18日の朝日新聞や日経新聞が、県に移管する国道や河川について、財源を交付金で措置することにした、と伝えています。国交省はすでに、直轄全体の約1割の道路と河川を、県に移管することを表明しています。その財源をどうするかが、問題だったのです。
県が管理するものは、県が財源を負担することが原則です。しかし、道路や河川は、そうなっていません。まず、国が管理する道路河川(A)について、県は負担金を取られています。県が管理する道路河川には、二種類あって、一つは国の補助金が出るもの(B)、もう一つは国の補助金が出ないもの(C)です。
Cが分権の理想ですが、それならば、Aもやめてもらわなければなりません。しかも、Bは建設事業だけ補助金(基本は2分の1)が出て、維持管理には補助金はありませんが、Aは建設事業(基本は3分の1)も維持管理(基本は45%)にも負担金を取られています。現状が平等ではないのです。知事会は、Aの負担金を廃止することを主張していますが、実現していません。分権推進委員会第3次勧告の対象テーマです。
今回は、Aの一部を、Bに移そうということです。一気にCには行かないのです。すると、A並みの財源負担割合(国から見ると建設事業は3分の2、維持管理は55%)の交付金をつくると、国も県も損得なしとなります。もちろん、これは財源負担割合(仕組み)であって、毎年の事業費は変動します。
この枠組みを地方が受け入れるかどうかが、次の課題になります。
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地方行財政
出先機関改革
16日の地方分権改革推進委員会で、国の出先機関の事務・権限の仕分けに関する各府省の見解が、公表されています。各省の回答は、9割が「引き続き出先機関で対応する」だそうです。日経新聞は知事会幹部の話として、「『仕事を減らしたい』と自ら言い出す役人はいないだろう」と伝えています。
2009年度の地方財政の見込み
28日に、総務省が「平成21年度の地方財政の課題」と「平成21年度地方財政収支の8月仮試算」を公表しました。
これは、現時点での見通しを、機械的に計算したものです。それによると、地方財政計画総額は微減、税収は微増、交付税は減少です。見ていただくとわかるように、歳出では、「骨太の方針」で削減や据え置きが決まっている経費がほとんどで、増えているのは社会保障関係の国庫補助事業だけです。税収が横ばいなので、交付税総額は減少しています。
交付税の実力(法定率分)は微減、前年度からの繰り越しがなくなり、交付税財源は減っています。それでは地方財政計画に穴が空き、財源不足額が生じています。
「仮試算」の注2に書いてあるように、財源不足額は5.5兆円ですが、地方団体の努力で埋めることができない額が、0.7兆円生じます。これは、2006年度以来です。これが、国と地方の折半対象になります。このうち0.2兆円は特別交付金をあて(そのように決まっています)、残る0.5兆円が折半対象になります。よって、国からの臨時財政対策加算が、2338億円となります。
景気が良くないので、国の税収が伸びないこと=交付税総額が伸びないことと、地方税が伸びないことが、この姿をつくっています。
教育、国の責任と地方の責任
24日の毎日新聞「発言席」は、西尾理弘出雲市長の「教育振興基本計画、具体策は自治体の主体性で」でした。西尾市長は、文部官僚出身です。三位一体改革の際も、積極的に発言をしておられました。
・・この場合、文科省は、教員の数や学級編成基準等に関し、国家政策としてナショナルミニマム(最低基準)を定め、基準達成に要する財源は、各地域の財政状況に応じ国から地方に移譲すべきだと考える。そして水準以上の財源措置については、各都道府県、市町村が自助努力でまかない、よりよい教育をめざして切磋琢磨する仕組みを導入することにより、国は、教育予算が対GDP比5%以上の先進国並みになるよう政策的に誘導すべきである・・
・・要するに文科省は、人件費の予算官庁ではなく、絶えず中長期の視点から、全国的な教員数や学級編成、学習内容の量及び水準に関し、基本的な政策を定め、具体的な方策は地方自治体の主体性に委ねる方向に発展すべきだと考える・・
2008.08.25
24日の毎日新聞社説は、人羅格論説委員の「どうした知事 「負担こわい」では分権は進まぬ」でした。・・改革派知事が脚光を浴びたひところの勢いはどこへ行ったのか。福田内閣で地方分権改革の議論が進む中、都道府県知事の熱意がいまひとつ感じられない。本来は一番の応援団になるはずなのに、地方に権限が移ってもカネや人員の負担を押しつけられないか、との不安が先だっているのだ。国の出先機関の地方への移管、統廃合論議が本格化するが、都道府県から慎重論が出て頓挫する、との見方すらある。そうなれば中央省庁の思うつぼにはまり官僚がほくそ笑むだけだ。知事の踏ん張りどころである。
・・かと言って、「負担がこわい」と手をこまねいていては改革は進まない。地方整備局見直しの前提となる国道、1級河川の地方移管について、国交省は都道府県と個別に協議して揺さぶる構えだ。知事会はそれこそ財源、人員とセットで権限移譲の具体案を作り、世論に訴え結束すべきではないか。問われているのは分権への気概である・・