読売新聞が11月1日から7日まで、「変容する米国」を連載していました。なかなか読み応えのある内容でした。読んで思ったことは、アメリカも、あるいはアメリカは変化を続ける社会だということです。それが、この企画の趣旨でしょうが。そしてその変化は、単線的にあるいは問題なく進むのではなく、国民の間に軋轢を生みながら、解決を模索し続けているということです。
例えば第5回「軍 進むLGBTQ配慮 共和「戦力損なう」反発」は、男性中心だった軍隊が性の多様性を受け入れつつある実態です。しかし、すんなりとはいきません。日本も今後、このような事態になるのでしょうね。
・・・米軍では1993年、民主党のクリントン大統領時代に同性愛者について「尋ねず、明かさず」(Don’t ask, don’t tell)とのルールが導入された。組織内で問われない代わりに、沈黙を保つことを義務付けられた。
このルールが民主党のオバマ政権下の2011年に撤廃されるまで、公言したことを理由に1万3000人以上が除隊させられた。うち約2000人は名誉除隊にならず、退役軍人としての恩恵を奪われた。バイデン政権は、名誉除隊の再指定に向けた取り組みを進めている。米軍人が性別変更の手術を受ける場合は同省が費用を負担し、その間は従軍を免除される。
共和党や退役軍人などの間では、こうしたLGBTQ(性的少数者)への特別な配慮が、米軍の戦力を損なっているとの考えが根強い。トランプ前大統領は17年、トランスジェンダーの米軍入隊の再禁止を指示した。
元米陸軍中将のトーマス・スポール氏(65)は、トランスジェンダーの軍人がうつ病などにかかりやすく、心の健康を崩す割合が障害を持たない人の10倍との調査結果を挙げ、「精神的な負担が重い軍に受け入れるべきではない。手術や精神疾患のケアで部隊から離れる時間も、軍の即応力を低下させている」と主張する。
米議会下院は今年7月、共和党が主導し、性別変更の手術を負担することを廃止する内容を含む法案を可決した。民主党が多数を占める上院では可決されない見通しだが、LGBTQをめぐる党派対立は激化の一途をたどっている・・・