カテゴリーアーカイブ:社会の見方

共通体験なき現代、蔓延する無関心

2020年11月2日   岡本全勝

10月24日の朝日新聞オピニオン欄、真山仁さんによる、西田亮介・東京工業大学准教授へのインタビューから。

“今の世の中には、民主主義という言葉がはんらんしている。民主主義ということばならば、だれもが知っている。しかし、民主主義のほんとうの意味を知っている人がどれだけあるだろうか。その点になると、はなはだ心もとないと言わなければならない”
この一文は、1948(昭和23)年から53(同28)年まで、中学・高校の社会科の教科書として用いられていた『民主主義』(文部省著)を、読みやすくまとめて復刻した新書(2016年刊行)の序章にある。

会ってまず聞いたのは、同書に注目した理由だ。
「民主主義というのは、それぞれの国によって誕生の経緯も認識も違います。必要なのは、民主主義を実感できる固有の共通体験です。『民主主義』が刊行された当時、日本では、敗戦と新憲法公布という共通体験があり、民主主義とは何なのかということに、真剣に向き合わなければならない時期でした。だからこそ、教科書として意味があったのではないでしょうか」と、西田は考える。
同書は5年間で、教科書としての配布を終える。民主主義が、日本人に浸透したからではないだろう。高度経済成長に向かう中で、もはやそんな「きれい事に関わっている余裕がなくなった」からなのかも知れない。
「同書には執筆陣の主観や強い思いがにじんでいます。それが中立的ではないという批判もあったようです」

では、現代の若者が民主主義を学ぶ教科書として、同書は役立つのだろうか。
そう問うと、西田は「難しい気がします。授業で利用したことはありますが、学生からの反響があった記憶はありません」と答えた。さらに「現代の学生に、敗戦の共通体験はありません。それどころか、社会がどんどん分断されていて同世代であっても、共通体験をした実感がないのでは」と分析した。

保険会社が道路点検支援

2020年10月31日   岡本全勝

10月27日の日経新聞夕刊1面に、「三井住友海上、ドライブレコーダーでインフラ点検」という記事が載っていました。こんなアイデアがあるのですね。

・・・三井住友海上火災保険は車のドライブレコーダーの映像をインフラ点検に生かす事業を始める。道路の劣化を人工知能(AI)が検知して集約し自治体に販売する。データ提供に協力する企業の自動車保険料を割り引いて多くのデータを集める。保険会社にデータ販売を認める規制緩和を受けた事業化の第1弾となる。

保険業法が一部改正され、5月から保険会社にも顧客などから集めたデータの外部提供が認められた。保険会社は事故や災害など多くのデータの蓄積があり、データを活用したビジネスは今後広がることが予想されている。

三井住友海上は法人向けの自動車保険とセットで提供するドライブレコーダーを使って道路のデータを収集する。レコーダーから送られる映像を使ってクラウド上でAIが道路の損傷を分析する。位置情報から危険な箇所や修繕が必要な場所を地図上で示し自治体などに有償で提供する・・・

最高裁判事の任命

2020年10月29日   岡本全勝

アメリカ連邦最高裁判事に、エイミー・バレットさんが、トランプ大統領に指名され、10月26日に議会上院で承認されました。新聞各紙が、1面で伝えていました。

そのことの是非は、ここで問うことではありません。しかし、日本の最高裁判事が任命されたときに、新聞などニュースはどの程度伝えるでしょうか。アメリカの場合、特に今回は保守対リベラルの対立の中で、大きく取り上げられたたようです。
しかし、よその国の裁判官の任命にこれだけの紙面を使う割には、日本の裁判官を任命する際には、任命された事実しか伝えませんよね。次回、日本の最高裁判事の任命の際の、各紙の記事を見守りましょう。

アメリカ社会の分断

2020年10月28日   岡本全勝

10月23日の朝日新聞オピニオン欄、フランシス・フクヤマさんのインタビュー「米国、分断克服の道は」から。

――それでも多くの国民がトランプ氏を熱烈に支持しているのはなぜでしょう。
「米国政治の変容を理解する必要があります。党派の対立軸が(成長重視の)右か(分配重視の)左か、という経済政策によるものだったのが、21世紀はアイデンティティー(帰属意識)に取って代わられました。自身の尊厳や価値観を認められたいという欲求の受け皿になるかどうかが重視される時代になったのです」
「端的に言えば、共和党は社会で徐々に存在感が薄れゆく白人層の政党。民主党は女性、人種などをめぐる様々なマイノリティー(少数者)、高度専門職に従事する白人が支持層に混在する政党になりました」

 ――その中でトランプ氏が果たした役割は何でしょうか。
「多くの白人労働者層や低学歴の有権者は、トランプ氏を自分たちの価値観や尊厳を大事にしてくれる英雄だと見なすからこそ忠誠を誓うのです。トランプ氏の政治的な本能が、自分たちのアイデンティティーの承認を求める彼らを見事に結集させたと言えます」

――米国は社会の分断を克服できますか。
「大統領が交代すればすぐに分断が解消されるわけではありません。克服には長い時間がかかります。優れたリーダーシップも必要です。バイデン氏でうまくいく確証はありません。まずは地道に『良い統治』に専念することが肝要です。たとえばパンデミックを抑制する策を講じること。『リーダーが問題解決に機能している』と国民が実感できるかどうかが鍵なのです」

 ――分断の根っこにあるアイデンティティーをめぐる対立は続くのではないでしょうか。
「長い目で見れば社会は常に変化しています。たとえばポピュリズムの背景にある白人労働者層の不満には、グローバル化の受益者である大都市に対し、取り残された地方からの怒りの表明という面があります。しかし、地方の縮小を押しとどめるのは現実には難しい。今の対立構図は過渡的といえるかもしれません」

 ――未来に希望をつなぐことはできるでしょうか。
「歴史に後戻りはありません。多くの国々がいま起きている変化に対応しようとしています。なかでも民主主義がレジリエント(強靱)だと私が信じる理由は『抑制と均衡』で過ちを自己修正する機能にあります。米国はこの選挙を通じて、民主主義の強靱さを世界に示してほしいと願っています」

学歴の差が招く分断

2020年10月27日   岡本全勝

10月21日の日経新聞オピニオン欄、小竹 洋之・上級論説委員の「これからの学歴の話をしよう "知の差別"が招く分断」から。

・・・メリトクラシー(実力社会)。この造語を1958年の自著で世に問うたのは、英社会学者のマイケル・ヤングだ。個人の能力や努力に報いるユートピア(理想郷)の象徴とみなす向きも多いが、当時はエリートが全てを支配するディストピア(暗黒郷)の意味を持たせていた。
ヤングには先見の明があったのかもしれない・・・
・・・サンデル氏は学歴の高低を、欧米の最も深刻な分断軸の一つだと断じる。学位取得の競争条件は決して平等とはいえず、貧富の格差などに影響される。そこで高学歴層と低学歴層の固定化が進み「メリトクラシーが世襲のアリストクラシー(貴族社会)と化してしまった」と説く。とりわけ問題視するのは"知の差別"だ・・・

・・・学位の有無が人の一生を左右するのは確かだ。米連邦準備理事会(FRB)によると、米国の2019年の家計所得(税引き前)は中央値で大卒が9万6千ドル、高卒が4万6千ドル。純資産もそれぞれ30万8千ドル、7万4千ドルと無視できない違いが出る。
誰もが平等な条件で競い、実力で勝ち取った結果なら致し方ないが、そもそもスタートラインが同じではない。米ハーバード大学のラジ・チェティ教授らは子供が米名門大学に入れる確率をはじき、上位1%の富裕層には下位20%の貧困層の77倍のチャンスが開けると結論づけた。
これをメリトクラシーと強弁し、知の差別を容認することができるだろうか・・・