カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人的投資抑制がデフレを助長

2024年3月20日   岡本全勝

2月29日の日経新聞「物価を考える、好循環の胎動」は、柳良平・元エーザイCFO「人的投資抑制、デフレを助長」でした。

――日本企業は人件費をどう捉えてきたか。
「これまで企業価値の物差しは有形資産で、道具として財務会計を使ってきた。人件費は費用で利益にマイナスに働くものという考え方が当たり前だった」
「かつて企業価値の大半を占めていた有形資産なら財務会計で説明できたが、近年は人材価値や知的財産など無形資産が過半以上を占めるようになった。従来の方法では企業価値の半分も測定できなくなった」

――人的資本の効果を測る「柳モデル」を作った。
「製薬会社エーザイの最高財務責任者(CFO)時代に『人件費を使いすぎ』と投資家から批判があった。人件費は企業の将来価値を高めるものだと、証明したかった。人件費を投資した5年後に企業価値を計る指標のPBR(株価純資産倍率)が約13%増える正の相関があった」
「人件費は費用ではなく将来の企業価値を生む投資であると、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する長期投資家を中心に考え方が変わってきた」

――人的投資の認識の高まりはどう影響するか。
「企業はバブル崩壊後に賃金を費用とみて抑制することでしのいできた。その結果として、デフレや企業価値の長期低迷につながった。企業経営者は今後は確信をもって人材投資を積極的にできるようになる」

――今後の課題は何か。
「人的資本の開示が前期の有価証券報告書から義務付けられた。他社と同じ『横並び主義』、当局の要求に最低限応える『形式主義』に陥るリスクはある。なぜ企業価値に資するのか、説明責任が今まで以上に問われていく」

大企業の2割が博士採用なし 

2024年3月17日   岡本全勝

2月17日の日経新聞に「大企業の2割「博士採用ゼロ」 経団連調査、競争力低下も」が載っていました。

・・・日本企業で博士人材の活用が進んでいない。経団連が16日発表した調査によると、2022年度に博士課程修了者の採用数がゼロだった企業が23.7%に上った。能力に見合った仕事や待遇に向けた環境整備が遅れている。欧米に比べ高度人材の不足が目立ち、競争力が劣後する恐れがある・・・
・・・文部科学省などの調査では、博士号の取得者数を米国や中国など主要7カ国で比べると、人口100万人あたりで日本は20年度に123人だった。ドイツ(315人)や英国(313人)の4割にとどまる。
企業の博士号保持者は日本が2万5386人(22年)で米国は20万1750人(21年)と大きな開きがある。
米国では巨大IT(情報技術)企業群「GAFA」が博士人材を大量採用し、新技術を生み出している。アサヒグループホールディングスの小路明善会長は「博士人材は環境変化の激しい時代に新規事業の開発などで活躍できる。日本の産業強化に不可欠だ」と話す・・・

これまでの日本の労働慣行、特に事務系では、新卒を一括採用し、さまざまな部署を経験させて育てていくことが基本でしたから、大学院卒を採用する利点がありませんでした。
大学に教えに行っていたときに、公務員志望の学生から「大学院に行った方が良いでしょうか」と相談を受けることがありました。「悪くはないけど、特に勉強したいことがないなら、大卒で公務員になって、それから自分の分野を深めたらどうですか」と答えていました。
大学院卒を採用して、どのような仕事でその能力を発揮してもらうかをはっきりしないと、この状況は変わらないでしょう。

幼少からの英語熱、異常な状態

2024年3月16日   岡本全勝

2月22日の朝日新聞「早期教育へのギモン3」「幼少からの英語熱「異常な状態」 認知科学者・大津由紀雄さんに聞く」から。

グローバル化に日本経済の衰退。子どもの将来を思って「英語を身につけさせたい」と考える保護者は多いです。英語の早期教育の広がりに、言語の認知科学が専門の大津由紀雄・慶応大名誉教授は「異常な状態」と警鐘を鳴らします。

――英語を使って未就学児の保育を行うプリスクールに子どもを通わせる親も増えています。
母語がまだ確立されておらず、自分で母語をコントロールできない子どもに、大人が英語だけの環境を人為的に与えるのはどう考えてもおかしな話です。(英語教育の過熱ぶりは)率直に言って、異常な状態だと思っています。
「子どものために」といいますが、親の傲慢ではないですか。人為的に英語環境に置くことが子どもにとっていいことなのか、親は冷静に考えるべきです。子どもの心の発達にとって重要な時期を、英語でかき乱されてしまうのは子どもも親もかわいそうです。

――外国語を本格的に学び始めるのは、母語をコントロールできるようになってからでも遅くはないということですか。
決して遅くはありません。極端な話ですが、ただただ英語を話せるようになってほしいという親には「一刻も早く英語圏に移住してください」と助言します。子育て中の親で「英語を話せればそれでいい」と考える人はいないと思いますが。
小学校では、日本語で書かれた本を通じ、言葉の仕組みや働きを理解することが重要です。言語学習の基礎ができたら、今度は外国語の文法の仕組みや働きを学ぶ。外国語を本格的に学び始めるのは、中学校からでも遅くはありません。

1991年から30年間の経済成長外国比較

2024年3月15日   岡本全勝

経済成長外国比較2024」の続きです。1991年のバブル経済崩壊後、日本の「失われた30年」を表す図です。今回新しく作ってもらいました。

1991年を100として、アメリカ、ドイツ、日本の一人あたり名目GDPの伸びを示したものです。30年間でアメリカは3倍に、ドイツは2倍になりました。日本は、横ばいです。イギリス、フランス、イタリアなどもアメリカやドイツと同じような成長をしています。日本だけが、停滞したのです。これは自国通貨表示なので、円安は関係ありません。
5年や10年ではありません。30年間の間、経済界や政治家、官僚たちは何をしていたのですかね。反省。政府はこの間に、何度も景気対策を打ちました。しかし必要だったのは景気刺激ではなく、産業構造転換と賃上げだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年の記事では日米の経済発展、日本がアメリカに追いつき、その後引き離された数字を「経済力の日米比推移」で示しました。今回はこの表に置き換えました。
今回の3つの図表とも、小黒桂君の助けを借りました。いつもありがとうございます。

高校生、まじめ化進み安定志向に

2024年3月15日   岡本全勝

2月20日の日経新聞教育欄に、尾嶋史章・同志社大学教授の「高校生像、40年間の変化 「まじめ化」進み安定志向に」が載っていました。詳しくは記事を読んでいただくとして。
真面目になっているのですね。もう一つ、学校への不満が少なくなっています。ほかの居場所を持てるようになったからということ、学校側の対応も変わったからとのことです。

・・・兵庫県内の高校十数校の3年生を対象とした調査を1981年から40年以上継続し、東京大学の多喜弘文准教授や広島大学の白川俊之准教授らとともに分析を進めている。その結果から読み取れる高校生の変化について、4回続けて調査できた8校のデータ分析を通して考えてみたい。
調査は81年に始まり第2次が97年、第3次が2011年、そして第4次が22年に実施された。第1次と第2次の間にはファストフード店やコンビニエンスストアが街に広がり、ポケベル・PHSという情報ツールの普及で生徒は親や教師から逃れ、自分たちの居場所を持てるようになった。
そのことと学校の生徒対応の変化が相まって生徒の学校への強い不満を中和させ、自己実現や自分らしさを表現できる場へと高校生活を変えていった。

第3次調査以降にみられた90年代からの大きな変化は、それ以前の高校生とは異なる姿だ。勉強や部活動に熱心で、クラスメートとも協調して物事に臨む「優等生的」な生徒が増えた。
第1次・第2次調査では「授業や勉強に熱心である」と回答した生徒は3割台にすぎなかったが第3次では56%に達し、第4次でも5割以上を保っている。
授業に充実感が「いつもある」「しばしばある」という生徒も第2次以前は2割程度だったが、第3次以降は半数近くまで増えた。部活動に熱心な生徒が増加し、遅刻や校則違反をするような生徒は減少した・・・

・・・もう一つ、第4次調査からみえてきたのは進学動機の変化だ。大学進学希望者に限ってみてみると「学生生活を楽しむ」や「自分の進路や生活を考えるための時間」を選択する生徒が減少し、「希望する職業に必要」や「進学する方が就職に有利」を選択する生徒が増えている・・・