カテゴリーアーカイブ:行政

復興、民間団体との協働

2019年1月15日   岡本全勝

1月15日の福島民報が1面トップに、「イノベ推進機構民間団体と連携 被災地活性化後押し」という記事を載せていました。
・・・福島イノベーション・コースト構想推進機構は浜通りなどの民間団体と連携し、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地の交流人口拡大や地域づくりを担う人材育成を後押しする。機構は昨年末までに、全線開通を控えるJR常磐線の利活用促進や復興を支える人材の育成などに取り組む七団体の事業を補助対象に採択。運営費の補助だけでなく、職員派遣を含めた人的支援を検討し、共同で被災地の課題解決と活性化を進める・・・

行政が、民間団体や企業とどのように協働するかが、新しい課題になっています。
かつては、民間活力利用と言えば、行政の業務を民間委託に出したり、民営化することが主でした。いま新しく試みられているのは、行政と民間団体が対等の立場で、それぞれの持ち味を出して、社会の課題を解決することです。

既にある業務を民間にお願いするのではないので、試行錯誤となります。また、行政も、民間団体と契約を結んでお金を払えば終わりというものでなく、一緒に知恵を出しながら課題を解決しなければなりません。これは、なかなか難しいことです。

行政には、地域の課題を解決しなければならない任務があり、大きな信用力と、そこそこのお金があります。民間団体には、新しいことに取り組む意欲と、それまでに培ったノウハウがあります。これを、どのように協働するかです。
福島イノベーション・コースト構想推進機構

外国人の受け入れ、地域での共生

2019年1月9日   岡本全勝

1月7日の毎日新聞1面トップは「外国籍の子 修学不明1.6万人」でした。

・・・日本に住民登録し、小中学校の就学年齢にある外国籍の子どもの少なくとも約2割にあたる約1万6000人が、学校に通っているか確認できない「就学不明」になっていることが、全国100自治体を対象にした毎日新聞のアンケート調査で明らかになった。既に帰国している事例もあるとみられるが、外国籍の子は義務教育の対象外とされているため就学状況を確認していない自治体も多く、教育を受けられていない子どもが多数いる可能性がある・・・

入国管理法が改正され、外国人労働者受け入れを拡大することになりました。それ以前に、既に大勢の外国人が、日本で暮らしています。
その人たちを、日本社会にどのように受け入れるか。共生の仕組みが問われています。既に、1980年代に日系ブラジル人を受け入れて、課題はわかっています。
言葉の問題、生活習慣の問題、ゴミ捨てルールから始まって、教育、病気、事故・・・孤立させてはなりません。特に子供がかわいそうです。
地域社会と自治体が、その前線になります。それを、国としてどのように支えるのか、これが課題です。
参考「天皇陛下、お誕生日記者会見

中国改革開放の40年、異質論

2019年1月9日   岡本全勝

中国改革開放の40年」の続きです。同じく12月13日の日経新聞経済教室、梶谷懐・神戸大学教授の「異質論超え独自性議論を」から。
・・・中国国内で改革開放40周年のお祝いムードが広がる中、米中間の対立が単なる貿易戦争を超えて、より深刻化、長期化するのではないかという悲観的な見方が広がっている。その根拠となっているのが、米国のペンス副大統領が10月4日、保守系シンクタンクで行った演説だ。
演説が衝撃をもって受け止められたのは、貿易問題のほか、政治、軍事、人権問題まで、トランプ政権の中国への厳しい見方が包括的に含まれていたからだけではない。それらの指摘がいわゆる「中国異質論」のトーン一色に染められていたからである。
中国の改革開放政策が始まってから、米国の歴代政権は、中国の経済発展がいずれ中間層を育て、法の支配の確立や民主化につながると考え、「関与(エンゲージメント)政策」を推進してきた。しかし民主党オバマ政権の後半のころから、中国の政治経済体制の変革に関する悲観的な見方が広がってきていた。
そして2018年3月の全国人民代表大会(全人代)で習近平氏が国家主席の任期を撤廃し、政権の長期化が明らかになったことが、米国の対中政策が「抑止」に転換する上で決定的な役割を果たしたようだ。その対中政策の変化の根幹にあるのが、中国異質論の台頭であるのは間違いない。

関与から抑止へと百八十度の転換を遂げたかにみえる米国の対中政策だが、実はこの2つの立場は、ある認識においては奇妙な一致を見せている。すなわち、現在欧米に存在する政治経済体制が唯一の普遍的なあり方であり、それ以外の体制はそこに向かって「収れん」している限りは存在が認められるが、そうではない「異質な体制」は存在してはならない、という二項対立的な認識である・・・

・・・もう一つの資本主義経済の特徴として忘れてはならないのが、権威主義的な政治体制と極めて相性がよい点にある。その理由の一つは、端的にいえば、短期的かつ不安定な取引関係をベースにした経済活動が、政治権力から独立した労働組合や業界団体などの中間団体の形成を妨げていることである。このような団体の不在は、市場経済への零細業者の旺盛な参入などある種の「自由さ」をもたらすと同時に、市場への政治介入を跳ね返すだけの「自治」の弱さと裏返しになっている。

短期的な取引について回る「囚人のジレンマ」的な相互不信の状況を、法と裁判制度で規制するのではなく、有力な仲介業者が間に入ることで解消するという中国の伝統的な商慣習も、権威主義体制との相性の良さをもたらす理由の一つである。伝統的な中国社会では、高い信頼性と独自の情報ネットワークを持つ有力な「仲介者」が、公権力との間に常に深い関係を維持し、経済秩序を支えていた。
有力な仲介者が零細な取引を仲介して束ねることで、公権力の側からの効率的な管理が可能になるという構図は、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)など、現代中国のインターネットを通じた「仲介」のシステムにも受け継がれている。しかし、法制度に頼らなくても、仲介によって取引に伴うトラブルが回避される手法が高度に発達したことは、逆に社会における法制度への信頼度が低いままとどまり、「法の支配」がなかなか確立されないことと表裏一体であると考えられる。

総じて言えば権力が定めたルールの「裏をかく」ようにして生じてきた、極めて分散的かつ自由闊達な民間経済の活動と、法の支配が及ばない権威主義的な政治体制が微妙なバランスの上に共存しているのが現在の中国の政治経済体制の最大の特徴であり、この両者の組み合わせは今後も簡単には揺らがないだろう・・・

中国改革開放の40年、一貫性欠いた統治モデル

2019年1月5日   岡本全勝

中国改革開放の40年」の続きです。2018年12月12日の日経新聞経済教室「中国・改革開放の40年」、加茂具樹・慶応義塾大学教授の「一貫性欠いた統治モデル」から。副題に、「国際秩序 関与の姿示せず」とあります。

・・・中国共産党が「改革開放」政策を選択してから、およそ40年が経過した。日本を含む国際社会はこの間、2つの異なる見方の間を揺れ動きながら中国に向き合ってきた。一つは期待であり、いま一つは懸念である。
国際社会は、世界の経済成長のけん引役を担う中国経済に一貫して期待を寄せてきた。経済成長を通じて国力が拡大した中国は、国際社会の力(パワー)の分布に影響を与える存在となり、次第にグローバル・ガバナンス(統治)の改革に積極的に加わり、けん引する意欲を示してきた。懸念は、その先にある。

すなわち、中国がどのようなグローバル・ガバナンスの姿を描いているのか、判然としないことである。国際社会は東シナ海や南シナ海などの空海域における、力による現状変更の試みとも見られる中国の行動を、潜在的な中国の秩序観が映し出されたものと考え、問題視している。
中国はこれから一体どこへ向かうのか。国際社会の中国を巡る問いは、この一点に集約されている。この問いを解く手掛かりは、過去40年間の中国の歩みの検討にある・・・

・・・習政権は過去40年間の成果として、そして発展途上国が社会の安定と経済発展を同時に実現するための手本として、「中国モデル(中国方案)」を内外に宣伝している。安定と成長を同時に実現するための保障が、集権的なトップダウン型の統治だという。そこには共産党の無びゅう性と中国がグローバル・ガバナンス改革をけん引する正当性の主張が織り込まれている。しかし、それは実態を正確に説明していない。そもそも共産党には一貫したモデルはなく、試行錯誤的であった。
そして、安定と成長を実現できたのは、集権的なトップダウン型の統治ではなく、共産党が支配を維持するために、必要に迫られるように導入した、公聴会や問責制といったボトムアップ型のメカニズムが機能したからである。
中国モデルは存在するのだろうか。明らかなことは、統治のかたちの模索は、これからも続くということである・・・

・・・中国は改革開放の40年を経て、世界で中心的な役割を果たすようになったと、高揚感をもって総括し、人類の問題解決のために中国モデルを提示するという。そしてポスト改革開放の道を歩み始めたと宣言するだろう。
だが、共産党はいまだ統治のかたちの模索を続けており、中国は依然、改革開放の40年史のなかにいる。このことは、中国がグローバル・ガバナンスの姿を、まだ描き切れていないことを意味する。国際社会が、グローバル・ガバナンスに関わる規範の改善に努めながら、中国を既存の国際秩序の中で誘導する余地は、まだ十分にある・・・
参考「社会はブラウン運動4 指導者の意図も行き当たりばったり
この項続く

ヨーロッパ統合、成功の次に来た危機

2019年1月3日   岡本全勝

2018年12月20日の日経新聞オピニオン欄、刀祢館 久雄・上級論説委員の「欧州統合、問われる耐久力」から。

・・・悲劇をこれ以上繰り返さない不戦の枠組みとして第2次大戦後に立ち上がったのが、いまのEUへと発展する欧州の地域統合だ。
ドイツとフランスの和解と協力を軸に平和を不動のものにし、豊かで米国と競える経済力を築く。2つの目標は達成できた。20世紀の欧州統合は大成功だったといえる。
問題はそのあとだ。08年のリーマン・ショックが契機かのようにユーロ危機から難民問題、英国のEU離脱決定、ポピュリズムの大波と、欧州は激動に見舞われ続ける・・・
・・・東北大名誉教授の田中素香氏は「20世紀の欧州統合モデルでは21世紀の危機に対応できなくなっている」と指摘する・・・

そうですね。2度にわたる世界大戦。それを防ぎ、ドイツの暴走を抑えること。また、ヨーロッパの衰退を食い止めること。西欧は、その二つに成功しました。ECからEUになり、統一通貨ユーロも導入され、統合はさらに進むと考えられていました。
ところが、難民問題、格差問題、若者の失業、そしてポピュリズム・・。これまでの課題とは違う、新しい課題が出てきました。
これらの問題に、どのように対応するか。これまでは、代議制民主主義と自由主義・市場経済で問題を解決してきました。しかし今回の問題は、この2つの哲学と手法を揺さぶっています。これまでとは、違った次元の課題です。新しい次元の問題には、新しい考えと新しい手法が必要なのでしょうか。