カテゴリーアーカイブ:社会の見方

社会の意図した変化と意図しない変化2

2021年8月23日   岡本全勝

社会の意図した変化と意図しない変化」の続きです。
意図して変えた社会の変化には、政府などが主導してつくってきたものと、住民たちがつくったものとがあります。指示の主体が明確なんものと、そうでないものです。

教育内容は、政府が決めています。それによって、国民の知識やものごとの判断基準ができあがります。ごみの分別収集は、自治体が決めています。国民や住民はそれに従っています。この場合は、方向性がはっきりしています。宗教団体による教化も入れておきましょう。
これに対し、住民たちが意図して作ったものは、挨拶をするなど、地域の風習であり、気風です。民度にもなります。だれがどのように主導したかが明確でない場合が多いです。
一部の人や一部の地域で「このようにしましょう」と始まり、広がっていくのでしょう。地区の祭りや共同清掃。エレベーターの片側を急ぐ人のために空けておくこと(最近は、鉄道会社が「手すりにつかまって、歩かないでください」と呼びかけています)。

人間関係だけでなく、例えば街並みの景色も同様です。各建築主が、住宅や事業用の建物を建築します。それら建物は、(建築基準法の下で)それぞれの建築主と依頼を受けた設計・施工者の意図によって建てられます。そこには、設計があります。
では、それらが集まった街並みはどうか。それは、設計によってはできていません。(都市計画法の規制の下で)形や色彩、風合いが異なる建物が並んでいます。かつての、建築技術や素材が発展していない時代なら、その土地での共通した建築物が並びました。しかし、技術と素材の進化は、さまざまな建物を可能にしたのです。

さて「公共を創る」に戻ると、農村や発展途上時代に作られた私たちの考え方や風習は、成熟社会には適合しません。自由だけど孤独な暮らしに対し、どのようにして安心を確保するのか。成熟社会に適合した考え方や通念はどのようなものか。そして、風習や気風を、どのようによい方向に変えていくか。

なお、個人個人の意図は悪くないのに、それを積み上げると全体の結果が悪くなる場合は、経済学では「合成の誤謬」と言い、政治学では「部分最適が全体最適にならない」と表現します。参考「作為の失敗、不作為の失敗
少々まとまりの悪い文章になりましたが、ひとまず載せておきます。

顧客志向文化と製品志向文化

2021年8月23日   岡本全勝

「業績を左右する社風」の続きにもなります。8月17日の日経新聞経済教室、若林直樹・京大教授「顧客志向文化が企業を救う」から。

・・・市場で複雑かつ急激な変化が起きたとき、企業が顧客のニーズと将来像を中心に考える企業文化を持っていれば、経営者や社員が対応しやすくなる。米ハーバード大学教授だった故クレイトン・クリステンセン氏は自らのジョブ理論の中で、企業のイノベーション(革新)において、顧客の短期的なニーズだけでなく未来の生活や活動に求める将来像(ジョブ)を考える視点の重要性を主張した。
顧客志向的な企業文化は経営者や社員にこうした視点を意識させる。米国最高マーケティング責任者(CMO)協議会の2014年調査では、米国企業のマーケティング担当役員の53%が企業文化を顧客志向的に変革することを経営課題として挙げた(図1参照)・・・

・・・顧客志向的な企業文化が強いと、経営者や社員の思考方法、意思決定や行動はそれに影響され、市場や外部を意識したものとなる。ここでいう顧客志向的な企業文化は、製品志向的なものとは異なる。米メリーランド大学教授のローランド・ラスト氏らは、製品志向的な視点をとる企業組織は内向きの視点をとり、経営目標でも新製品開発でも、ライバルと数を競うことや市場占有率の増大を重視すると指摘した。
それに対して、顧客志向的な企業では視点が外向きとなり、顧客との関係が重視され、顧客忠誠心をもとにした収益力が重視され、顧客満足や顧客価値の上昇が目標となる。従業員も顧客の考えを代弁するようになる。そして、環境が変わり、従来のやり方がうまくいかず、ビジネスが混迷したときに、顧客に沿って考えるようになる・・・

社会の意図した変化と意図しない変化

2021年8月22日   岡本全勝

連載「公共を創る」の一つの主題は、昭和後期と平成時代に社会が大きく変化したのに、行政と私たちの意識がそれに追いついていないことです。それが、社会の不安を大きくしていると考えています。では、社会は、誰が、どのようにして変えるのか。
それを考えると、しばしば「社会の変化」と言いますが、その中に二つのものがあることが分かります。私たちが意図して変えたものと、意図しないで変わったものとです。

丸山真男先生は、「自然と作為」と表現されました。
人が意図しなくても変化した場合に、「自然に変化した」と言います。例えば、核家族化が進んだ。少子高齢化が進んだ。高学歴化になったなどです。しかし、このような社会の変化は、各人が選択し行動した結果の積み上げですから、この表現は不正確です。
では、「自然に変化した」社会の変化を、どのように表現するか。対になるのは、「意図して変えた」です。すると、「自然に変化した」は「意図せずに変わった」ということでしょう。この場合でも、各人はそれぞれに判断し変えてきたのですから、意図しています。しかし、社会全体でその方向に変えるとは意図していなかったのです。

「設計の思想」と「生る(なる)の思想」と、表現してもよいでしょう。設計の思想とは、あるモノや状態を意識して作り出すことです。デザインや計画とも言い換えることができます。これに対して、生るの思想は「放っておいたら変わっていた」です。設計者がいるのと、いないのとの違いです。 社会全体の変化について、設計していないのに、変化したのです。参考「社会はブラウン運動1 人類の進化は偶然の積み重ね」「デザイン思考、あるいは商品としての言葉
この項続く

「富士山噴火 その時あなたはどうする?」

2021年8月21日   岡本全勝

鎌田浩毅先生が、また新著を出されました。『富士山噴火 その時あなたはどうする?』(2021年、扶桑社)。早速、アマゾンでは、防災分野でベストセラー第1位になっています。

なかなか刺激的な表題です。しかし、歴史を見ても、避けられない災害です。その時あなたはどうするか。本書では、最初に漫画が出てきます。わかりやすいです。
小規模な噴火と火山灰は、私は鹿児島で桜島の火山灰を経験しました。たぶん、富士山噴火とは比べものにならない量なのでしょうが、生活に支障を来します。
東京が被災地になることは、これまでの災害とは違った影響を持ちます。
一読をお勧めします。

鎌田浩毅先生は、相変わらず精力的に活動しておられます。

輿論と世論

2021年8月20日   岡本全勝

8月17日の朝日新聞オピニオン欄、佐藤卓己・京都大学大学院教授の「五輪に見た、内向き日本」から。

――コロナ禍での五輪開催には反対の声も少なくありませんでした。朝日新聞は5月、「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載しました。
「ただ、社説が出る前から、五輪への支持率が低いことは世論調査で明らかになっていました。調査結果の報道前に書けば勇気あるオピニオン(輿論〈よろん〉)だったと思いますが、国民感情を盾に社説を出したように見えました。世間の空気(世論〈せろん〉)を反映しているだけだから大丈夫、という心理も働いていたように感じます」

――新聞は情緒的な世論を後追いしたように見える、と。
「いまはひとくくりにされていますが、大正期までの日本社会では公的意見である輿論と、大衆の心情である世論は区別されていました。世論は世間の評判、付和雷同というニュアンスを持つ一方、輿論は異なる少数意見を想定し、説得すべき他者を見すえた多数意見という意味がありました。民主主義では輿論によって世論を制御することが肝要なのです」
「かつては新聞が、世論を反映する機能を担うことに一定の意味がありました。しかし、いまはSNSで個人が自由に発言できる時代です。新聞は世論反映のメディアにとどまっていてよいのでしょうか。これからの新聞は、討議に導き輿論を示す公器をめざすべきです。時には、世論に反してでも主張する。そうしなければ、いつか世論に縛られて、自分の意見が言えなくなってしまうでしょう」