カテゴリーアーカイブ:著作

「明るい公務員講座」3部作の解説

2021年9月20日   岡本全勝

「明るい公務員講座」(時事通信社)3部作を、改めて紹介します。私の経験を基に、次のような3冊を出版しました。
明るい公務員講座』(2017年)
明るい公務員講座 仕事の達人編』(2018年)
明るい公務員講座 管理職のオキテ』(2019年)

趣旨は、公務員や会社員の仕事の「教科書」を作ることです。
本屋にはビジネスコーナーがあり、たくさんの本が並んでいます。文書の書き方やパソコンの使い方といった「技能」に関するもの、挨拶の仕方や電話のかけ方といった「作法」に関するもの、そして自己研鑽など「心構え」です。このほかにリーダーシップ論などがあります。それぞれに価値はあるのですが、肝心のことを書いた教科書がないのです。
すなわち、技能や作法の全体像であり、「仕事の仕方」です。「これだけは覚えておくように」という仕事の基礎です。

3部作を読んでいただくとわかりますが、びっくりするようなことは書いてありません。仕事ができる人や出世した人なら、みんなが知っていることです。ところが、若い人は初めてそのような事態に遭遇して、悩むのです。「この仕事をどのように片付けたらよいか」「課長の了解をどのように取ろうか」「毎日忙しいのに、なぜ仕事が片付かないのか」「私のいうことを、なぜ相手は理解してくれないのか」とです。このような「小さいけれど重要なこと」が、書かれた本がないのです。
多くの先輩たちは、本を読むことなく、また研修で教えてもらうことなく、身につけたので、当たり前のことと思っています。「先輩の仕事を見て覚えなさい」でした。それらは言葉にするのが難しく、引継書や手順書にも書かれていないのです。それらを本にしたのです。

本屋には、能力向上のための本が、さまざまな分野でたくさん並んでいるのですが、「仕事の仕方」「仕事の基礎」そのものを書いた本は、意外と見当たりません。
管理職についても、たくさんの指導者論やリーダーシップ論があります。しかし、役所や会社の課長に必要なのは、古典に学ぶ指導者論やナポレオンや松下幸之助さんのようなリーダー論ではなく、職場管理の基礎です。
また、先輩たちがさまざまな本を書いているのですが、それらは経験談であり随筆に近いのです。
私は執筆に当たって、教科書を作ること目指しました。教科書だと、必要な項目を網羅し、それを体系的に並べる必要があります。教科書を目指したとはいえ、読みやすい文章にしました。
ありがたいことに、版を重ねています。また、職員研修講師にも呼んでもらっています。聞くと、このような仕事の基本、課長職の基本を書いたものがないようです。

『明るい公務員講座』は一般職員向け、
『明るい公務員講座 仕事の達人編』は係長や課長補佐向け、
『明るい公務員講座 管理職のオキテ』はこれから課長になる人や課長向けです。

知らないことが書いてあったら、参考にしてください。知っていることばかりなら、安心してください。それが教科書の役割です。経験豊富な方も、時々読み返してもらうと、「そうだよな」と改めて気づくことがあると思います。あなたは忘れていますが、部下たちはそんなことに悩んでいるのです。部下の悩みを知るためにも、読み返してください。

連載「公共を創る」第93回

2021年9月17日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第93回「社会の課題の変化―「弱者発見」とその対応の拡大」が、発行されました。

今回から、「第4章1(3)個人の責任と政府の責任」に入ります。
第4章(連載第71回から)では、日本が成熟社会に入ったことで、社会の問題と行政の課題が変化したことを説明しています。新しく生まれた格差と孤立という不安は、これまでの行政の方法では対応が難しいものでした。
新しい弱者が発見され、行政がその救済を引き受けることになりました。これまで個人や家庭の責任だったリスクが、政府の責任になりました。それが、行政の在り方に大きな変更を求めています。この変更は、国の在り方や憲法の議論にも及ぶ、大きなものだと、私は考えています。

今回は、新しい弱者が発見され、その対応を拡充してきた歴史を振り返ります。
極めて簡単にまとめると、19世紀には労働者を発見し、次に働けない人たちを、20世紀後半に消費者を、21世紀には社会生活において自立できない人を発見したと言えるでしょう。
近代の行政の歴史は、弱者を発見し、それに対する救済の方法をつくってきた歴史です。国民みんなが必ずしも「自立した市民」ではないことを発見し、その人たちを支える手法をつくり出してきました。
そして今また、新しい種類の弱者が発見されました。その人たちを支援する手法は、これまでの社会保障を超えるものです。

2人孤独死

2021年9月15日   岡本全勝

9月14日から朝日新聞社会面で、「2人孤独死」が連載されています。
内容は、記事を読んでいただくとして。高齢者の2人暮らしで、2人とも倒れる、あるいは世話をしていた方が倒れることでもう1人も倒れる事例が載っています。このようなことも起きるのですね。

高齢者の一人暮らしは孤立し、孤独死の可能性があります。このことは、世間では認識されていますが、2人暮らしでも危険性は高いのです。
ここでわかるのは、独り暮らしが危険、2人暮らしが危険というのではなく、孤立していることが危険だということです。外部の人と毎日の付き合いがあれば、助けを求めることができるでしょうに。
プライバシーが守られる、扉を閉めれば内部の様子がわからないアパートやマンションででは、孤立はさらに高まります。

他方で、新型コロナウイルス感染症で、一人暮らしでの危険性も報道されています。
一人暮らしで何かあった際の危険、そして孤立していることの危険。これらへの対処が求められています。連載「公共を創る」で取り上げている主題の一つです。

連載「公共を創る」第92回

2021年9月10日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第92回「社会の課題の変化―生活省は「制度」より「課題」に取り組む」が、発行されました。

前回に引き続き、生活省構想を説明しています。
あわせて、制度所管思考と課題所管思考の違い、このような問題には課題所管思考が必要なこと。理想に向かって先頭を進む前衛の役割とともに、ついてこられない人を拾っていく後衛の役割も必要なこと。公務員に求められる専門性が変わってくることを説明しました。
行政に求められる優先課題が変わったことによって、公務員に求められる思考も能力も変わる必要があります。

連載「公共を創る」第91回

2021年8月27日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第91回「社会の課題の変化―新たな課題対応のために生活省の設置を」が、発行されました。

この連載では、日本が経済成長に成功し成熟社会になったのに、社会の意識と仕組みが変わっていないことを主題の一つとしています。そのような視点で見ると、改革への取り組みは30 年は遅れています。

私は、「生活省」の設置を主張しています。それは、社会生活問題に本格的に取り組むためであり、行政の任務が大きく変わったことを明らかにするためにも必要だからです。先日の読売新聞でも話しました。「読売新聞に出ました「首相に直言 秘書官の役割」
各府省に散らばっている、国民の生活の悩みに関する部局を集めて、一つの省にするのです。「生活」と言っても広いですが、軸は、生活者、消費者、社会的弱者を守る施策です。そのような施策を任務としている課や局を統合して、一つの省をつくるのです。明治以来、省庁のほとんどが、生産者と提供者側に立っていました。それに対して、国民の生活側に立った省をつくるのです。
名称は「国民生活省」でもよいのですが、それでは定住外国人が外れることになります。あるいは「生活者省」「暮らし省」といった名称も考えられます。
対象と想定している部局は、次のようなものです。これらの組織あるいはその一部を、生活省に再編統合します。

(共生社会など)内閣府政策統括官(政策調整担当)のうち共生社会に関するもの、男女共同参画局、政策統括官(経済社会システム担当)のうち共助社会づくりに関するもの、関係する本部(子ども・子育て本部、子ども・若者育成支援推進本部、高齢社会対策会議、犯罪被害者等施策推進会議、子どもの貧困対策会議)
(消費者など)消費者庁。食品安全委員会
(家庭や子育て)厚生労働省子ども家庭局
(働き方)厚生労働省雇用環境・均等局、職業安定局、人材開発統括官、労働基準局
(社会的弱者)厚生労働省社会・援護局。法務省保護局、人権擁護局
(定住外国人)出入国在留管理庁在留管理支援部