カテゴリーアーカイブ:社会の見方

当面の目標、それを達成した先は

2019年11月14日   岡本全勝

11月10日の日経新聞「ベルリンの壁崩壊30年」、レフ・ワレサ、元ポーランド大統領のインタビューから。ワレサさんは、非共産党系の自主管理労働組合「連帯」を率いてポーランドの民主化を実現しました。
・・・――ポーランドでもポピュリズムが広がっています。30年前の民主化運動の理想との落差もあるのでは
「私は当時、市民が自由を取り戻すまでのことを考え、そのための準備をしていた。何をすればよいか分かっていたし、実際に勝利できた。ただ、当時の私は残りのことは民主主義がやってくれると信じていた。勝利した後、私は休んでいいと考えていた」
「残念ながら、民主主義をしっかりと利用して新しい体制をつくる準備ができていなかった。私は昔の体制を壊すことは非常に得意だったが、あまりにも民主主義を信じすぎていた」

・・・――西側からの支援が足りなかったのですか
「勝利があまりにも大きすぎたのだ。欧州も世界もこの勝利に対して何の準備もしていなかった。欧州と世界は私たちに動く勇気を与えてくれたが、勝利した後は自分たちでやりなさいとなった。そのときのコストが高すぎたため、今のような(ポピュリズムの)動きがあるともいえる」・・・

明治維新も、西郷隆盛を中心に幕藩体制を壊すことに成功しました。問題は、その後です。新しい政体については、事前にさまざまな意見がありましたが、それらの得失について十分議論はされていませんでした。
そりゃそうですわ、まだ現政権が倒れていないのに、次の形を議論する余裕はありません。夢物語と笑われます。
新しい明治政府をつくったのは、一人挙げるとすると大久保利通です。
壊すことも大変ですが、新たにつくることはもっと大変です。家に放火して燃やすことと、新しい家を建てることの違いだと言ったらよいでしょうか。しかも、たくさんの人の意見を聞いて、一つの家を造るのですから。

フランス革命も、よく似ています。あっという間に、アンシャン・レジーム(旧体制)が倒れましたが、新しい体制ができるまでには、恐怖政治、ナポレオンの独裁がありました。
たぶん、1789年7月時点では、誰一人として、ルイ16世が処刑され、ナポレオンが帝政を敷くとは予想しなかったでしょう。
フランスでは、その後も、王政復古、共和制、ナポレオン3世の帝政、また共和制、しかしそれも安定しない。と19世紀を通じて、新しい政治体制をつくることに苦労しました。
参考「冷戦終結後の理想は

ヒトラー、ドイツの弱さについての悲嘆

2019年11月13日   岡本全勝

11月10日の読売新聞言論欄、ブレンダン・シムズ、ケンブリッジ大教授の「民族主義とポピュリズム 現代に潜む ヒトラーの影」から。

・・・20世紀の独裁者アドルフ・ヒトラー(1889~1945年)は21世紀の今も人々の興味を引く存在です。
偏執的な人種主義者で、ユダヤ人を憎み、大虐殺した悪人です。残念ですが、究極の悪には人々を魅惑する何かが潜むものです。
物語性にも富んでいます。つつましい出自ながら、第1次大戦に敗北したドイツで政党指導者となり、洗練された文化を持つ国を全体主義国家に作り替え、欧州の広大な領域を一時的ではあるが支配した。ナポレオンを別にして、ヒトラーは近代以降、最も際立った為政者と言えます。加えて、ナチスは行進、音楽、映画などに意匠も凝らした。テレビ、映画向きの題材です・・・

・・・その結果、私に見えてきたヒトラーは定説とは違いました。
ヒトラーが最大の脅威と受けとめたのは何か。定説によれば、第1次大戦末期に出現したソ連であり、共産主義です。私の考えでは、世界を動かしていた米英両国であり、米英のよって立つ国際金融資本です。ナチスの全体主義はこの最大の脅威に対抗する、ヒトラー流の答えでした。ヒトラーは金融資本を握るユダヤ人を嫌悪し、反ユダヤ主義に染まります。
ヒトラーの原体験は、志願して出征した第1次大戦です。英軍と戦い、敗走します。大戦末期には米軍とも遭遇します。敗戦でヒトラーが心に刻んだのは、米英両軍の圧倒的な強さでした。ヒトラーは米英を妬み、憎みます。

心の底にあったのは、対照的に、ドイツの弱さについての悲嘆です。そこから妄想混じりの信念が作られます。
ドイツの最も良質な国民たちは祖国を見限って米国に移民し、米国を豊かにし、戦争になれば兵士となって祖国を負かしにやって来る。彼らが祖国から出て行くのは、領土の不足するドイツには自分たちを養う余地がないと判断するからだ。最良のドイツ人の流出をくい止める喫緊の対策は、東欧にドイツの「生存圏」を確保することだ――・・・
・・・日本の41年の対米英開戦を受けて、米国が参戦した結果、ヒトラーの憂慮は現実のものになりました。欧州の空と陸で米軍を指揮した2人の司令官はいずれもドイツ系移民の子孫でした・・・

亭主関白型から平等家庭へ、この半世紀の大転換

2019年11月10日   岡本全勝

NHKウエッブニュース、News Up「50年前の「育児書」今も支持される理由は」(11月1日掲載)に、興味深いグラフが付いています(記事の中頃です)。
「男は仕事、女は家庭」についてです。
NHK放送文化研究所が1973年から5年ごとに行っている「日本人の意識」調査の項目に、家庭における男女の在り方があります。「夫唱婦随」「夫婦自立」「性役割分担」「家庭内協力」の4つの中から、理想とする家庭を選んでもらいます。

図を見てもらうと一目瞭然なのですが。
1973年では、性役割分担が39%、夫唱婦随が22%、家庭内協力が21%、夫婦自立が15%です。性役割分担と夫唱婦随を「古典的亭主関白」と考えると、合計で61%です。家庭内協力と夫婦自立を「新しい平等家庭」と考えると、合計で36%です。
2018年では、家庭内協力が48%、夫婦自立が27%、性役割分担が15%、夫唱婦随が8%です。「新しい平等家庭」が75%で、「古典的亭主関白」は23%です。劇的に変わっています。1980年代が変わり目のようです。
元の調査は、NHK放送文化研究所「第10回「日本人の意識」調査(2018)の結果」です。

さだまさしさんの歌「関白宣言」がヒットしたのは1979年です。いまは、はやらないでしょうね。
私自身の経験でも、両親は典型的な亭主関白型でした。その息子であるわが家は随なので、この4つの選択肢にはありません。しいて言えば、性役割分担としておきましょう。両親を見て育ったので、キョーコさんとの関係を今のように築くには「コペルニクス的転換」が必要でした。私の世代の男性の多くは、同じ経験をされたと思います。
日本の家庭のあり方は、この半世紀の間に大きく変わったのです。また、変わりつつあります。子供の数、学歴、選ぶ職業、女性の社会進出、核家族・・・。

ところで、この記事は、松田道雄さんの『育児の百科』についてです。松田道雄さんの著作は、学生時代に結構読みました。いくつかの岩波新書、『俺様の宝石さ』(これは浮谷東次郎さんの文章を編集したもの)『私のアンソロジー』など、懐かしい思い出です。アマゾンで検索したら、1970年代の本も売っているのですね。

給料、悪平等からの脱却

2019年11月8日   岡本全勝

11月5日の日経新聞「迫真 IT人材争奪戦 年収3000万円の衝撃」から。

・・・メーカーから小売りまで様々な企業によるIT人材の奪い合いが、終身雇用や報酬制度まで変えつつある。
「会社は本気で変わろうとしている」。そんな思いを胸に川上雄也(33)は英NTTの関連会社でクラウド開発に打ち込む。NTTコミュニケーションズの技術者だったが、管理職になり現場を離れる将来に幻滅し、3月に退職しようとした。
しかし最先端の現場にいながら厚待遇も権限も得られる人事制度ができると慰留された。今は給与も3割増しの1千万円超だ。高度技術者だと認められれば、年収は最高で3千万円になる。
新卒を大量採用して手厚く育てるNTTグループは、IT人材の供給源だ。NTT社長の澤田純(64)は「研究開発人材は35歳までに3割がGAFAなどに引き抜かれる」と打ち明ける。経済産業省によると米国ではIT人材の平均年収のピークは30代で1200万円超だが、日本では30代は520万円程度だ。

「データが3千万円まで引き上げるらしいぞ」。18年末、NTTデータの新たな人事制度を報じるニュースが流れると、ソニー本社は揺れた。最も大きな危機感を抱いたのは人事部門だった。
新卒に月40万円を払うという中国・華為技術(ファーウェイ)の発表があったばかり。シニアゼネラルマネジャーの宇野木志郎(47)は「まさに『NTTデータショック』。電機各社の賃金に対するモードが変わった」と振り返る。
宇野木は横並びだった初任給を見直し、すぐさま能力主義に変えた。19年度から優れた人工知能(AI)技術を持つ新卒社員には年130万円上乗せし、同期の平均の2割増の730万円となる。「言い方は悪いが、これまでが悪平等だった」と宇野木は吐露する・・・

・・・ただ、急速な変更は社内でのあつれきも生む。
19年3月までの1年間で、NECグループから約3000人が早期退職などに応じて去った。ある50代男性社員は「大量リストラをして若手には優遇か」と憤る・・・

新卒一括採用、年功序列、終身雇用という「日本型雇用慣行」は、崩れつつあります。世界で戦うためには、必要なことです。
もちろん、仕事の成果以上に給料をもらっていた人には、つらい時代になります。しかし、そのような不合理はもはや維持できません。成果を上げているのに、若いが故に給料が低い人から見ると、「ようやく是正されるか」と喜ばしいことでしょう。

クレジットカードが使えない

2019年11月7日   岡本全勝

サイゼリヤ」ってご存じですか。イタリア料理のファミリーレストランです。全国に千店以上があるようです。

先日、利用しました。お手軽で、高校生も使っているようでした。
問題は、食事を終えて支払いをするときです。なんと、クレジットカードも電子マネーも使えません。
いまどき、全国展開しているこれだけのレストランで、現金が必要とは。驚きました。

最近は、スイカがあれば、ほとんどの支払いができます。よかった、その日は現金を持っていて。若い人には、笑われますかね。
現金を持っていなかったら、どうするのでしょう。皿洗いをして、労働で返すのかな。