カテゴリー別アーカイブ: 報道機関

ニュースがない?

皆さん、最近のテレビのニュース番組を見て、「ニュースがないなあ」と感じませんか。
私は最近、NHKの朝昼夜、定時のニュースを見なくなりました。見ても冒頭の「今日の項目」を見たら、ほかの番組に変えてしまいます。インターネットでNHKニュースを確認しておけば、19時のニュースを見なくても大きなニュースは分かります。そして、ウクライナとコロナのニュースばかりです。これらが重要であることは間違いありませんが、ほかのニュースはどうなったのでしょうか。

新聞も同じなのですが、解説欄などは勉強になるのでちぎって、後でゆっくりと読んでいます。このホームページで紹介するのも、ニュースではなく解説記事が主です。

コロナで取材が難しいことは分かりますが、これら2つ以外のニュースはないのでしょうか。
記者にとって、足で拾う能力とか、テーマを決めて取材するといった能力が落ちるのではありませんか。 心配です。

記者会見で指名されない記者

2月2日の朝日新聞オピニオン欄「多事奏論」、原真人・編集委員の「日銀の質問封じ たかが記者会見、されど」から。

・・・記者稼業を長年続けていると出席した記者会見の数は千回や2千回を軽く超える。その経験から言えるのは会見には2種類あるということだ。一つは「伝えたい何か」を出来るだけ多くの人に伝えるための会見。もう一つは「隠したい何か」をできるだけ話さず、ただやり過ごす会見である。
昨今は後者が増えている。モリカケ、桜を見る会などの疑惑に揺れた安倍政権、ワクチン接種など新型コロナ対策の遅れを批判された菅政権がそうだ。想定問答をひたすら読み上げ、批判的な質問をする記者を排し、時間が来たらさっさと打ち切る。

私がふだん出席する日本銀行の会見もそうだ。先月開かれた定例会見で黒田東彦総裁は14人の記者の質問に答えた後、最後にひとり挙手する私だけ指名せず会場をあとにした。会見の司会は記者会側が務めるが質問者を指名する裁量は総裁にある。
私が質問の機会を奪われたのはこれが初めてではない。以前から私を含め、異次元金融緩和について厳しい質問をぶつけたり批判的な記事を書いたりする何人かの記者が指名されないことがたびたびあった・・・

・・・たかが日銀会見の話と思わないでいただきたい。黒田体制の9年間で日銀は政府の借金のうち400兆円を事実上肩代わりし株式市場に30兆円超のマネーを投じた。国家の未来を脅かしかねない異様な政策はわずか9人の政策決定会合メンバーで決められた。その権力の中心が日銀総裁なのだ。
たかが一問でもなかろう。権力を批判する一つの質問の制限が全体を萎縮させる。

朝日新聞社史は戦前戦中の朝日報道を「大きな汚点」と記している。戦争を批判せず軍部に協力して国民の戦意をあおり、実態と異なる戦況報告を垂れ流した。戦後はそれを猛省し、二度と同じ過ちを繰り返すまいと社をあげて誓った。その精神は私たち現役記者にも引き継がれている。
とはいえ将来、国家権力が再び戦争に突入しようとしたとき、メディアはそれを止められるだろうか。私には自信がない。権力が手を下すかもしれない検閲や報道統制、記者の逮捕や暴力的圧迫のもとで批判的報道がどこまで続けられるものか・・・

記者会見で、手を挙げても指名されない記者は、一つの勲章なのでしょうね。もっとも、その状況を多くの国民は知らず、また原さんの心配するような社会になっては困ります。

新聞の未来

1月21日の朝日新聞オピニオン欄、前ワシントン・ポスト編集主幹、マーティン・バロンさんのインタビュー「ジャーナリズムの未来」から。
・・・米国で最もよく知られるジャーナリストの一人がワシントン・ポストの前編集主幹マーティン・バロン氏だ。昨年2月までの約8年間、一時は経営不振に直面した同紙の編集部門の改革の先頭に立ち、電子版購読者数を大きく増やした。ネット時代をいかにチャンスに変えたのか・・・

――13年10月、ワシントン・ポスト社はアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏に売却されました。変化は起きましたか。
「彼は最初から最重要かつ根源的なことを実行しました。この新聞の戦略を変えたのです。首都ワシントン地域に焦点を絞るというそれまでの戦略は正しくないと考えていたのです。我々は経済基盤の全てをインターネットに破壊され、広告収入も失い、苦境のさなかにいました。しかし、彼の言葉を借りれば、インターネットは我々に一つの贈り物を与えてくれました。ほとんどコストをかけずに国内、海外のどこにでもニュースを届けられ、プリント版を刷らずに全国紙あるいは国際紙になれるという贈り物です」

――具体的にはどんな改革をしたのでしょうか。
「ベゾス氏は、『戦略に沿った正しい取り組みには投資する』と語りました。彼は二つの要素を満たすアイデアを求めました。一つは単に地域的な読者ではなく、全国の人々に訴求するもの。もう一つは、若い世代を引きつけるもの。我々は若い読者を必要としていました。若い世代を開拓しなければ、20年後には読者はいなくなってしまいます。そこで我々はそれらの要素を満たす一連のアイデアを提案しました」

「一つはインターネットにおけるコミュニケーションとは何かを理解しているジャーナリストたちの採用です。彼らの多くはデジタルメディア出身で、紙中心の媒体で働いたことがない人々です。彼らは、新聞で典型的に使われる堅苦しい文体や構成ではなく、インフォーマルで親しみやすい話し言葉で文章を書きます。ソーシャルメディア上で認知され、読者を開拓する必要があることを理解していました。また、自分が書いた記事がどう読まれているかを知るために指標に注意を払います。記事を読んだ読者の数や最も関心を集めたテーマ、どのような表現方法が良い結果を出しているかなどを知る指標を把握していました。彼らは我々に一つのモデルを示してくれました」

「我々の仕事は24時間態勢になりました。インターネットの世界では人々は瞬時にニュースが読めることを期待しています。我々は夜間のニュース部隊をつくりました。日中に編集部門が取り上げなかったニュースの中から最も話題になっている面白いものを選んだり、違った視点から続報を出したり、ニュース速報を配信したりする仕事を一晩中担当します。これは大変成功しました」

――インターネット上には、無料で読める記事が氾濫しています。ジャーナリズムはどう差別化を図るべきでしょうか。
「ジャーナリズムの将来は、我々の仕事にお金を払う気持ちを読者に持ってもらえるかどうかにかかっています。真の価値を提供すれば、読者はそれにお金を払います。徹底した深い取材、より多くの調査報道、優れた分析、物語性のある読み物、深く掘り下げた人物記事など、こうしたジャーナリズムの仕事はメディアの将来にとって極めて重要です」

命・暮らしの支え手

1月15日の朝日新聞1面に「濃厚接触待機、10日間に 命・暮らしの支え手、最短6日も 新型コロナ」という記事が載っていました。
・・・新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者の待機期間について、厚生労働省は14日、オミクロン株の感染拡大地域では、現在の14日間から10日間に短縮すると発表した。介護や育児サービス、生活必需品の小売りなど、命や暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」は、検査で陰性を確認し、最短で6日に短縮できるようにする・・・

「エッセンシャルワーカー」を「命や暮らしの支え手」と、言い換えています。良いことですね。
「エッセンシャルワーカー」と言われても、何を指すのか、どのような職業が含まれるか、はっきりと言える人は多くはないでしょう。私もそうです。命や暮らしの支え手と言われれば、たいがいの人は想像ができるでしょう。
このように、カタカナ語は、なるべく日本語に言い換えてほしいです。これも、マスコミの役割だと思います。

と書いたら、16日の朝日新聞「水道管に規格外塗料 東京や横浜で一部工事中断」に、次のような表現がありました。
・・・一部の水道管に認証規格をクリアしていない塗料が使われており、東京都や大阪市などが更新などの工事を中断していることがわかった・・・
「クリア」なんて言葉を使わず、「認証規格を満たしていない塗料が」で良いと思います。

新聞を毎日読む人は20代3%

12月28日の朝日新聞経済欄コラム経済気象台、「新聞読者の少子化」から。

・・・「20代以下4%」。ある電機メーカーの社内報が「新聞を毎日読んでいるか」を社員に尋ねた結果だ。30代12%、40代23%、50代30%、60代42%とつづく。
新聞通信調査会が先月発表した「メディアに関する全国世論調査」の結果では、「新聞を毎日読む」人は20代3%、30代9%、40代21%、50代42%、60代58%だった。
両者を比較すると前者は50、60代の値が後者より十数ポイントも低いが、いずれにせよ日本の若者が新聞を読まないのは事実のようだ。
全国調査は2008年が初回で、新聞を読む人の割合は全世代とも年々減少傾向にある。読まない人が歳を取ると読み始めるわけではない。10年後に30代の値が3%以下になることも予見される。新聞読者の「少子化」は深刻だ。
朗報は20代の49%、30代の68%がインターネットのニュースは毎日読むと回答したことか。興味関心に合う記事を「スマートニュース」などキュレーションアプリで取捨選択し、スマホで読む様子が調査結果からうかがえる・・・

新聞社が読者開拓に失敗していることが分かります。ニュースを見るだけなら、インターネットやテレビの方が早いです。新聞の長所、すなわち、世界中のニュースを編集してくれること、それによって何が起こっているのか何が重要なニュースかが分かること、関心事以外のニュースも目に入ること、専門家による解説が載っていることなどを、若い人に説明しなければなりません。
かつてのように、競争相手のメディアがない時代ではありません。インターネットに流れる若者を新聞購読に誘導するように、各社が販売促進に努力しているようには見えないのです。