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地方行財政

分権改革15年目

18日の読売新聞は、1面を使って「基礎からわかる地方分権改革」を、解説していました。1993年から始まった、第1次分権改革からの歴史を含め、わかりやすく整理されています。分権改革については、「15年かかって、ここまで進んだ」「15年かかっても、これだけしか進んでいない」。双方の評価が、あります。私は、戦後50年間、有識者・関係者が主張しながら進まなかった分権が、進んだことを評価しています。各紙が報道しているように、国から地方への権限移譲・国の出先機関移譲・税源移譲は、抵抗が大きく、簡単には進みません。現在の日本の政治権力に対し、改革を挑んでいるのですから、そう簡単には進みません。決定権は、現在の政治権力が持っているのですから。しかし、動き出した「運動」は、止めることはできないと思います。もちろん、ペリーが来て15年で幕府崩壊、5年で鉄道を敷設といった明治維新や、敗戦後2年で憲法を改正した戦後改革に比べると、今回の改革は遅いですが。

2008.07.10

猪瀬直樹さんのHP「日本国の研究」に、青山彰久読売新聞編集委員の「地方分権改革推進委員会の使命」が載りました。
・・自治・分権改革とは、「自分たちのまちの行方は自分たちで決める」ということに尽きる。「他の誰かに決められて、それに不満を言うのではなく、自分たちで決めた結果を自分たちで引き受ける」という意味だ。自分たちを律し、自分たちで自分たちを統治する。それが自治・分権改革だといえる。自律と自己統治が民主政治の本質とすれば、分権型社会は民主政治の基盤だということができる。自治・分権改革は、一見、行政改革や財政改革のようにみえるとしても、本質的には、最も重要な政治改革だと位置づけることができる。多くの国民の眼には、分権改革がとかく「国と地方の権限と資金の奪い合いでしかない」と映る。だが、この改革の本当の推進力は、国民・住民が共感することにある。なぜ分権社会の構築が必要なのかを、国民・住民が暮らしのレベルで共感しない限り、さらなる分権改革は実現しない。
・・地方とは、どのような場なのか。地方とは、教育、子育て、老人福祉、障害者福祉、まちづくりなど、人々の暮らしを支える公共サービスが展開される現場ではないのか。自治・分権とは、住民に最も近い公共の空間で、暮らしを支えるサービスの設計・供給・負担をめぐる意思決定を、住民が参加して行うようにすることではないか。住民とは、公共サービスの受益者というだけではない。サービスコストの負担者であり、NPOや住民の支え合いを通じて公共サービス供給の担い手にもなり、地域の政策体系全体を最後に決定する主権者にほかならない。だからこそ、この改革は、政治・行政のかたちを変えて、身近な政府は住民自身が作るという方向へ国の構造を転換する課題になる。中央の政治・行政が依然として画一的な制度設計を志向したり、国土開発をめぐって利権の分配に追われていたりする歴史に終止符を打たなければならない。
もちろん、自治体自身の課題も多い。政策立案を中央に依存しきっていたり、中央から施される利権を奪い合っていたりするのではなく、地方という現場を人々の暮らしを支える場としてよみがえらせる必要がある。住民に信頼される効率的な地方政府になっているかどうか。自治体には厳しい自己改革が必要だ。

2008.07.03

猪瀬直樹さんのHP「日本国の研究」に、坪井ゆづる朝日新聞編集委員の「分権のあしたへ」が載っています。
・・福田康夫首相は「分権は内閣の最重要課題だ」と繰り返している。6月20日金曜日に地方分権改革推進委員会の第1次勧告に基づいて、政府が取り組む分権推進要綱を決めたときも、そう言って胸を張った。だが、政府要綱の内容は迫力に欠ける。とくに霞が関の各省から自治体に権限を移す分野で、勧告からの後退が目立つ。各省が「直し」を入れ、勧告を丸めた。「勧告の方向に沿って検討」とか「平成23年度中に結論」といった「あいまい、先送り」が目立ち、なかには「農地転用問題」のように勧告文の原型をとどめていない項目もあった。最重要課題なのに、この程度か。権限や財源を維持したい官僚に比べて、政治決断を迫られる政治家の態度の煮え切らないことよ。ああ、またか。そんな感想を抱いた人が多いはずだ。分権改革がめざすのは、自治体を自立した「地方政府」にすることだ。そのためには各省の権限や財源を自治体に移さなければならない。結果として霞が関の解体につながる・・
この内容は、6月26日のメールマガジンで、配信されたものです。早く紹介しようと思っていたのですが、著作権とルールを守るため、HPに載るのを待っていました。ちなみに、すでに次号(7月3日号)が配信されていて、青山彰久読売新聞編集委員の「地方分権改革推進委員会の使命」です。ご覧になりたい方は、配信登録をしてください。なお、私は、猪瀬直樹さんの主張にすべて賛成しているわけではないことを、付記しておきます。

2008.06.26

26日の東京新聞社説は、「地方分権 出先機関縮小で挽回を」でした。・・分権を内閣の最重要課題と銘打っているのは福田康夫首相である。このままでは「看板に偽りあり」ではないか。次の焦点である国土交通省の地方整備局など出先機関の廃止・縮小にどこまで切り込めるか。挽回(ばんかい)へ大胆な決断を期待する。実行できないなら分権の旗を掲げるのはやめてもらいたい。地方の側にも権限移譲を「ありがた迷惑」ととらえる旧思考の首長がいる。住民が主役の地方自治に向けて首長の意識改革も不可欠だ。そうでないと、官僚側につけ入るすきを与えることになる。