カテゴリーアーカイブ:行政

丸山真男著『政治の世界他十篇』、2

2014年4月15日   岡本全勝

引き続き、気になったところを引用します。
・・「政界」という言葉があります。政界ということと政治的な世界ということは、今日においては非常にギャップがあります。政界というのは特殊の、政治を職業とする人々の非常に多面多種なサークルであります。つまり、右に申したことをいいかえるならば、政治的な気圧というものは、決して「政界」によってだけ決まるものではない。また、「政界」のことだけを見ていては政治の状況認識はできない、ということになわけであります・・
私は日本の新聞の「政治部」というのは「政界部」というふうに直した方がいいのではないかと、新聞社の知人にからかうのですけれども、かれらもその点で、もっともだといって反駁しません。「政治」というものを報道しないで、政治に重要な出来事を報道しないで「政界」の出来事、派閥がどうなったというような、「政界」の中の人的な関係を報道している。政界ということと政治的世界というものはくい違っているわけであります・・p355。

・・さっき「政界というものは非常に特殊な世界である」ということを申しました。政治のリアリズムというものがないと、政治の言葉の魔術にいかにあやつられるかということは、いわゆる政局の安定、という言葉を例にとってもわかると思います。
「政局の安定」ということはしばしばいわれます。けれど政局の安定というのは、特殊な世界である政界の安定以外の何物も意味しないんです。したがって、日本でいわれている政局の安定ということは、政界の安定であって、それは政治的安定とは必ずしも関係しないし、いわんや国民生活の安定とは何も関係しない・・p381。この項続く。

働きながら家族の介護をする

2014年4月9日   岡本全勝

4月7日の朝日新聞「報われぬ国」は、「介護で欠勤、雇い止め」でした。親の介護のために、会社勤めを辞めざるを得なくなった人たちが、紹介されています。記事によると、総務省の調査では、介護で離職した人は1年間で10万人もいるそうです。また、介護をしながら働いている人は290万人います。介護休暇制度がありますが、使った人は、介護をしながら働いている人の3%でしかありません。
同じく7日の読売新聞「介護と両立、モデル職場、厚労省100社選定。時短や在宅勤務に報奨金」によると、介護しながら働く人(291万人)は、仕事を持つ人の4.5%になるそうです。
これまでは、介護保険制度を利用しながら、娘や嫁が親の介護をしました。しかし、独身の子どもが増えると、難しいです。介護保険制度だけでは、支えられないでしょう。これから多くの職場で、課題になるでしょう。

代表制民主主義を有効ならしめる条件、政党

2014年4月7日   岡本全勝

砂原庸介・大阪大学准教授が、『民主主義の条件』(2015年、東洋経済新報社)を出版されました。日曜日に紀伊國屋本店に行ったら、新刊書の棚の一番前に、平積みされていました。注目されている、売れているということでしょう。目次を見ると、次のようなくだけた表題が並んでいます。
第1章 ダメ、ゼッタイ―罪深き中選挙区制
第2章 あちらを立てればこちらが立たず― 多数制と比例制
第3章 混ぜるなキケン!?―混合制
目次と序章の立ち読み
堅苦しくなく、平易な文章で、読みやすい一般向けの本です。しかし、内容は重要なものです。民主政治が有効に機能しないのは、政治家個人の資質によるのか、制度によるのか。普通には、このような問題提起がされます。しかし、著者が問題にしているのは、選挙制度と政党の役割です。
政治に興味のある人、特に日本の政治に不満を持っている人、さらには政治家、マスメディアの皆さんにも、読んでもらいたいです。以下、著者による本書の紹介を転記します。
・選挙で代表を選んで人々のために働いてもらう民主主義というしくみに問題があるとしたら、それをあくまでも民主主義の中で、「より民主的」なし くみに 変えていくしかないことを強調しています。
・特に重点を置いているのは、「どうやって多数派の民意を政治に伝えるか」ということで、国民の多数派が考えていることにきちんと反応する代表が選ばれるためのしくみを考えています。「一国の政治は、国民を映し出す鏡に過ぎない」と言いますが、国民が悪いというだけでなく、選び方が悪い、ということがあるのではないか、ということです。
・そのために重要なのは「政党」をきちんと機能させることだという説明をしています。政治家個人ではできることが限られているので、政党という組織を作って国民を代表させることが必要だということです。政党の執行部がある程度集権的な決定をできるようにしないとそれが難しいということですが、同時に権力が集中する政党を(政党法などの)法律や規則でコントロールしないといけません。
・選挙制度を考えるときに、「一票の格差」だけが評価基準になるわけではなく、政治制度全体としてどのように政治家に意思決定をさせるかを考えるきっかけになれば、と思っています。

若者ホームレス、社会的自立支援の必要

2014年4月6日   岡本全勝

読売新聞夕刊が、4月1日から「若いホームレス」の連載を始めました。
ネットカフェに寝泊まりし、衣類など全財産を詰めたバッグをコインロッカーに預けて、毎朝、出社する40代の男性が紹介されています。本人は、自分自身のことを「隠れホームレス」だと、表現しています。
「ホームレスになるのは就労が難しい高年者」という常識に、異変が起きているのだそうです。ホームレスの自立支援を行うNPOの窓口に、20~30歳代が目立つようになりました。2010年の調査では、若者ホームレス(40歳未満)の50人のうち、路上だけで暮らすのは12人で、多くはネットカフェや終夜営業店と路上を行き来しています。3人に1人は一人親家庭の出身です。国の調査では、2007年時点で、ネットカフェで寝泊まりするホームレスは、5,400人と推計されています。他方、路上などで過ごすホームレスは、自治体の調査で、2013年には8,000人です。
宮本みち子・放送大学教授は「困窮した若者には、失業保険と生活保護しか用意してこなかった」と指摘しています。若者の社会的自立支援は、家族と職場が担ってきたからです。政府は、2009年から新たな支援を始めました。家賃補助は、既に11万人が利用しました。しかし、保証人が無く、アパートを借りることができない例もあります。

ところ変われば、国民皆保険

2014年4月6日   岡本全勝

4月1日の読売新聞が、オバマケアの加入状況を伝えています。
アメリカでは、医療保険が国民全員加入ではありませんでした。何度か試みられましたが、実現しませんでした。単純化すると「金持ちは民間保険に入り、貧乏人と高齢者は社会保障で。普通の人はそれぞれに」という考え方です。個人の独立や、自主判断を尊重するお国柄です。
2010年にようやく「医療保険制度改革法」ができ、保険加入を義務づけました。無保険者にはペナルティが科せられます。2013年10月から加入申請が始まり、これまでの半年間で600万人が加入したそうです。もっとも、改革前に無保険者が4,900万人いたと言われているので、まだまだ国民皆保険には遠いようです。記事では、保険料が高額だから入らないとか、ここ数年は病院に行っていないから入る価値がない(!)という例が、紹介されています。
日本では、昭和36年(1961年)に国民皆保険になりました。子どもの頃から良く風邪を引いて、お医者さんのお世話になっている私は、日本に生まれて良かったです。