カテゴリーアーカイブ:社会の見方

存在する答えに向かうことと、自分で答を探すこと

2015年9月10日   岡本全勝

毎日新聞9月9日夕刊、畑村洋太郎さんの「技術大国のおごりを捨てよ」から。
・・・日本企業は戦後、欧米の産業に追い付き、追い越せとばかりに努力を続け、経済成長を遂げてきた。そのピークは1980年代。日本の技術力や品質が外国で認められると、自らを誇ってこう呼んだ。「技術大国」と。とりわけ世界市場をリードしてきた一つが家電メーカー。だが今は、韓国、中国勢の大量生産による低価格攻勢にさらされるなどして経営が悪化している。この問題をどう捉えればいいのか。戦後日本の産業界を見続けてきた畑村さんの観点は独特だ。戦後70年の歩みを二つの時代に分けて考える。奇跡の50年間と、何をしたらいいか分からない20年間だ。
奇跡の50年についてはこう語る。「闇夜に光る灯台を目印にすれば船は目的地を見失わないように、日本企業は欧米の先進例を目標に『存在する答え』へ向かって必死で歩み、努力してきたからこそ高い技術力を身に着けた」。
その後の20年は、灯台にたどり着いたものの、次の目標を見失ったと見る。「日本企業は自分で『答え』を探さなければならなかった。それなのに『自分たちの技術は高い』との自己評価にあぐらをかくだけで、自らの頭で考え、努力することを怠ってきた」・・・
私は、『新地方自治入門』で、欧米に追いつくという目標をうまく達成した日本の行政が、達成したが故に目標を失い、次の目標を探しあぐねていることを論じました。

日米中韓、若者意識調査

2015年9月9日   岡本全勝

8月28日に、国立教育振興機構が、日米中韓の4カ国の高校生を対象に行った「生活と意識に関する調査」結果を公表しました。8月29日の日経新聞などで紹介されています。4か国の若者の、意識の共通な点と異なる点が浮き出ていて、興味深いです。
例えば、「自分の国に誇りを持っている」について、中国は88%、日本が73%、アメリカは67%に対し、韓国が41%です。中国は学生たちの本心が反映されているかどうか定かではありませんが、日本が意外と高いです。マスコミは「国民は日本に自信を持っていない」というような論調を書きますが、そうではないのですね。韓国の41%の理由は、何でしょうか。しかし、「自国の未来は明るい」については、中国が88%、アメリカが49%、韓国が33%、日本が32%です。
「お金があれば望みはかなう」については、中国が44%、アメリカが48%、日本が59%に対し、韓国が92%です。自由経済、競争社会、アメリカンドリームのアメリカが低く、韓国が92%なのは驚きです。他方で、「今の社会は公正だ」については、中国が55%、日本が32%、アメリカが28%、韓国は11%でしかありません。(それぞれ資料10ページ)
その他の項目も、たくさんあります。ご関心ある方は、お読みください。ところで、記者発表の概要版で、20ページもあります。う~ん、特徴を3枚くらいにまとめられませんかね。

大坂落城400年

2015年9月3日   岡本全勝

朝日新聞8月29日オピニオン欄「戦後400年!」、堺屋太一さんの発言から。
・・・400年前に大阪はいわば焦土となりました。大坂夏の陣で豊臣氏が滅ぼされ、大坂城が落城した。そんな場所はそのまま衰退してしまうのが歴史の常識でしょうが、大阪は違いました。
「八百八橋」をはじめとして様々な異名がありますが、江戸期の大阪を表す最も的確な言葉は「天下の台所」でしょう。諸大名がコメや特産物を売るための蔵屋敷が軒を並べ、西国を中心に全国で生産されたコメが大阪に持ち込まれ、金や銀などの通貨と交換されました・・・
・・・大坂の陣の後、淀川の中州を開発し、現在の中之島を整備したのが、豪商・淀屋常安(じょうあん)でした。そこに諸藩の蔵屋敷が集まります。淀屋が架けたのが、今もビジネス街の中心を結ぶ「淀屋橋」です。
息子の个庵(こあん)は天才的なイノベーターでした。大名の蔵米販売を引き受け、店前にコメの市を立てました。これが堂島米会所へと発展し、全国の米相場の中心地になります。
大阪の米相場から生まれたのが先物取引です。やがて8代将軍徳川吉宗の時代、世界最初の公認先物市場となり、今や世界に広まる商品先物取引に発展するのです。
この他、繁華街の宗右衛門町や街々を結ぶ多くの橋も、町人たちによって開発されたのが江戸時代の大阪です。
官需なしに住民自ら興した都市は、日本広しといっても大阪ぐらいでしょう。政府の財政赤字が膨大になった今こそ、注目されるべきです・・・

中国経済リスク、戦前日本との類似。2

2015年8月30日   岡本全勝

朝日新聞8月25日、猪木武徳先生へのインタビュー「世界経済、不安の正体」の続きです
「戦後、世界経済は多くの制度が整備され秩序がつくられてきたのに、なぜこのように不安定要素が増えてきたのですか」という問に。
・・・経済の基盤である自由民主主義が次第に劣化しているからです。民主主義には内在的に財政赤字を生む構造がある。政治家の生きる道は、いかに多くの人を満足させて票を獲得するかにあります。その結果、政治は時に人々の欲望をより膨らませ、資源配分をゆがめてしまう。そして、何でも税金や国家に頼ろうとする風潮が広がります。健全財政で対応できるならいいが、どの国の政府も借金を膨らませて要望にこたえようとする。これではどの国もギリシャと似た運命をたどってしまう・・・
「財政赤字を生みやすい民主主義の弱点を克服する手段はないのでしょうか」
・・・国家対個人の対立軸だけで考えたら解はありません。二つの間を調和させる何かが必要です。税金への依存が比較的少ない米国や英国では、NPO、労働組合や消費者団体のような中間団体がその役目を果たしています。たとえば日本では各省庁が受け持つ各種の統計づくりも、米英では一部NPO組織が担っている。あるいは米国の地方自治の強さも、健全な民主主義をうまく機能させようというメカニズムの一例です・・・
「政府を動かすことだけが民主主義ではないのですね」
・・・自分たちの身の回りのことは自分たちで決める。お上や国家から言われてやるのではない。民主主義を堕落させないためには、そういう独立自尊の精神が不可欠なのです。
ただし大事なのは公共精神という土台も欠かせないことです。私も市場経済は尊重しますが、皆が私的な欲求を満たそうとするばかりではいい社会は生まれません。公と私のバランスが必要です・・・
詳しくは原文をお読みください。

中国経済リスク、戦前日本との類似

2015年8月29日   岡本全勝

朝日新聞8月25日のオピニオン欄は、猪木武徳先生へのインタビュー「世界経済、不安の正体」でした。世界経済の主役に躍り出た中国。その変調が世界経済の不安要因になっています。
「世界経済の命運を握っている中国政府は、混乱なく治めていくことができるでしょうか」との問には。
・・・中国が自分でうまく処理するのかが心配です。いまの中国は1930年代、つまり第2次大戦前夜の日本にとてもよく似ています。第1次大戦後、日本は欧米列強に遅れて準一等国になったが、経済に行き詰まった。そこを何とか打開しようと軍事的膨張が起き、戦争へと突き進んだのです。中国も世界経済に組み込まれ、準一等国になりました。だが国内では格差や環境など多くの問題を抱えている。その摩擦や不満を抑えるため、国家主義に訴えて異様な軍事的膨張を進めています。中国の経済のリスクと軍事のリスクは表裏一体です。中国が戦前の日本のような愚かな歴史をたどる可能性を軽く見ることはできません・・
先生は、もう一つ戦前日本との類似を、指摘しておられます。戦前日本は、「大東亜共栄圏」という名で、経済囲い込みを目指しました。美名と実態とのズレです。
・・・AIIB設立の目的は、建前ではアジア諸国の道路や港湾などインフラ建設に手を貸すことですが、本当の狙いは、彼らが「一帯一路」と呼ぶ欧州との物流ルートを整備し、自国の利権を確保することでしょう。彼らは自分たちのために世界があるという驚くべき野望をもっています・・・
「ユーロに啓発されて数年前「東アジア共同体」やアジアの共通通貨の可能性が議論されました。それは幻想にすぎませんか」との問に。
・・・戦前にもそういう構想がありましたね。提唱したのは、日本を盟主にアジア統一を果たそうとするウルトラ国家主義者たちです。いま日中韓や東南アジア諸国の経済統合を唱えるのは、戦後の理想主義が先走った人々です。しかしわれわれは、そうした「共同体」や「国家連合」の難しさをEUの例からまず学ぶべきでしょう・・・