前編)(後編)をご覧ください。
かつて日本人のヨーロッパ旅行の土産は、お酒、たばこ、チョコレートでした。その後、ブランドものの鞄やネクタイ、時計などに変わりました。アジアの人たちが日本で買っていく物には、意外なものがあります。
あなたなら、外国からのお客さんに何を勧めますか。私は文化的なものだと、東京国立博物館のミュージアムショップが、外国の方におもしろいのではないかと、紹介していました。他には、スーパーマーケット、ドラッグストア、文房具店などが、日本人の現在の暮らしを見てもらえるので、お勧めかなと思っています。
「これぞ日本だ」というものが思い浮かびませんが、和菓子屋さんも良いですよね。もっとも、生菓子は持ち帰ることはできませんが。