カテゴリーアーカイブ:行政

国際機関で日本人幹部を増やすには

2021年1月13日   岡本全勝

1月8日の日経新聞、「国際機関幹部 増やすには」から。
・・・国際機関の主要ポストをめぐる争いが激しくなっている。米国の国力の衰えに乗じて、中国は影響力を拡大しようと積極的に動いている。世界的な秩序の土台となるルールを定める国際機関で、日本人が活躍していくには、どのような戦略が必要なのか。内外の識者に聞いた・・・

ケント・カルダー氏の発言から。
・・・何をすべきか。豊富な経験を持つ欧州に学び、彼らとの関係を培うのが重要だ。人口規模が小さいスイスや北欧諸国が要職を得ている。国際秩序への関心と貢献への意志の強さがあるからだ。
発展途上国と関係を深めることも大切だ。中国が数多くのポストを得たのは、アフリカ諸国との交流を著しく強化したことが大きい。
国際的な広報活動で、日本はあまりに控えめだ。私は新潟で横田めぐみさんの通った学校や拉致現場を訪れ、拉致問題は非道な人権侵害だと実感したが、世界は日本固有の問題とみている。同様の問題を抱える他国と組み、共通認識を広めるべきだ・・・

・・・教育の問題も大きい。浅川雅嗣アジア開発銀行総裁は米プリンストン大学で教えていた時の例外的な日本人留学生だった。自分の意見を持ち、遠慮なくディベートに臨んでいた。他の日本人は遅れて議論に参加したり、指されるのを待ったりしている。彼らも極めて正しい意見を持ち考察に満ちているが、それでは創造性は十分に発揮できない・・・。

発達障害を受け入れる社会、二つの方法?

2021年1月12日   岡本全勝

1月8日の朝日新聞オピニオン欄「ほどよい距離感って?」、熊代亨さん(精神科医)の発言から。

・・・街の精神科医として感じるのは、いまなら発達障害などと診断されるような人が、昭和の時代にはあちこちで当たり前に暮らしていた、ということです。
そうした人たちが早い段階からサポートを受けられるようになったのは良いことです。一方で、いまの社会はますます清潔で行儀良く、効率的で、コミュニケーション能力が求められる。それについて行けない人に対処する需要が高まったから、発達障害が「病気」として受け入れられたようにも感じます・・・

・・・現代社会は確かに自由です。家や身分や地域によって仕事や人間関係を強制されないし、交通機関やインターネットの発達で、距離による制約も大幅に解消しました。
そうした社会では、私たちは友人や恋人や知人として「選ばれなければ」ならない。同時に、友人や恋人や知人を「選ばなくては」ならなくなりました。SNSに好ましい投稿を続けるのも、自分の「市場価値」を高めるためだと思います・・・

復興10年の検証、朝日新聞

2021年1月11日   岡本全勝

1月11日の朝日新聞1面は、「東日本大震災10年 3・11の現在地」「「創造的復興」でも故郷を離れた」でした。
・・・「創造的復興」。この言葉に始まった東日本大震災からの復興事業は、規模・内容ともに前例のないものとなった。
壊滅した沿岸のまちをつくりかえ、かさ上げしたり高台を造成したりした。お金の調達には、25年にわたり所得税を上げるなどの増税を実現し、被災自治体の地元負担をゼロとする仕組みにした。企業の施設復旧にもお金を投じ、住民のコミュニティー再建も支援した・・・

復興の基本方針をつくった復興構想会議からの動き、地元負担なしから一部負担導入へ、町づくりの見通しと結果とのズレなどを、関係者の証言を集めて検証しています。

2面に、私の発言も載っています。
・・・復興次官を務め、10年の大半で復興政策に関わった岡本全勝氏が昨年11月、取材に応じた。10年について「行政哲学の大転換だった」と振り返りつつ、反省を口にした。
「インフラ偏重となった面はある。なりわい再生やコミュニティー再建にもっと重点を置くべきだった」・・・

かさ上げ事業の検証、読売新聞

2021年1月10日   岡本全勝

1月10日の読売新聞1面に、「東日本大震災10年秘話 復興事業」「かさ上げ 歯止めなく 陸前高田」が載っていました。
・・・巨大津波と原発事故。東日本大震災は、誰も経験したことのない未知の複合災害だった。2011年3月のあの日から間もなく10年。いまも記憶に残る象徴的な出来事をたどり直してみた。語られたことのない秘話と真相が浮かんできた・・・

私の発言も、紹介されています。
・・・この春、ようやく終わる土木系の復興事業がある。岩手県陸前高田市のかさ上げだ。東京ディズニーランド2個半分の広大なエリアに、東京ドーム9個分の土を盛り、海抜10メートルの街に造りかえる。被災地で群を抜く規模の事業だが、初期構想はわずか2メートルだった。2年余の間に4段階で5倍に膨れあがったのだ・・・
・・・当初1201億円だった事業費が1657億円に膨らんでも、痛みは感じない。政府は復興増税などを財源に、自治体負担をゼロにしたからだ。復興庁次官を務めた岡本全勝氏は「事業規模を抑える誘因を摘んでしまった」と指摘する。復興計画に携わった学者は「ブレーキのない車みたいだ」と感じていた・・・

24ページには、より詳しく経緯が検証されています。
・・・かさ上げが拡大したことについて、市復興対策局長を務めた蒲生琢磨さん(64)は「津波の恐怖が消えない人は多く、二度と被災しない安全な街にするというのが、復興に携わる者の共通認識だった」と強調する。
ただ、裏方メンバーだったコンサル担当者は「今後、さらに人口が減る陸前高田で、こんな大きなかさ上げをして、活用される見込みがあるだろうかと疑問に感じた。だが、『一日も早く』『より安全に』という雰囲気で、意見を言い出せなかった」と振り返る。
一方で、検討委員の多くは被災者でもあった。ある男性委員(76)は「周りの委員は家などを失い、どう家族を養うかということで頭がいっぱい。市の方針に、住民が異論を挟めるような状況でなかった」と話す。
委員を務めた学識経験者の一人は「陸前高田は被災範囲が広く、他自治体より復興計画の策定が遅れた。市は計画作りを急いだが、大規模な都市計画を作るノウハウはなく、コンサルなど専門家の提案が通ってしまった」と解説する。「地元が意見を言えないなら、自分たち外部の者が『身の丈に合った計画に』と言うべきだったのかもしれない」・・・

大震災から10年が経つので、各紙が検証を始めています。私たちは、前例のないことに取り組んだため、そして一日でも早く復興させるため、走りながら考えました。その時点時点では、良いと考えて進めました。復興事業がほぼ完成した今、改めてどこが良かったかどこが足りなかったか検証することは、良いことです。今後の政策の教訓にして欲しいです。
地方負担については、「朝日新聞インタビュー「ミスター復興が語った後悔と成果」」「復旧事業費地方負担なし、関係者の声」。

省庁再編から20年

2021年1月6日   岡本全勝

1月6日で、省庁再編から20年が経ちます。新しい府省が発足したのが、2001年1月6日でした。省庁改革本部での体験を書いたのが「省庁改革の現場から」です。10年前には、次のように書いていました。「省庁再編10年」。その後、復興庁、出入国在留管理庁ができました。デジタル庁設置の作業が行われています。

かつては、5年か10年のうちには、もう一度、省庁再編(大規模なものでなく、見直し)が行われるだろうと、予測していました。いくつか小規模な変更は行われましたが、再編はありませんでした。
省庁再編には、膨大なエネルギーがかかります。それを提言し実行するだけの、理念が必要です。私は他方で、「国民生活省構想」を提起しています。「厚労省再編案」。1月6日の日経新聞は「くすぶる厚労省改革論 省庁再編20年、コロナ後に検証」を紹介しています。

また、省庁改革は、省庁再編だけでなく、内閣官房や内閣府の強化(政治主導の強化)、行政機能と組織の減量、独立行政法人制度の創設、政策評価と情報公開を含んでいました。いずれも、形としては達成しました。また定着しましたが、政治主導の強化は試行錯誤中でしょう。
さらに、省庁改革が目指したものは、「この国のかたち」の再構築でした。これは、まだまだでしょう。それを念頭に、連載「公共を創る」を書いています。