「仕事の仕方」カテゴリーアーカイブ

生き様-仕事の仕方

幅広い人脈作り

日本経済新聞夕刊「人間発見」5月7日から、前田匡史・国際協力銀行総裁の「出すぎる杭 世界を駆ける」です。第1回目から。

・・・昨年度の海外出張は15カ国へ計116日。年の3分の1は海外にいます。直近はインドネシア、中国と飛び、スイスでは世界経済フォーラム(WEF)のダボス会議で登壇。その後、米ワシントンとメキシコに向かいました。米国産の天然ガスをメキシコ湾経由でアジアに運ぶ構想を協議しました。
トップになっても人と直接会うことを大事にしています。ワシントンではトランプ氏の娘婿クシュナー上級顧問をホワイトハウスに訪ねました。大統領の信頼が厚く重要案件を差配するさまを目の当たりにしました。
2度のワシントン駐在で築いた人脈のおかげでトランプ政権にも知人が多くいます。少し前に大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏とも食事しました。トランプタワーに住む旧知のインド人の仲介です・・・

・・・守備範囲を超えると言われそうですが、若いころ「出る杭は打たれるが、出すぎる杭は打たれない」と励ましてくれた先輩がいました。おかげで保守的な銀行にあって型にはまらず、世界中にネットワークを張ることができました。日本の情報収集力や発信力はまだ十分ではありません。自分が役に立てることもあると思っています・・・

朝日新聞のウエッブ言論サイト「論座」、牧野愛博・朝日新聞編集委員の「岡本行夫さんが遺した言葉」(2020年5月8日)に、次のような文章があります。
・・・岡本さんも1991年までは外交官であり、公僕であった。ただ、当時から異色の外交官と言われていた。
外務省の後輩の1人から岡本さんらしい逸話を聞いたことがある。北米一課長時代、岡本さんはいつも外出していた。記者はもちろん、外務省の同僚たちも岡本さんを探し回っていた。外部で政治家や外交官、様々な人と会っていたらしい。岡本さんは課長席に背広をいつもかけておき、「在庁中」というアリバイを作っていたという・・・

在宅勤務が変える仕事の仕方4

在宅勤務が変える仕事の仕方」の続きです。会社や役所で、在宅勤務が行われています。なかなか踏ん切りがつかなかった職場も、今回のコロナウィルス対策で、踏み切ったところも多いようです。これをきっかけに、在宅勤務や仕事の仕方の見直しが進むとよいですね。

在宅勤務をやってみると、いろいろなことが見えてきます。
1 向いている仕事と向いていない仕事がある。
新聞記者さんは、記事はどこでも書けて、本社に送ることができるそうですが、肝心の人に会っての取材ができないのだそうです。
事務職の仕事(デスクワーク)の多くは、自宅勤務もできないことはないけど、すべてができるわけではありません。
例えば翻訳や執筆は、どこでもできます。接客業は、客と会わないと仕事になりません。事務職は、この仕事の混合なのでしょう。

2 仕事の仕分けが進む
すると、家でもできる仕事と、そうでない仕事の振り分けが進みます。
それはまた、1日自宅にいて、何ができたか。その成果を上司に報告しなければならなくなります。その前提は、上司が部下に「明日はこれとこれをしてください」と指示を出すことです。指示がない場合は、家で寝ていてもよいことになります。
無駄な仕事が減るでしょう。特に会議です。

3 労働者の評価が進む。
自宅勤務が進むと、労働者に給料を払う際に、2つの働き方の区分をしなければならないのでしょう。
・時間に対して払う=工場労働者、一般の職員
・成果に対して払う=管理職や専門職
というのが、わかりやすい分類ですが、一般の職員も家で何をしたか、成果を問われます。すると、これまでお気楽に「職場に行くだけで給料をもらっていた人」は、給料をもらえなくなります。

4 管理職の仕事が明確になる。
部下にどのような指示を出すか。そして、その成果を評価することが、管理職に問われることになります。
「前例通りにやっておいて」とか「周りの人に聞いてやってください」では、すまなくなります。

ある民間企業幹部は、「これまで考えていたけれど進まなかった、仕事のやり方の見直し、職員削減を進めることができます」と語っています。なるほど、そのようなよい機会かもしれませんね。

在宅勤務が変える仕事の仕方3、達人たち

在宅勤務を行っている人たちに、様子を聞きました。
しばしばこのホームページに登場するNPOの職員たちは、当初は予定されていた仕事の取り消しが続き、ぼやいていることもありましたが。さすが、自分たちで新しい世界を切り拓く人たちです。この逆境でも、仕事は繁盛しているようです。

・あらゆる会議がオンラインになりましたが、空間移動の制約がないためか、以前より量が増え、質も良くなった気がします。
・もっと前からこの方式でやってれば良かったと思います。
・オンラインでの会議も、こうなる以前から普通に実施していましたが、そればかりになると、かなり疲れます。
・移動の時間がない分だけ、次々と予定が入ってきます。
・オンラインでの研修依頼も増えてきました。
・大学の授業もオンラインで始めました。少人数なので不都合はありません。

さらに、人助けに乗り出す人も。頼もしい人たちです。
・自宅に待機しながら、コロナウイルス関連の対策に追われています。
医療機関向けの食材提供、全国の低所得子育て世帯向けの食材提供。事業が減ったNPO職員を、他のNPOに出向させる仕組みづくりなど

育休から職場復帰した若手職員は。
・生後6月の子どもは、自宅近くの保育園に入園しましたが、緊急事態宣言の発令を受け、登園自粛の強い要請のため預けることができなくなりました。当面はテレワークを中心に勤務し、この状況を乗り切りたいと思っています。
保育園に預けることができないのは困りますが、子どもと過ごす時間が増えたことを前向きに捉えつつ、仕事と両立させます。

ソニー、採用を分け初任給から差をつける

4月21日の日経新聞「正社員って何だろう(2) 」は、「さらば平等 ソニーの覚悟 新人から給与格差 完全実力主義、逆転も可能」でした。
・・・デジタル革命が世界を揺らす21世紀。正社員のかたちって何だろう。ソニーがたどり着いた答えの一つが「初任給」は横一線でスタートという平等原則の見直しだった。その先には重い課題も待ち受けている・・・

・・・ソニーは昨年入社の新入社員から「新人の給与」は平等という原則を廃止した。能力や働き方が高く評価されると「I1」から「I9」までの等級が付き、階級に応じて給与が上がる。
従来は社員に等級を与えるのは最短でも入社2年目の夏以降だったが、昨年からは新入社員にも適用することにした。その結果、3カ月の見習い期間終了後の「初任給」に格差が出るようになった。松浦さんの「I3」だと月のベース給は5万円増え、賞与なども増額。年収は等級がない同期より100万円ほど多い。
いきなり給与に格差をつけるとやる気が失われるのでは? その心配はない。今後の働きぶりでは等級の降格もあるからだ。
「知識では院卒の同期にかなわないが製品化のアイデアでは負けない」。同じ技術職の大卒女性は早期の等級獲得を目指す。自らの働きで逆転可能な仕組みだからこそライバルも評価し、400人超の同期のやる気も失われない・・・

・・・日本の正社員は終身雇用と年功序列を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」が一般的だ。皆が同じ「ムラ社会」に帰属し教育するのも企業なので、初任給も平等であるべきだという考えだ。
一方、初任給に差をつけるソニーの取り組みは、責任や役割に応じて報酬を変える「ジョブ型」を意識する。能力などで個別に新人の給与を決める欧米型に近づけようという試みだ。
初任給見直しに先駆けて12年には採用も変更した。面接でゲーム開発、経理など職種ごとに70コースを提示。学生は第3希望まで選ぶ。人事部だけでなく個々の事業部門幹部も採否に関わる。採用からジョブ型を意識し横並びの初任給もやめる―・・・・

・・・ソニーの場合、等級の降格や剥奪はありうるが解雇に踏み切ることはしない。従来型の雇用関係とバランスをとることで激変を緩和している。経団連も「ジョブ型で採用された社員が特定の職務で能力を発揮できない場合、(解雇するのではなく)別の仕事をやってもらう日本的なジョブ型が望ましい」とする。
焦点は「賃金水準」かもしれない。解雇なしが原則のメンバーシップ型は突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありのジョブ型よりも低くなる。初任給を含む賃金で日本が見劣りする一因も、終身雇用を保証しているからだ。だが「薄給」のままで日本企業は高度人材を獲得できるのか。初任給平等原則の見直しは日本型の「正社員のかたちとは何か」を深く問いかけている・・・

わかりやすい図もついています。記事をご覧ください。
参考「働き方innovation 正社員って何だろう(1)

在宅勤務が変える仕事の仕方2

4月15日の日経新聞オピニオン欄、水野裕司・上級論説委員の「テレワークを阻む壁 時代遅れの時間管理」から。

・・・新型コロナウイルスの感染拡大抑制策として、会社に出勤せずに働くテレワークが広がってきた。自宅で仕事が進むかどうか不安だった人からも「実践してみると、意外にいける」という感想をよく聞く。デジタル技術を使い、会議や打ち合わせもオンラインでできるのは便利だ。
通勤が不要になる利点は大きい。総務省が5年ごとに実施する社会生活基本調査によると、2016年の通勤・通学時間(往復)は全国平均で1時間19分。首都圏の1都3県が1位から4位までを占め、トップの神奈川県は1時間45分にのぼった。これだけの時間を省けるうえ、通勤ラッシュで疲弊せずに済む。仕事の効率は上げやすくなる・・・

・・・しかし一方で、テレワークをやりにくくさせているものもある。労働時間を厳格に管理しなければならないというルールだ。
労働法上、使用者(会社)には労働者が働いた時間を把握・管理する責務があり、これはテレワークでも変わらない。自宅にいれば仕事を中断することがしばしばあるが、在宅勤務をする人は原則として、始業・終業時刻はもとより業務から離れた時刻や戻った時刻をその都度、記録する必要がある・・・
・・・こうした厳正な労働時間の管理は、労働といえば工場で働くことを指していたときから続く仕組みだ。
戦後間もない1947年に施行され、労働時間や賃金の制度を定める労働基準法は、働く時間と生産量が比例する工場労働を前提としている。働いた時間は賃金を決めるための物差しであり、その正確な把握は必要不可欠だった。
ところがデジタル化を中心とした産業構造の変化で、働いた時間と成果が比例しない仕事が急増している。定型作業を除けば、労働時間を賃金算定の基準にすることは理にかなわない。時間管理の意味は薄れているといえる。
労務管理が「集団」から「個」へと変化してきたこともある。工場労働なら、製造現場に集合した従業員を管理者が直接、指揮命令下に置け、労働時間の把握が容易だった。働き方が多様化し、働く場所が会社の中とは限らない現在は、時間管理を徹底しようとしても限界がある・・・

・・・働いた時間の長さでなく、どんな成果を出したかで賃金を決める仕組みを広げていくべきだろう。
労働時間の把握には働き過ぎを防ぐという重要な狙いもある。仕事の時間配分を自分で決める裁量労働制でも、会社が日々の就労状況を把握しなければならないのは、社員の健康管理のためだ・・・