カテゴリーアーカイブ:社会の見方

質問、再質問

2019年5月17日   岡本全勝

NHKのウエッブニュース「城の石垣 半数以上が「修復必要」」(5月14日)。内容とは異なりますが、質問のあり方について考えました。

・・・NHKは「日本城郭協会」が選んだ日本100名城と続日本100名城を対象にことし3月、アンケート調査を行いました。
石垣のない城などを除く169の城について、管理している地元自治体などに用紙を送り、このうち73%に当たる124の団体から有効な回答を得ました。

はじめに城の石垣に関して日常的な観察や管理を行っているか尋ねたところ、92%に当たる114の団体が「行っている」と答えました。
「行っている」と答えた団体に頻度や実効性について問いかけると、「おおむねできている」が77と多数を占める一方で、「十分にできている」は5か所にとどまり、「あまりできていない」は32と、3割近くに及んでいました。
また、「現在、修復を要する被害や劣化は見られるか」と尋ねたところ、57%に当たる71の団体が「見られる」と答えました・・・

日常的な観察や管理を聞くと、9割が「行っている」と答えます。しかし、頻度と実効性を聞くと、3割はできていません。
これは、参考になります。ほかの問題でも、応用できます。「やっていますか?」と聞くと、「やっています」と答える場合があります。しかし、「では、どの程度やっていますか」を具体的に聞くと、形だけとか、実効的でないことがばれます。この質問は、具体的に聞く必要があります。「よくやっている」「ある程度やっている」といった、曖昧、主観的な選択肢では、意味がありません。

記者会見を見ていても、型どおりの質問をして、型どおりの回答があり、それで終わる、他の質問に移る場合があります。見ていて、残念な気持ちになります。「もっと、突っ込んでくれよ」と。
想定問答を準備している方も、再質問、再々質問を想定しています。突っ込みが足りないと、物足りないです。
その質問で何を聞きたいのか。それを考えて、質問と再質問を組み立ててもらいたいです。
余談ながら。事件や事故が起きたときに、質問に対し「詳細を把握していないので答えられない」「訴状を受け取っていないのでコメントできない」という答えがあります。ぜひ、数日後に、「その後どうですか」と聞いてほしいです。

データの国際管理

2019年5月16日   岡本全勝

4月29日の日経新聞オピニオン欄、ジリアン・テット、ファイナンシャルタイムズ編集長の「データに国際的枠組みを」から。

・・・第2次世界大戦末期の1944年、国際通貨制度を安定させる枠組みの構築を目指し、連合国の代表が米ニューハンプシャー州ブレトンウッズに集まった。
参加者たちは平和の促進と経済の成長にはお金の流れを監視することが欠かせないと考えた。戦争が終結すれば世界経済を再生しなければならず、そのための国際組織が必要だと考えたのは当然かもしれない。国際通貨基金(IMF)の創設が決まり、以来数十年、何とか目的が果たされてきた。
75年間の国際協調はたたえられるが、IMFは今やお金以外にも目を向けるべきではないか・・・
・・・昨年のデジタル経済に関するIMFのセミナーで、バルシリー氏はIMFがデータ規制で各国の協調を促し、さらにIT(情報技術)の発展が社会や経済にもたらす影響に対しても国際戦略を策定する時が来たと主張した。同氏によると、米S&P500種株価指数の構成銘柄の企業価値のうち、1976年時点で16%が無形資産だったが、現在は90%近くに上る。
これはデータ管理が重要な政策課題になったということだ・・・

かつて経済力は、資源であり、生産品・生産力でした。次に、お金でした。それも、蓄えているだけではダメで、どのように流通させるかです。
ストックとともにフローが、重要になりました。そして、いまは、情報です。
記事にもあるように、モノでなく無形資産(情報)に価値が移っているのです。これも持っているだけではダメで、早く入手し、読み取り、どのように使うかです。
価値が、見えるものから見えないものへと転換しています。そして、ストックでなくフローにとです。

中間団体の重要性

2019年5月15日   岡本全勝

5月9日の日経新聞「令和新時代」、猪木武徳・大阪大学名誉教授の「新技術 道徳と調和を」から。

・・・平成が始まった年は東西冷戦が終わった年でもあった。世界の体制変化と日本の経済力の相対的な低下が同時に進んだ。なかでも、中国の台頭は大きなファクターだ・・・

・・・中間組織に弱さ
経済でも、昭和は大企業が安定的に支配していたが、平成には野望を持つ新興企業が参入し市場を揺さぶった。一方で、国と個人の間にある中間組織が弱くなった。労働組合の組織率は低下、経営者団体もかつてのような発言力がない。民主的な精神が徹底したが、補完する装置は弱まった。
民主制を安定的に機能させるには、個人と国家が直接対峙するだけでなく、非営利法人(NPO)も含めた中間的な組織が大切だ。個人は弱いので団結して共同の利益を主張することも必要だ・・・

中間団体は、公共を考える際にも、重要な要素です。

未完の成熟国家、平成日本

2019年5月12日   岡本全勝

4月30日の日経新聞社説は、「未完の成熟国家だった平成の日本 」でした。

・・・昭和は悲惨な戦争と戦後の高度成長の記憶とともに歴史に刻まれた。焼け野原から世界も驚く復興を成し遂げ、昭和の終わりには製造業の技術力と価格競争力で米国を脅かす状況すら生まれた。
1989年(平成元年)末の日経平均株価の終値は、史上最高値の3万8915円。バブル経済の熱気が社会のひずみを際立たせもしたが、近代日本の一つの到達点だったといえる。
日本は経済成長の先にどういう国家目標を定めるかが問われた。平成の出典となった「内平らかに外成る」「地平らかに天成る」の言葉には、日本と世界の平和と繁栄への思いが込められていた。
しかし90年代に日本が直面したのは、バブル崩壊の後遺症といえる金融機関の不良債権問題や長期デフレ、冷戦後の国際政治の激動という現実だった・・・

・・・グローバル化の進展に伴って日本は産業構造を変え、成熟国家として社会の形を見直す必要に迫られた。しかし政府も企業も過去の成功体験を引きずり、痛みを伴う改革を先送りした。国際的な地位低下と財政の悪化に、有効な手を打つことができなかった。
政治家も努力はした。有権者が政策本位で政権選択をしやすいよう、衆院選に小選挙区制を導入した。首相官邸の機能強化や中央省庁の再編も実現した。それでも低成長時代を見据えた有効な手立てを講じてきたとは言いがたい。
平成の時代に直面した最大の試練は、人口減社会の到来だろう。少子高齢化で人口が急減する恐れは早くから指摘されていた。しかし若年層の雇用や所得水準はむしろ悪化し、出産や育児、教育への支援策も後手に回った・・・

・・・政治や経済の行き詰まりが目立った半面、平成は日本にとって文化面では実り豊かな時代だったと振り返ることができる・・・
・・・日本は経済規模で中国に抜かれた。その差はさらに開くだろう。欧米ではポピュリズムと自国中心的な流れも目立ち始めている。日本は先進民主国家として、法の支配や自由貿易、最先端の科学と文化を通じ、世界で存在感を高めていく戦略と努力が重要だ。
平成が終わり、令和の時代が始まる。我々は多くの課題を抱えながらも、いま平和と繁栄を享受している。難しい問題を一つ一つ解決し、明るい未来を次の世代にひらいていく責任がある・・・

意見の違い、対話が成り立たない

2019年5月12日   岡本全勝

5月3日の東京新聞、地域活動家の小松理虔さんの発言「福島を高福祉地域に」から。

・・・事故後、福島の人のほとんどは脱原発すべきだと思っていたはずです。でも「福島には人が住めない」などと言う極端な脱原発運動家とは一緒になれない。東日本大震災で、お互いさまということを学んだはずなのに、放射能と賠償金で社会が引き裂かれてしまった。
常磐沖で魚を釣って放射性物質を測り、食べる活動をしているだけで、「御用団体」と呼ばれた。一方、放射能が不安な人に寄り添うべきだと話せば、「デマを容認するのか」と非難されたこともある。「賠償金をもらっている人まで支援する余裕はない」との声も聞きました。
対話にならず、極端な意見の応酬が続いた。福島の人は語らなくなり、県外の人は福島に関わりにくくなってしまった。

僕も最初は、科学的なデータを示せば、理解してもらえると思っていました。ところが、不安な人を説き伏せようとしても、拒絶される。自分も疲れてしまう。
かまぼこメーカーに勤めていたとき、会員制交流サイト(SNS)に「福島のかまぼこは放射性廃棄物と一緒」という書き込みがあった。「不安は分かります。他県産のかまぼこを買ってください。いつか福島のものも安全だと思われたら、お買い上げください」と返事をしました。
すると、やりとりを見ていた人が「悔しいだろうに、真摯に対応した。応援する」と、うちのかまぼこを買ってくれたんです。目の前の人の向こうに、膨大なお客さんがいることに気付いた・・・