カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

フランスは日本漫画の最大輸入国

10月8日の読売新聞「緩話急題」、鶴原徹也記者の「MANGA仏訳1200作品」から。
・・MANGAがフランスを席巻している。同国で昨年出版された漫画本の実に4割が日本漫画で、1200作品以上が仏訳され、計1300万部を超えた。これまでに仏訳された日本人漫画家は、少なくとも450人にのぼる・・
「フランスは日本漫画の最大輸入国です」。超エリート校、パリ政治学院のジャンマリ・ブイス教授(60)が語る・・教授によると、日本漫画の成功は「親と 役人の干渉がなかったこと」。漫画家は10代前半の子どもを喜ばせるために何でも描いた。一方、仏漫画や米漫画は、検閲のため制約が多くあった。「奔放さ こそが日本漫画発展の土台です」と言う。
パリ近郊で毎年開かれる漫画、アニメを中心とする「ジャパン・エキスポ」は11年目の今年、入場者が18万人を突破した。フランス有数の集客イベント、パリ国際モーターショーに迫る勢いだ・・
すごいことですね。

規制改革の経済効果

内閣府が、規制緩和や規制改革によって、消費者へもたらした恩恵を試算しました。それによると、2005年度から2008年度の4年間で、5.4兆円でした。この試算は、2001年、2003年、2007年にも、同じ手法で行われています。試算は、規制改革によって「競争促進を通じて生じた価格の低下」と「財・サービスの需要の増加」の2つの指標で計算しています。
私たちが最も身近に感じることができるのは、携帯電話でしょう。若い人はご存じありませんが、かつてはこんな簡単に買えなかったのです。
詳しくは、本文をお読み下さい。

潜在成長率

10月4日の日経新聞経済面で、松尾洋平記者が「潜在成長率、本当は何%?」を書いていました。潜在成長率って、一般の方には耳慣れない言葉だと思います。ごく簡単に言うと、「経済の成長実力」です。「景気循環の影響を除いた経済成長率のことで、中長期的に経済がどのくらい伸びていくかを示す」と解説されています。
GDP(国内総生産)の成長率は実際の経済成長=需要側の数値であるのに対し、潜在成長率は供給側の数値です。その差が需給ギャップです。最近の日本経済は、供給が需要を上回っていて、デフレ状態にあります。生産の実力を、使い切っていないのです。
このような状態では、供給側の能力が向上しても景気はよくなりませんが、中長期的には成長力の指標である潜在成長率が高い方が望ましいです。
ただし、この記事が解説しているように、その数値の算出は簡単ではありません。潜在成長率は、企業の設備、労働力、全要素生産性の3つから計算します。このうち、全要素生産性が難しいのです。これは、技術力やノウハウ、教育水準などの生産性なので、積み上げでは出てこないのです。詳しくは、記事をお読み下さい。

日本の競争相手は欧米から中韓へ

10月1日朝日新聞オピニオン欄「円高、怖くない」から。
野口悠紀雄さんは、名目為替レートは1995年以来の円高だが、日米の物価上昇率の違いを調整した実質円ドルレートでは円安であることを指摘し、
・・今でも実質レートで見れば、適正水準に比べかなりの円安です。この程度の円高で悲鳴を上げているようでは、日本の輸出産業の競争力はかなり落ちているといえます。すでに「輸出立国」という経済モデルが崩壊しているのです。輸出立国モデルが崩れた後に日本が目指すべきモデルは何か。それはITや先端的金融など生産性の高いサービス産業を中核とした経済だと考えます。
米国では1995年から2009年の間に、製造業の雇用者数が約540万人減少した一方で、サービス産業は約1,820万人も増えました。特に、「金融」「ビジネスサービス」「教育・健康」など付加価値の高いサービス産業3部門での雇用の増加は1,057万人にも上りました。人材が製造業からサービス産業にシフトしたわけです・・
政府がやるべきことは、競争力を失った輸出産業の生き残りを為替介入などで助けることではない。円高によって工場の海外移転が進み、国内雇用が失われるのは不可避です・・むしろ、ITや金融分野で有能な人材を育成するための支援が必要です・・

加護野忠男さんの発言から
・・企業の元気を奪っているさまざまな規制を取り除いてほしい。真っ先に手をつけるべきなのは、企業経営を監視するコーポレートガバナンス(企業統治)の制度です・・二つ目は、労働時間や残業についての規制緩和です・・
私の主張は少数意見かもしれませんが、そこまで言うのは、競争相手が変わったからです。90年代までは欧米企業がライバルで、日本は「働き過ぎだ」と批判されました。欧米は労働時間短縮に熱心だったので、日本は規制を強化しても戦えました。
いまや競争相手は中国や韓国と言っていい。中韓の企業は経営判断が速いし、政府も多方面から企業を支えています。現場の働きようも尋常ではありません。欧米と競争した時代の規制を維持していたら、日本は勝てません・・
詳しくは、原文をお読み下さい。

所得格差の広がりと再分配効果

9月1日に、厚生労働省が所得再分配調査を発表しました。2日付けの各紙が伝えていました(古くなってすみません)。それによると、2008年の再分配前の当初所得のジニ係数は、0.5318で、過去最大になりました。貧富の差が開いたということです。この原因は、高齢者世帯と単身世帯の増加だと説明されています。一人暮らしや高齢者世帯は、貧富の差が大きいのです。簡単に言うと、所得の大きいAさんと少ないBさんがいる時、別々の世帯だと貧富の差は大きいままです。二人が同一世帯にいると、足して2で割った数値になって、格差は縮まります。
ここから、年金や医療などの社会保険料と所得税などを引き、年金給付・介護保育などの現物給付を加えた後(再分配後)の係数は、0.3758です。当初所得に比べ、約30%縮小しています。この数字は2005年よりも0.0115小さくなり、格差が縮まっています。
この結果について、八代尚宏教授は「・・再配分機能は年金・医療に偏り、母子世帯のような低所得者支援の面では不十分だ・・」、樋口美雄教授は「・・働き方が大きく変化しており、非正規と正規の賃金格差も大きい。パートや派遣、契約などの働き方がジニ係数にどんな影響を与えているかについて要因分解できるように調査を実施すべきだろう。そのうえで、格差が一時的なのか、固定化しているのかを分析してみることが重要だ」と指摘しておられます(2010年9月2日づけ日本経済新聞)。