カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

朝日新聞世論調査、再軍備賛成が7割。1951年

新聞を読んでいて、時々「おやっ」と思うときがあります。知らないことが書かれている場合や、「この新聞もこのようなことを書くのだ」といった場合です。
朝日新聞は、夕刊で「新聞と9条」という企画を連載しています。6月9日に次のような記述があります。
・・・1951年9月16日、毎日新聞が次の世論調査結果を発表した。
日米安保条約について、賛成79.9%、反対6.8%
日本の再軍備について、速やかに再軍備した方がよい24.9%、経済が立ち直ってから51.4%、再軍備すべきでない12.1%
20日、朝日新聞も調査結果を発表した。
自衛軍をつくるという意見に、賛成71%、反対16%。
10人に7人が再軍備を支持した・・・
私は、この世論調査結果は知りませんでした。

健全な外交は安定した政治基盤から

6月8日の読売新聞文化欄、細谷雄一・慶応大学教授の「偏狭化するイギリスの潮流」から。主旨は、イギリスが世界大国であることをやめてしまったのではないか、ということですが、ここでは別の部分を紹介します。
・・・安定した政治的基盤がなければ健全な外交を行うことは難しい。イギリスがアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加を決めたのは、経済的な論理を外交的な論理よりも優先して、財務省主導で判断したからだ。決定の直前まで、同盟国アメリカや日本への十分な説明はなかったために、イギリスの国際的信頼や、同盟国との友好関係を大きく傷つけた。1930年代のドイツへの宥和政策も、財政的見地から財務省が主導したともいわれる・・・
このような見方もあるのですね。

北岡伸一先生、戦後70年談話懇談会。3

朝日新聞5月30日オピニオン欄、北岡伸一先生のインタビュー「戦後70年談話」から、続き。
・・・私が侵略について発言するたび、「日本に侵略の意図はなかった」「マッカーサーも自衛だと言っている」などと批判する人がいますが、侵略には明確な定義があります。辞書的に言えば「他国の意思に反して軍隊を送り込み、人を殺傷し、財産を奪取し、重要な指揮権を制限する」ということです。政治学でも歴史学でも、大きな定義の争いなどありませんし、規範性が絡む国際法にも一応の定義はあります。
その定義に照らした時、どこから見ても侵略に当てはまるものが例えば満州事変です。日本は、満州事変を経て北満州まですべて支配し、満州国という傀儡国家をつくった。これを否定する歴史学者はいないでしょう・・・
「侵略も含め、過去の首相談話に盛り込まれたキーワードを踏襲するかも焦点です」との問に。
・・・植民地支配や反省、おわびを指しているのでしょうが、それぞれの意味合いは異なります。植民地支配も、事実関係としては間違いありません。世界の植民地支配を相対的に見れば、その苛烈さに程度の差こそありますが、だからといって日本の植民地支配は自慢できるものではありません。
反省は、首相もバンドン会議や米議会上下両院合同会議での演説で言及しています。反省は自らに向けてするもの、過ちを繰り返さないと振り返る行為が反省だと思います。一方、謝罪は相手にするもので多分に外交行為です。従って、一国の首相が謝罪するということは微妙な政治判断が伴います。ちなみに、日本で評価が高いドイツのワイツゼッカー元大統領が敗戦40年を機に行った演説にも謝罪の言葉はありません・・

北岡伸一先生、戦後70年談話懇談会。2

朝日新聞5月30日オピニオン欄、北岡伸一先生のインタビュー「戦後70年談話」から、続き。
「21世紀懇の議論をもとに首相談話が書かれるとすれば、有識者の役割は極めて大きいと思います」との問に。
・・・誤解されては困りますが、議論を踏まえて我々がどんな報告を上げるのかと、首相が最終的にどんな首相談話を出すのかは別の話です。懇談会の議論がすべて無視されるとは思いませんが、いずれにせよ首相談話そのものには直接関与していません・・
「談話を出す際に、首相は「幅広い意見に耳を傾けた」と言うのではないでしょうか。21世紀懇の存在が、首相の「免罪符」に使われる恐れはありませんか」との問に。
・・・では、為政者が誰にも相談せず、自分の頭だけで考えて談話を出す方が良いと言うのでしょうか。歴史は事実に基づいており、研究として蓄積がある学者は客観的な材料を提供することができます。一方、首相の談話は外交問題も絡む極めて高度な政治的行為です。談話が歴史を無視したものになっては困りますが、政治的なメッセージは主として政治家が判断すべきではないでしょうか。
有識者会議の役割ですが、例えば政治家が何かを発言する時、官僚はなかなか「ノー」とは言えない。かなり一方通行的な関係である政治家と官僚に比べ、我々は嫌われることを恐れず自由に発言できます。官僚のセクショナリズムに陥ることもありませんから、さまざまな意見を総合する効果はあるのではないでしょうか・・・

北岡伸一先生、戦後70年談話懇談会

朝日新聞5月30日オピニオン欄、北岡伸一先生のインタビュー「戦後70年談話」から。
・・・こういう立場(21世紀構想懇談会座長代理)に就くといろいろ批判を受けることがあります。安保法制懇では朝日新聞から何度もたたかれました。日本の安全保障を考える時、国際構造や周辺国との軍事バランス、関係国の対外認識や意思決定システムから出発しなければなりません。ところが朝日新聞は「憲法の解釈を変えていいのか」「政府の歯止めはどこにあるのか」と、国際情勢から説き起こさない報道ばかりでした。すれ違いが多く、残念でした。
今回の議論にも通じる話ですが、日本はかつてなぜ戦争に突き進み、現在はなぜ平和的に発展していると思いますか。それは憲法9条があるからではなく、世界の構造が変化し、その中における日本の位置が変わったからです。戦前の貧しい時代には「土地の膨張が国の発展につながる」という思い込みがあった・・・戦後の日本は自由な通商貿易に生きることを決意し、発展した。従って自由で安定した国際関係の維持こそ日本の生命線であり、そのための責任の分担や国際貢献が不可欠だと考えています・・・