カテゴリーアーカイブ:行政

OECDの対日経済審査報告書

2024年2月1日   岡本全勝

1月11日に、経済協力開発機構(OECD)が2年に1度の対日経済審査の報告書を公表しました。ウエッブで「主な結論」をクリックすると、日本語の要約を読むことができます。
日経新聞、1月12日「日本に定年制廃止を提言 OECD、働き手の確保促す」は、次のように伝えています。
・・・経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。

OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。

高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。
OECDに加盟する38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。
日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。
職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。
OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した・・・

このほか、次のような項目も提言しています。
・段階的な消費税増税などの税収確保
・年功序列賃金からの脱却
・同一労働・同一賃金の徹底
・非正規労働者の被用者保険の適用拡大

生活保護基準額決定過程を明らかにしなかった

2024年1月29日   岡本全勝

1月24日の朝日新聞に「生活保護減の決定過程、説明責任は 名古屋高裁判決、「ブラックボックス」と国を批判」が載っていました。

・・・生活保護の基準額を2013年から段階的に引き下げた国の決定を違法とした昨年11月の名古屋高裁判決は、異例の手法をとった国の決定過程を「ブラックボックス」と批判した・・・
・・・まず一つ目は、一般の低所得者世帯との均衡を図る「ゆがみ調整」だ。この調整は、専門家らが入る厚生労働省審議会の検証結果を踏まえたものだが、同省は独断で調整幅を一律に半分のみとする処理をした。この結果、基準を上げるべき世帯も十分に上がらず、全体で90億円分の保護費が削減された。さらに、こうした対応をしたことを、同省は国民や審議会の委員にも知らせていなかった。
判決は半分にすること自体は「厚労相の裁量権に属する」と認めた一方、専門家の検証結果を変更することは「非常に重要な政策判断」で、「明らかにして是非を問うことが必要不可欠」だったとする。
16年に北海道新聞が報じるまで3年以上、2分の1調整の事実が伏されていたことを「ブラックボックス」と表現し、「国民に知らされず、専門家も検証できなくされていた」と指摘。情報公開に後ろ向きな姿勢に対し、「国民や専門家からの批判を避けようとした可能性も十分に考えられる」とまで言及した。

二つ目の「説明不足」に挙げたのが、厚労省が独自指数をもとに、08~11年の物価下落分を反映させた「デフレ調整」(580億円分)。テレビやパソコンなど保護世帯では支出が低い品目も、同省は専門家に諮ることなく、一般世帯の消費支出をもとに下落率を算出。07~08年には物価が上昇していたが、そこは考慮せず、08年以降の物価下落だけを反映させていた。
判決は専門家の検証を経ないだけでは「過誤、欠落があると言えない」としつつ、その場合は「全体が具体的に説明されなければならない」と指摘。国は妥当性を主張したが、「判断の過程の全体が具体的に説明されているとは言えない」と認定した。
当時の厚労省担当者は口頭弁論で、役所の意思形成過程に関わるとして多くの証言を拒否した。判決は「ブラックボックスにしておいて、専門技術的知見があるから検討の結果を信用するよう主張することは許されない」と強調した・・・

客観的、公正性が、官僚の矜持だったのですが。これは、どうしたことでしょうか。役所の中のどの段階で、このような作業と非公表が決められたのでしょうか。

批判もする友人の意見を聞く

2024年1月27日   岡本全勝

1月10日の朝日新聞オピニオン欄、藤田早苗さんの「「人権のレンズ」持てる教育を」の続きです。

―日本の人権状況について、国連の人権機関や専門家から繰り返し、懸念が表明されたり、勧告が出されたりしてきました。
「驚くのは、日本政府は勧告にまったく耳を傾けようとしないことです。2021年に国会提出を断念した出入国管理法(入管法)改正案に対し、国連人権理事会の3人の特別報告者などが国際人権基準に照らした問題点を指摘したところ、当時の上川陽子法相が『一方的な見解で、抗議せざるを得ない』と反発しました。『クリティカル・フレンド』(批判もする友人)である特別報告者の勧告を無視して、国際社会で信頼と評価を得るのは難しいでしょう」

―「クリティカル・フレンド」とは何でしょう。
「相手のために耳の痛いことでも忠告してくれる友人という意味です。国連人権勧告は友人による建設的な忠告と受け止めるべきなのに日本政府はそれができない。部活動の先輩やコーチから的を射た忠告を受けたとき反論や無視をしますか。多くの国連加盟国は勧告に真摯に向き合い、建設的に対話を重ねています」

もっとも、まったく意見を聞かない国や人もいて、ひんしゅくを買っています。日本がそうなってはいけませんよね。

人権と思いやりとは異なる

2024年1月26日   岡本全勝

1月10日の朝日新聞オピニオン欄「分断を超えるには」、藤田早苗さん(国際人権法研究者)の「「人権のレンズ」持てる教育を」から。

―貧困や差別など日本社会には見えない分断線が引かれている気がします。
「ふだん英国に住み、日本に来ると各地で大学での講義や一般の講演活動を続けています。昨年12月半ばにあった講演会にトランスジェンダーの方が来られ、私の書いた『武器としての国際人権』が支えになって『自分は生きていてもいいんだと思えるようになった』と言われました」
「別の講演会では、子どもの頃から『おまえなんか生まれてこなければよかった』と親に虐待されてきたという参加者がいて、こう言うんです。『自分には人権がある、人としての尊厳があるんだと初めて本で知り、助けられました』」

―追い込まれている人がたくさんいて、藤田さんの本を読み、励まされ、話を聞きに来ている、と。
「ショックでした。人権とは、一人ひとりをかけがえのない個人としてリスペクト(尊重)するということでしょう。日本ではそういう価値が十分根付いていないという問題があるようです。人権とは何かという基本が学校で教えられていないことが原因の一つだと考えています。優しさや思いやりを養うことがあたかも人権教育だという考えが根強く、人権の内容について教える本来の人権教育がなされていないことが問題の一つだと思います」

―どういうことでしょうか。
「私はこれを『優しさ・思いやりアプローチ』の教育と呼んでいます。思いやりの気持ちが向かうのはもっぱら、自分が仲間だと感じている人、助けたいと思える人でしょう。しかし、人権を持つという点では仲間であってもなくても同じです。だれにでも普遍的な人権があり、あらゆる人間の尊厳が大切にされるべきであるという視点が、このアプローチからは抜け落ちてしまいます」
「人権感覚が欠如すれば、自分と異質な人たちや偏見を抱く相手に対して、違う態度で接し、差別的な扱いをする傾向が生まれがちです。例えば、日本の入管の収容施設という閉ざされた空間では、外国人に対する暴行など人権侵害が繰り返されてきました。1960年代に法務省の高官が『(外国人は)煮て食おうと焼いて食おうと自由』と本で書き、国会で問題になりましたが、その意識が変わっていないのではないか、とさえ思えてきます」

「メディアの責任も大きい。例えば、弱者の問題を取りあげるとき、お涙ちょうだいではなく、人権という普遍的な基準に照らして何が問題かを伝える。政府が人権を保障する義務を果たしているのか、権力を監視するパブリック・ウォッチドッグとしての役割をもっと自覚すべきです」

高齢者をお手伝いに派遣

2024年1月24日   岡本全勝

1月5日の読売新聞都民欄に「「もう一人の母」家庭に」が載っていました。高齢女性をお手伝いに派遣する事業ををしている「ぴんぴんころり」の、小日向えり社長を取り上げています。この記事は、起業家の特集のようです。

・・・売りは「おせっかい」の推奨。掃除や料理などの家事代行にとどまらず、保育園の送り迎えや買い物、人生相談まで「業務」は多岐にわたる。現在、首都圏を中心に、1600人以上の「お母さん」が登録し、約500世帯が利用する。「単なる家事代行ではなく、より身近な『お母さん』という立場で、高齢女性のスキルを生かしてほしかった」と話す・・・

長年、和食居酒屋を経営するなどしてきた祖母がリタイア後に元気をなくした姿を見て、高齢者の就労支援事業を始めようと決意した。「高齢者には働くことが一番のビタミン剤と気がついた」。17年7月に「ぴんぴんころり」を設立し、19年3月から「東京かあさん」のサービスを開始した。
スタート直後は、新聞やテレビにも取り上げられたが、コロナ禍に見舞われ、利用が激減した。対面が前提のため、6割の利用者がサービスを休止した。
「別の事業を考えないと……」と、手作り総菜の宅配サービスも始めたものの反応は今ひとつ。苦しい時期が続いたが、コロナ禍が長引くにつれて「東京かあさん」の利用申し込みが増えてきた。在宅勤務する人が増え、自宅に派遣スタッフを呼びやすくなったことが背景にあった。飲食店の休業によって職を失い、スタッフとして登録を希望する高齢者も増えていた・・・
・・・利用者の8割が子育て世帯だ。実家が遠いなど、実の親に頼れない世帯が多く、「『東京かあさん』がなければ生きていけない」といった声も寄せられる。「『東京かあさん』を高齢者と子育て世帯の両方を助けるサービスに育てたい」と意気込む・・・