カテゴリーアーカイブ:社会の見方

イギリスの強さ、官僚の留学記

2018年2月21日   岡本全勝

橘宏樹著『現役官僚の滞英日記』(2018年、PLANETS)が興味深かったです。著者は、1980年生まれの官僚で(橘宏樹は仮名です)、2014年から2年間、イギリスの2つの大学院に留学しました。LSEとオックスフォードです。その間に、毎月1回、見聞きしたこと考えたことを、メールマガジンで連載しました。この本は、それをまとめたものです。

海外での体験や見聞を記すことは、かつてはよくありました。読む価値があるかどうかは、筆者の「切り口」「切れ味」によります。この本は、一読の価値があります。仮名なので、どのような経験を積んでおられるかは不明ですが、かなりの教養と学識があるとお見受けします。

私が特に興味を持ったのは、「無戦略を可能にする5つの戦術-イギリスの強さの正体」(p145)です。筆者は、「イギリスには戦略はなく、行き当たりばったりに見える。しかし、そこに強さの正体がある」と分析します。その「うまさ」とは、次の5つです。
弱い紐帯のハブ機能(旧英領植民地とのつながり)
カンニングの素早さ(他国から優良事例をパクること)
乗っかかり上手なイギリス人(人にやらせるのが上手。反対が日本人)
トライ・アンド・エラーをいとわない(とりあえずやってみる)
フィードバックへの情熱(やってみた結果を生かす)

そのほかにも、オックスフォードのエリート再生産システム、会員制クラブによる金とコネと知恵による力など、イギリスの強さを鋭く観察しています。
世界を支配した国、経済的に衰えたとはいえなお力を持っている国。世界第2位の経済大国になったものの、次の道を迷っている日本には、まだ学ぶことがあります。
お勧めです。

このような立派な内容を、匿名で出版しなければならないほど、役所の「規制」があるのなら、残念です。

住まいのない人を引き受ける施設

2018年2月20日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞オピニオン欄「最低限の住まいとは」、奥田知志さん(NPO法人「抱樸」理事長)の発言から。
・・・1月に火災が起きた札幌市のそしあるハイムは、「無届け施設だ」という指摘があります。「届けを出さねばならなかったのに、出していない」という批判がこめられていますが、的外れです。「届け出なかった」のではなく、「届け出ることができなかった」あるいは「あえて届け出なかった」のだと思います。

法律に基づき届け出が必要な施設は利用者資格が明確に決まっていて、障がい認定や介護認定がなければ利用できません。つまり、制度ごとの縦割りになっています。そしあるハイムのような、40代から高齢者までいて、住まいの確保から就労支援、食事の世話、介護まで担う施設の枠組みはいまの日本になく、届け出のしようがないのです。

制度の狭間に置かれた、行き場のない人々が増えています。貧困だけでなく、社会参加できない、認知機能に問題がありそうだが介護保険の対象になっていない、家族と縁が切れているなどの複合的な要因を抱え困窮する人たちです。私も北九州市で無料低額宿泊所を運営していますが、公的支援はありません。縦割りで「入居者を限定する施設」ではなく「だれでも入れる施設」が必要だからです・・・

・・・もう一つ、民間施設には残念ながら「貧困ビジネス」もあり、玉石混交です。
そしあるハイムは生活保護受給者でも月に3万円程度手元に残る良心的な価格の施設でした。一方で、食事付きと称してカップめんだけとか、生活保護費を全額徴収し、入居者が自由になるお金がない施設が問題になっています。貧困ビジネスは規制し、必要な施設を応援するルールづくりが求められています・・・

英会話での謙遜

2018年2月16日   岡本全勝

2月13日の日経新聞オピニオン欄「私見卓見」、山中司・立命館大学国際部副部長の「英語に過剰な謙遜不要」から。
・・・大学で英語を教える教員として、学生が「Sorry for my poor English(英語がつたなくて恐縮です)」と前置きしてから話す場面に遭遇する。日本人が日本語の会話で謙遜するのは、自らへりくだることでコミュニケーションを円滑にしようとするからだが、英語の言い回しとしては違和感を抱く・・・
・・・英語を使う際、謙遜はプラスに働かない。同じ語学レベルの場合、「少ししか話せない」と認識するか、「少しだが話せる」と考えるかは将来の伸びに大きな違いをもたらす。前者は、消極性が前面に出てコミュニケーションがおっくうになる。後者は多少間違っても堂々と話し続けるだろう。英語に接する機会が増えればネットワークも広がり、さらに話すようになる・・・

フランス、徴兵制復活論議

2018年2月15日   岡本全勝

2月11日の朝日新聞「日曜に想う」は、大野博人・編集委員の「分断フランス「徴兵制」に何望む」でした。
先日、マクロン大統領が、徴兵制を復活させると発表しました。それを聞いて、私は「この時代に・・・?」と疑問を持ちました。戦艦にしろ戦闘機にしろ、素人が少々の訓練を受けて使えるものにはなりません。
この記事を読んで、分かりました。まず、提案されている兵役期間は、たった1か月です。
大統領は、国防や治安への貢献を考えているのではないようです。生まれ育った環境が異なる若者に同じ仕事をさせ、国民という共通した帰属意識を育む機会にしようというのが狙いのようです。フランス社会が分断に苦しんでいます。イスラム系市民への偏見、経済的不平等、エリート対非エリート・・。
なるほど。

2月14日の日経新聞も、「徴兵制、欧州で復活の波」を伝えていました。東西冷戦が終わり、ヨーロッパ各国が徴兵制を廃止しました。それまで、続いていたのです。

結婚披露宴の変

2018年2月13日   岡本全勝

2月10日の日経新聞夕刊、中野香織さんの「ブライダルタキシード 貧相に見える仮装衣装」を読んで、我が意を得たりと思いました。詳しくは、原文を読んでいただくとして。
・・・横山氏によれば、結婚式は新郎新婦の2人が主役であるはずなのに、日本では新郎がおまけ扱い。ゆえに誰も新郎の仮装衣装に疑問を抱かず、式場スタッフも正確な知識をもたないので、世界から笑われる珍奇なブライダルタキシードがいまだに幅を利かせているという・・・
そうですよね。披露宴って、花嫁が主役で、新郎は刺身のつまですよね(両親の知人である来賓(いわゆるえらいさん)が主役のような場もありますが)。
もっとも問題は、タキシードなどを持っていても、着ていく機会が少ないことです。社交の場を作らなければなりません。(この記事に添えられている写真も、日本人男性でなく西洋人のようです。残念)。

ところで、男の黒の略礼服は、戦後日本で発明されたものです。この文章にも出て来ますが、「物資が乏しかった第2次世界大戦後に、アパレルメーカーが提案した冠婚葬祭システム」です。私は、東京の洋服屋さんが発明したと聞きましたが。
長年にわたって定着したので、これを正装だと思っている人も多いです。かつて、後輩の結婚披露宴にダークスーツで出席したら、「礼服を持っていないのですか」と聞かれたことがありました。郷に入っては郷に従うということわざもありますが・・・。

ついでにもう一つ。結婚披露宴で一番嫌いなことは、司会者、特にプロの司会者の話です。
主催者は新郎新婦またはそのご両親・家なのに、その人たちに最大級の敬語をつける。やたらと拍手を強要する。
さらに、のべつ幕なしにしゃべりまくる。少しは、静かにしていてくれよなあ。時々、司会者が主役をやっています。