読売新聞7月24日夕刊科学欄に「外来種駆除、思わぬ結果」が載っていました。ある外来種を駆除すると、別の外来種が増えるなど、生態系が変わってしまうのです。
岩手県のため池で、外来種のウシガエル(北米原産)とコイ(中国産)が繁殖しています。ウシガエルが在来種のツチガエルを食べ尽くすので、ウシガエルを駆除しています。ところが、コイも外来種なので駆除すると、ウシガエルが増えるのです。コイがウシガエルのオタマジャクシを食べるのだそうです。
埼玉県のため池では、ブラックバスを駆除すると、アメリカザリガニが増え、ヒシなどの在来種の水草が激減しました。
生態系は、複雑なバランスの上に、成り立っているのですね。これらとは違う事例ですが、奄美大島で、ハブを駆除するためにマングースを放ったら、アマミノクロウサギが減ってしまったという例もあります。人間が考えたように、単純にはいきません。
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移民政策、ドイツの経験
先日、ドイツの総人口に占める移民系住民の割合が20%あることを、紹介しました(2014年7月16日)。7月17日の朝日新聞オピニオン欄に、元ドイツ連邦議会議長で移民受入れに関する委員会の委員長だった、リタ・ジュスムートさんのインタビュー「移民政策、ドイツの経験」が載っていました。
「ドイツは1950年代以降、戦後の復興を担う外国人労働者を南東欧やトルコなどから受け入れたが、本国に帰ることが想定されていた。だが、ジュスムートさんを委員長とする独立委員会が2001年、定住を前提にした受け入れや社会に溶け込んでもらう施策を提言。2005年に提言を盛り込んだ移民法が施行され、ドイツは「移民国家」に転換した」という書き出しです。
・・ドイツが受け入れてきたのはガストアルバイター(一時滞在の労働者)で、「3年間」などの期限が来たら帰ってもらうというものです。主要政党は右も左も「だから移民政策は取らない」が建前でした。
だが現実はそうならなかった。半数は本国に帰っても、半数はとどまった。ドイツの方が労働環境が安全で、収入も多かったからです。石油ショックや経済低迷で、1970年代には外国人労働者の受け入れが中止されました。しかし、いったん帰国したらドイツに戻れないことから定住が加速し、むしろ本国から家族を呼び寄せる人が増えました。
1980年代後半、私は保守系コール政権の閣僚として女性や若者を担当しました。そこでわかったのは貧困や差別などの問題を抱える女性や若者の多くが、ドイツに長く暮らす外国人だったことです。ドイツ語が十分に話せない。教育水準も低い。ほかの人と同じ権利や機会を持つ人間とはみなされていない。(移民はいないという)建前と(彼らを取り巻く)現実との深刻な矛盾に気づいたのです。
1990年代には、情報通信やバイオなどの分野で高い技術をもっている人材が足りないとの悲鳴が経済界から上がりました。さらに冷戦後に頻発した(旧ユーゴスラビアなどでの)地域紛争で難民申請者が増え、彼らを受け入れる責務も生じました。どんなに高い壁を築いても、戦乱から逃れてくる人々は必ず入ってきます。こうしてドイツは「いかに国を開くか」という切実な問いを突きつけられました・・
・・移民の受け入れは、単に労働力を受け入れることではありません。彼らも家族を持てば、子供を学校に通わせる。病気になれば医療機関で治療を受けるし、年をとれば年金をもらう。ただ、たとえ出身地が外国であっても、ドイツ社会の構成メンバーになるからにはドイツの原則や理念を受け入れてもらわねばなりません。かといって、価値観を一方的に押しつければいいわけでもない。彼らの固有の文化も尊重されてしかるべきでしょう。少数者の権利や文化を認めるということも、ドイツの基本的な価値観だからです・・
ぜひ、原文をお読みください。
W杯ドイツの活躍、移民政策
サッカーのワールドカップを見ていて、ヨーロッパ各国もアフリカ系の選手が多いなと思っていました。優勝したドイツはどうなんだろうと思っていたら、7月15日の読売新聞国際面「独、移民融合のV」に解説がありました。
登録23選手中、移民系選手は6人です。得点記録を作ったクローゼ選手は、ポーランド出身だそうです。他に、トルコ系、ガーナ系の選手もいます。前回2010年の大会では、11人だったそうです。
2012年にドイツに来た永住型の移民は約40万人で、今やアメリカに次ぐ多さだそうです。総人口に占める移民系住民の割合は、20%に達しています。政府の政策として、少子高齢化による労働力不足に備えて、移民を受け入れ教育の機会を与えているのです。
企業と社会
田久保善彦・グロービス経営大学院研究科長の「企業経営から見たCSR」(7月11日)の続き。
・・日本企業のこれまでのカギ括弧付きのCSRの特徴として、環境対応とコンプライアンスの二分野への重点が置かれすぎてきたことが挙げられる。過去の公害問題という苦い経験から、特に日本の製造業の環境対策は世界的にみてもトップクラスであり、それ自身は非常に素晴らしいことである。また、コンプライアンスが守られなければその企業は社会的に抹殺され存在する事すらできないため、その企業の価値発揮の根源である生業の発展と、ここを重視するのは基本中の基本である。
更に最近では、各種のNPOやNGOへの資金的支援や協業の実施などを、強く志向する企業も多く出てきている。これも、様々な種類の主体が活躍する環境を整えるという観点から一般的には喜ばしいことであるが、支援活動自体が目的化してしまっているようなもの、また目的意識や当該企業の活動内容との関連性などが希薄なものなども散見される。
しかし、このように、特定の分野への対応のみがフォーカスされた結果、近年のグローバル社会からの要請に応え切れていない部分があることも否めない。例えば、海外における二次受け、三次受けの労働管理などに関しては、日本企業は課題を指摘されることも少なくない・・
ポスト他著『企業と社会―企業戦略・公共政策・倫理』上下(邦訳2012年、ミネルヴァ書房)が、参考になります。目次を見ていただくと、企業が社会と、いかにいろいろな分野で関わっているかがわかります(上巻、下巻)。
歩きスマホの危険性
7月7日の朝日新聞夕刊に、「混乱、歩きスマホ1500人」という記事が載っていました。渋谷駅前の交差点を、通行人全員が「歩きスマホ」で横断したらどうなるかという、NTTドコモが作った仮想の動画です。
青信号が点灯する46秒間で横断できたのは547人で、4割。衝突446件、転倒103件、スマホの落下21件が発生しました。動画を見てください。
駅の構内でも、危ないですよね。よけてくれないのですから。電車内でスマホに集中して、通路を空けてくれない人も、困ったものです。