カテゴリーアーカイブ:報道機関

アメリカの地方紙、NPOが経営

2026年6月27日   岡本全勝

6月17日の朝日新聞「米国の地方紙、NPOが経営 持続可能なモデル、模索続く」から。

・・・米国の地方紙の経営を非営利組織(NPO)が担う例が増えている。広告収入の減少などによって厳しい経営環境が続くなか、持続可能な形で地域ニュースを伝えるモデルとして注目されている。

東部ペンシルベニア州の地方紙、「ピッツバーグ・ポスト・ガゼット」は5月から、経営母体がNPOのベネトゥリス機構に移った。同紙は1月に「廃刊する」と表明。米国の主要都市で地方紙が完全に消える例となる可能性が浮上していた。
ベネトゥリス機構は地方ニュースを存続させるため、2021年にメリーランド州ボルティモアで設立された。創設者はホテルチェーン経営で財を成し、私財を投じた。デジタルメディア「ボルティモア・バナー」を22年に立ち上げた。
25年に麻薬中毒に関連した報道でピュリツァー賞を受賞するなどの成功を収め、有料購読者も約8万人に達している。同機構で寄付担当を務めるサラ・ウォルトン氏によると、以前から他の都市への拡大を検討していた。ポスト・ガゼット紙の廃刊が持ち上がり、買収に動いたという。
米国のNPOは一定の条件を満たせば、寄付をした人が税控除も受けられ、営利企業と比べて資金集めの幅が増える。ただ、NPOになったから、経営状況が自動的に改善するわけでもない。ポスト・ガゼット紙は以前の経営主体の時と比べ、人員削減を実施することになった。労働組合からは批判も出ている。

米地方紙でいち早くNPOとなったのは、西部ユタ州のソルトレーク・トリビューンだ。苦境を心配した地元の篤志家が買収し、19年にNPOとして登録。現在は完全に独立採算となっている。
トリビューン紙のローレン・グスタス編集主幹によると、「地域の読者が求めるニュース」をより重視するようになった。地域の課題の「解決型報道」を意識的に増やしているという。
トリビューン紙の次の挑戦は、ウェブサイトの「ペイウォール」(課金制)をなくし、有料会員だけではなく、あらゆる人がニュースを読めるようにすることで、5月半ばから始めた。
一方、有料購読者から得てきた収入は引き続き必要だ。このため、今後は「購読料」ではなく、「寄付」として支援をお願いしている。有料購読者の多くはニュースに直接の対価を払うことより、地元報道機関の存在を重視し、トリビューン紙への支出を続けることで期待をかけている、とも言える。
トリビューン紙のデジタル購読者は現在3万人あまりで、5年前の約2倍。週2回発行している紙の新聞も、約1万人が購読している。グスタス氏は「NPOであっても、損失を出すわけにはいかない。収入を多角化する必要がある」と話す・・・

世論調査の危機

2026年5月13日   岡本全勝

4月24日の日経新聞夕刊に「世論調査は本当にオワコン? 有権者の「縮図」、結果が各社違う理由」が載っていました。
・・・報道各社による世論調査が岐路を迎えている。主流の電話調査は詐欺電話への警戒などを背景に電話を受けない人も増えている。現在は調査としての有効性は確保されているが、専門家はあと数年で「限界」がくると語る。世論調査をめぐる疑問に答える・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。次のようなことが書かれています。
・回答率が2002年には60%あったものが、40%程度まで低下しています。
電話による詐欺事件が増加し、知らない電話番号には出ないのです。アメリカでは1割未満だそうです。
・回答者が高齢者に偏っています。固定電話の割合が高いと、若者の回答が減ります。

東京目線の災害報道

2026年4月17日   岡本全勝

4月1日の朝日新聞「社会と新聞をつなぐ 新パブリックエディターに3氏」。
・・・朝日新聞社のパブリックエディター(PE)に1日、飲料メーカー・チェリオコーポレーション社長の菅(かん)大介さん(44)、京都大学大学院法学研究科教授の曽我部真裕(そがべまさひろ)さん(51)、クリエーティブディレクターの辻愛沙子(あさこ)さん(30)が就任しました。新聞への期待や注文、新PEとしての抱負を聞きました・・・

菅大介・チェリオコーポレーション社長の「前向く力、もらえる記事を」から。
・・・忘れられない報道があります。2011年の東日本大震災直後から6週間、自社の飲料計17万本を被災地に届けました。そのさなか、朝日新聞出版の週刊誌AERAの表紙に、「放射能がくる」との見出しと防護マスク姿の人のアップ写真が掲載されたのです。
衝撃を受けました。被災地で人々が寒さに耐えていた時期です。被災地に思いを寄せることなく、東京からの目線で恐怖をあおっているのではと怒りがこみ上げました。「AERAイコール朝日新聞」と受け止めていた私はそれ以来、朝日新聞から距離を置くようになりました・・・

若者の報道不信に応える

2026年3月7日   岡本全勝

2月20日の朝日新聞オピニオン欄、藤村厚夫さんの「若者に信頼される報道スタイルを」から。

・・・若者にニュースがどう見えているかを、米国の10代を対象にして探った衝撃的な調査結果がある(「ニュースリテラシープロジェクト」2025年11月)。報告書によれば、10代(13~18歳・756人を対象)の8割以上がニュース(メディア)に否定的な感情をいだいている(前年の調査では7割近くが「意図的な偏向を加えている」とも見ている)。さらに、報道機関やジャーナリストらの振る舞いを「文脈を外れて写真や動画を切りとっている」(60%)、「情報提供に対価や便宜を与える」(51%)、「引用などの細部を粉飾する」(50%)などと見ていることもわかった。若者のニュースへの不信感はこのように深いのだ。

海の向こうの話だと思っていてはいけない。電通が24年に実施した調査で、高校生・大学生にとって「信頼できる情報源は、ほとんどない(信頼できる情報源だと思っている割合は、SNSを含めたほぼすべてのメディアが10%前後)」との結果が出た(電通マクロミルインサイト・若者まるわかり調査)。
内訳では、テレビ番組(ニュース)への信頼は31・1%と格別に高いものの、X、ユーチューブ、インスタグラムの情報より「新聞記事」は信頼が低く、11・1%にとどまる。国内でもニュース不信は深いと見るべきだ。

ニュースを報ずる側にできることはなにか。先にあげた米国の調査で、10代の若者が「改善すべき点」を回答している。「正直であること/事実を正しく伝えること」(283人)、「偏向の最小化/バランスの改善」(138人)が1位と2位にあがっている。続く「ポジティブ(前向き)な報道」と「重要な出来事の発信」がいずれも19人と大差があることから、ファクト(事実)への希求と偏向への危惧という対をなす命題が飛び抜けて大きい。
この現状を知れば、「報道をこれまで以上に正確に行っていく」では済まされない。若者の求めに応えるニュースの「創り方」と「語り方」が必要だし、そんな報道スタイルの実践を若者が見えるようにしなければならない。

「事実を伝える」「偏向の排除」を明示する報道スタイルの開発では、米国での試みが参考になる。まず、新興メディア・セマフォーの事例を紹介しよう。セマフォーでは、客観情報に絞って伝える「ニュース」、記者の視点や意見を伝える「ビュー」、注目すべきポイントなど、小見出しを付したセクションを設けて見せる。ニュースの読解を手助けするという意義もあるだろうが、「事実」と「意見」の違いを読者が理解して読み取れる効果が期待できる。執筆する側にも、「ニュース=事実」セクションでは事実に徹した記述を促されるはずだ。「だれが(述べたのか)」も明示せずに「との指摘もある」などとしたり、匿名コメントを乱発したりするような主観の押しつけにつながるスタイルは消滅を迫られる・・・

新聞社社長に必要なもの

2026年2月15日   岡本全勝

日本経済新聞社は、次期社長に飯田展久専務が社長に昇格する人事を内定しました。経歴を見ると、記者の出身ですが、編集局長を経ず、情報サービス部門から就任されるようです。

新聞社の組織の中では、記事を書く編集部門が最右翼です。記事が商品なのですから。しかし、優秀な記者が良い経営者になるかというと、そうではないでしょう。求められている能力が違うのです。良い料理人が良い経営者になるとは限らない、良い選手が良い球団経営者になるとは限らないことと同じです。
新聞社も企業ですから、そしてかつてのように良い記事を書けば売れる時代でなくなったので、どのようにして「稼ぐか」が課題です。日経新聞は、それを前面に出したと思われます(間違っていたらごめんなさい)。
外国なら、会社の外から経営の専門家を呼ぶこともあります。でも、私は、記者のようにその会社の第一線の経験があり、その苦労がわかっている人が幹部になる方が、経営にも良いと思います。

この記事には「日経電子版の有料会員数は24年12月に100万人を超え、英フィナンシャル・タイムズなどを含めた有料ID数は世界3位に成長した」ともあります。
他方で、2月6日の読売新聞「民主主義 揺らぐ恐れ 米紙大リストラ メディア縮小 権力監視機能低下」は、ワシントン・ポスト紙が従業員の3分の1を解雇したことを伝えています。アメリカでは、主な日刊紙の発行部数が1980年代の6200万部から、2025年には1525万部と、4分の1に落ち込んでいます。2005年に8900紙あったのが、3500紙に減少しています。ニューヨーク・タイムズが内容を拡充し収益を多様化したのに対し、ワシントン・ポストはオンラインの収益化で苦戦したのだそうです。
『2050年のメディア』