カテゴリーアーカイブ:社会の見方

経済成長期の東京、スラムの新築

2024年3月7日   岡本全勝

朝日新聞土曜日別刷り連載、原武史さんの「歴史のダイヤグラム」。鉄道を切り口にした、歴史や社会の切り口が興味深く、毎週楽しみに読んでいます。
3月2日は「焦土から木造アパートへ」でした。東京の中央線沿線が、空襲によって焼け野原になったことが取り上げられています。そこに、戦後の風景が描写されています。

次に引用するのは、その後のことです。
・・・もちろん年月が経つにつれ、中央線の沿線でも再び宅地化が進んだ。だが55年ごろからは、「木賃(もくちん)アパート」と呼ばれる木造2階建ての賃貸アパートが急増する。それらは東京西郊に当たる山手線の外側の区域に帯状に建てられ、高度成長期に上京してきた大学生や労働者が多く住むようになった。

社会学者の加藤秀俊は、66年に北米を旅行して帰国した直後に新宿から中央線に乗ってみて、その風景に驚いた。国立の一橋大学に通っていた頃とはあまりにも違う。「いま眼に映るのは、住宅というにはあまりにお粗末な木造アパートである。かつてあった住宅は取りこわされ、六畳一間のアパートがそのかわりに出現しているのだ」(『車窓からみた日本』)
北米の住宅を目にしてきたばかりの加藤にとって、「この住宅地は、あまりにひどすぎる」(同)と映った。「はっきりいって、日本人は、スラムを“新築”しているのである」(同)
表面上の高度成長とは裏腹の現実を、加藤は中央線の沿線に見た。敗戦から20年あまり経っても、日本は真の復興を果たしていないのだ。「中央線の車窓の第一印象は、こんなわけで、いささかの怒りと悲しみをともなうのであった」(同)・・・

会社で初の賃上げ

2024年3月3日   岡本全勝

2月28日の日経新聞に「モスフードサービス、初のベア実施 定昇含め8%賃上げ」という記事が載っていました。
・・・モスフードサービスは27日、4月に正社員や嘱託社員約650人を対象に賃上げを実施すると発表した。ベースアップ(ベア)の実施は記録が残る限り今回が初めてとしている・・・

よい話だと思いつつ、ベースアップが記録に残る限り今回が初めてということに驚きました。日本では30年間にわたって給料が上がらなかったのですから、このような会社は多いのでしょう。給与担当者も、前例がないので困るでしょうね。

70歳以降も働く、39%

2024年2月27日   岡本全勝

2月19日の日経新聞1面に「70歳以降も働く、最多39% 将来不安「経済」7割、「健康」上回る」が載っていました。

・・・日本経済新聞社は2023年10〜11月に郵送で世論調査をした。働き方・社会保障に関する質問で何歳まで働くつもりか尋ねたところ、70歳以上の回答が39%で、18年の調査開始以来最も高かった。将来不安に感じることは7割が「生活資金など経済面」をあげた。
何歳まで働くかを聞くと「70〜74歳」が21%、「75歳以上」が18%。「75歳以上」に限っても18年調査よりも5ポイント高く、調査を始めてから最高を記録した・・・

収入は欲しいですが、それ以上に、生きがいとして働くことのできる場所が欲しい人も多いと思います。

ただし「長く働くための技能向上」は14%でしかありません。これは2018年の調査以来横ばいで、働き続ける以降は多くなっても、そのための技能を身に付ける意欲は高まっていません。
どのような技能をつけたらよいのか、多くの人は分からないのではないでしょうか。リスキリング(学び直し)という言葉が流行っていますが、内容が良く分からないのです。IT(情報通信技術)とかDX(デジタルトランスフォーメーション。これは日本語にすると何というのでしょうか)が重要と報道は騒ぎますが・・・。

「威徳輝宇宙」

2024年2月24日   岡本全勝

清酒瓶に貼ってあるラベル、「酒票」と呼ぶのだそうです。「日本酒ラベル そのデザイン変遷の歴史」に書いてありました。この記事も、なかなか深遠なものがあります。

そこに、しばしば威勢のよい語句が書いてありますよね。「名声轟四海」「名声響世界」とか。すごいのを見つけました。石鎚酒造の「石鎚 純米吟醸 緑ラベル」です。
拡大すると読めるのですが、「威徳輝宇宙」です。
これまでに見たものは、せいぜい世界でしたが、これは宇宙まで広がっています。

かつて徳島県に勤務したとき、ぶどう饅頭という名物を知りました。その宣伝文句も、気宇壮大でした。「海越えて ほめられに行け ぶどう饅頭」です。
しかしこれも、宇宙までは届きませんね。

国家ブランド指数、第1位

2024年2月23日   岡本全勝

2月9日の日経新聞「私見卓見」は、ナンシー・スノー、カリフォルニア州立大学フラトン校名誉教授の「日本はブランド力を生かせ」でした。

・・・アンホルト―イプソス社が毎年発表している「国家ブランド指数」で、昨年、日本が初めて60カ国中1位となった。このランキングは世界的にどのように認識されているかによって各国をランク付けするもので、フランスの市場調査会社イプソス・グループが6万人以上を対象に実施したインタビューに基づいている。
国家ブランドとは、単にその国の良い評判のことだ。特定の企業や人に良い評判や悪い評判があるように、国にも良い評判や悪い評判がある。日本の国家ブランドの将来性は高まっている・・・

日本が総合ランキングで1位になったのは、製品の信頼性と他国にはない魅力です。世界経済のリーダーという項目でも、総合2位です。
もっとも、スイスのビジネススクールIMDが毎年発表する「世界競争力ランキング」では35位です。政府とビジネスの効率性、上級管理職の国際経験、語学力、デジタル技術力が最下位に近いようです。

製品の信頼性が高いのはよいのですが、性能偽装のニュースが続くようでは、これも危ないです。