カテゴリーアーカイブ:社会の見方

公衆の場でのスマホ操作、両耳イヤホン

2019年9月22日   岡本全勝

丸ノ内線の新しい決まり」の続きです。

このページでも何度か書いていますが、歩きながらのスマホの操作、電車の出入り口でのスマホの操作は、やめて欲しいです。出入り口で仁王立ちで操作をされると、他の人が通れません。「歩きスマホを禁止する

日本は「おもてなしの国」という説がありますが、とんでもありません。周囲への気配りができない人が多いのです。自分が通路をふさいでいること、乗り降りの邪魔をしていること、背中の鞄が邪魔になっていることに、全く気がついていません。

最近、さらに困ったことが増えました。両耳をイヤホンでふさいでいる人です。
オーディオ会社が、「このイヤホンで、通勤途上もあなた一人の世界になることができます」という趣旨の宣伝をしています。
とんでもない主張です。自宅なり、喫茶店なり、電車でも指定席なら、一人の世界に閉じこもってください。でも、公衆の通路で、自分だけの世界に浸っては困るのです。

しかも、緊急の要件を処理しているなら、周囲も理解するでしょう。でも、多くの人は、ゲーム、ドラマ、漫画、サイトのサーフィンのようです。「公衆の場で、そんなことをしては恥ずかしい」というしつけの世界です。親が教えることができないので、世間みんなで教える必要があります。

ミネルヴァ書房「日本評伝選」シリーズ

2019年9月21日   岡本全勝

先日、ミネルヴァ書房の「日本評伝選」の新聞の全面広告が出ていました。200巻になったそうです。
取り上げられている200人(+数人。1巻で親子など数人が取り上げられているものもあるので)を見て、いろいろ考えました。「この人は取り上げられて、あの人は取り上げられていないなあ」とか。やや意外な人も載っています。しかし、日本の政治・経済・文化を語るという観点からは、もっと取り上げてほしい人もいます。それは、これからの続刊に期待しましょう。
それにしても、「この人の伝記を1冊にするだけ、記録が残っていたんだ」と驚くこともあります。

9月16日の読売新聞文化欄には、「「日本評伝選」200巻 ミネルヴァ書房・杉田啓三社長…「半永久的に続ける覚悟」」が載っていました。
・・・それまで単発での刊行が主だった歴史評伝をシリーズ化した狙いは、「より幅広い視点から日本史を捉え直す好機が到来していたから」だった。
冷戦が終結した1990年代以降、研究者の間では特定のイデオロギーに基づく歴史観を見直す動きが出ていた。そこでそれぞれ歴史学と比較文学の泰斗である上横手雅敬、芳賀徹両氏を監修委員に迎え、「私たちの直接の先人について、この人間知を学びなおそうという試み」(「刊行の趣意」から)がスタート。杉田社長も自ら企画に関わった。
シリーズの一番の魅力は、取り上げる人物と著者の組み合わせにある。一般読者の興味・関心に応えるため、「著者には外国の研究者も起用し、固定観念にとらわれない切り口をお願いした」。
政治家、学者から芸術家、外国人まで幅広いラインアップにこだわりを詰め込んだ・・・

吉川弘文館に「人物叢書」があります。こちらは約300冊ほど出ているようです。

規制当局と企業の力関係

2019年9月17日   岡本全勝

9月16日の朝日新聞オピニオン欄、記者解説。ニューヨーク支局・江渕崇記者の「ボーイング機、信頼失墜 規制当局を圧倒、墜落後も構図不変」から。

・・・737MAXは昨年10月にインドネシアで、今年3月にはエチオピアで墜落し、計346人が死亡した。惨劇の遠因は、その誕生の経緯に潜んでいた・・・
・・・危うい飛行機が世に出たのはなぜか。MAXが安全だとお墨付きを与えたのは、規制当局のFAAだ。「認証」という安全性を確認する手続きを踏んだが、現実には、FAAは人手不足から、重要箇所以外の認証はボーイングの技術者に権限を委任していた。米紙によると、問題の飛行システムの評価すら、ボーイングに委ねられていたという。MAX開発を急ぐプレッシャーの中で、危険性は見過ごされた・・・

・・・15年前から、技術者が問題を見つけてもFAAではなく、ボーイングの上司に報告する決まりに変わっていた。MAXとは別の機体の補修をめぐり、レバンソン氏はエンジンを支える重要部品がFAA基準を満たせないと気づいた。決まり通りボーイングの上司に伝えると、「黙って認証するように」と迫られた。拒むと「10分で机を片付けろ」と職場を追われた、と明かす。
業界が規制当局を知識や力で圧倒し、規制を骨抜きにする――。福島第一原発事故を巡り、東京電力と原子力規制当局の関係で指摘された「規制のとりこ」と呼ばれる構図そのものだ。
FAAの上部組織の米運輸省は12年の内部監査で、「FAA幹部とボーイングの近すぎる関係」を警告したが、見直されないまま時は過ぎた・・・

・・・影を落とすのは、独占で巨大化したボーイングとの圧倒的な力の差だ。
米旅客機産業はかつて大手3社が競ったが、1997年の合併でボーイング「1強」になった。ロビー活動や献金でワシントンににらみをきかせ、歴代政権の大物大使経験者を取締役に迎えた。トヨタ自動車やフェイスブックが問題を起こしたとき、米議会は首脳を呼んで質問攻めにしたが、ボーイング幹部は証言台にすら立っていない・・・

中国という実験

2019年9月17日   岡本全勝

9月9日の日経新聞夕刊が、「中国、なぜ「異形の大国」? 民主化なき成長、にじむ覇権主義」を解説していました。
1949年の建国から70年。1978年に改革開放政策で市場経済に転換してから40年。2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから約20年です。

・・・中国の名目国内総生産(GDP)が日本を抜いたのは2010年。今は日本の3倍近い規模です。建国当初と比べると、経済規模は膨大になりました。国民の可処分所得は建国時の567倍に。1億元(約15億円)以上の資産を持つ世帯がおよそ11万に上るという調査もあります。
経済は巨大ですが、発展途上国です。先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)の分類では、先進国の一歩手前の「上位中所得国」で、政府開発援助(ODA)を受け取れます。14億人の人口で割ると1人あたりの経済規模は1万ドル弱と、日本の4分の1程度だからです・・・
・・・一党独裁体制なので、民主主義の先進国からみると違和感を覚える点があります。共産党政権は工業と農業、科学技術、国防の「4つの近代化」を目指し、大きな成果をあげてきました。一方、70年代末に民主活動家の魏京生氏が「第5の近代化」として訴えた民主化は、40年あまりたっても実現していません。
ダライ・ラマ亡命につながった59年のチベット動乱や60~70年代の文化大革命、89年の天安門事件、99年の法輪功弾圧、2009年にウイグル人デモ隊と当局が衝突したウルムチ騒乱と、たびたび国民を武力で抑えつけています。
最近はIT(情報技術)の進歩で個人情報が詳細に把握されやすくなりました。キャッシュレス決済のデータで生活や行動がつかめます。監視カメラの顔認識などの性能も上がっています。
豊かになった半面、格差は大きいのが実情です。都市住民と農村住民は戸籍が違い、出稼ぎにきた農民は社会保障や子供の教育も十分に受けられません。農村出身者を強引に立ち退かせて都市開発するなど、社会の不平等が効率的な発展につながっている皮肉な側面もあります・・・

経済が大きく発展したことは、すばらしいことです。他方で、民主化が進んでいません。国家(共産党)による締め付けは、ITの発達でより強くなっています。WTOに加盟を許せば、民主化が進むと当時の先進国の指導者たちは考えました。今のところ、それは失敗しているようです。
共産党幹部にとって、第一の目標はその体制の維持であり、国民が豊かになるのはその手段だという見方もできます。この後、いつまでこのような状態が続くか。歴史の壮大な実験です。20世紀の大実験だったソ連は、70年で崩壊しました。

「ちょっとウンチク 政治が描き変える建国の瞬間」も若い人には、勉強になるでしょう。民主主義国家ではあり得ないような話です。
・・・1949年10月1日、北京の天安門の上で毛沢東は中華人民共和国の成立を宣言した。この歴史的瞬間を描いた董希文の「開国大典」は、数奇な運命をたどった油絵だ。
当局の依頼で董が絵を描き上げたのは50年代前半。その後、50年代半ば、60年代、70年代と、3回も描き直しを求められた。3度目は董が病気で弟子が作製。董の没後、4回目の「修正」が必要とされ、新たな複製が作られた。
度重なる「修正」の原因は政治変動だ。失脚した要人やときの権力者に恨まれた故人が画面から消えた。歴史に対する共産党政権の姿勢がわかる「名画」といえる・・・

鎌田浩毅先生『やり直し高校地学』

2019年9月16日   岡本全勝

鎌田浩毅先生の新著を紹介します。『やり直し高校地学ー地球と宇宙をまるごと理解する』(2019年、ちくま新書)です。ちくま新書には、「やり直し高校××」というシリーズがあるようです。内容は、表題でわかりますよね。

私は高校では理科4科目、物理、化学、生物、地学を履修しましたが、受験科目は物理と化学を選びました。この2つが、理論的だと思ったのです。すみません、当時は、生物は植物の分類、地学は地層と岩石の学問と思っていました。しんきくさいなあ・・・と。
ところがその後、生物は遺伝子の解析や分子生物学が発達して、面白い学問になりました。地学も、プレートテクトニクスや古生物学など、面白い学問になりました。この半世紀で、ガラッと変わりましたね。
最先端の研究が画期的に進んだのとともに、それを一般人に伝える書物が増えたからでしょう。無味乾燥な分類学や岩石学から、わくわくする科学に変わったのです。

鎌田先生は、科学の伝道師を名乗っておられます。最先端の難しい科学を、素人にわかるように伝えてくださっています。新著も早速に重版になったようです。よく売れているということですね。
素人には分厚い学術書や教科書より、新書版がうれしいです。でも、難しいことを短く書くというのは、難しいのですよ。