「教育」カテゴリーアーカイブ

ネット時代に教養は成り立つか

4月5日の朝日新聞オピニオン欄「「教養」はどこへ」、大澤聡さんの「知の対話へ、いまこそ読書」から。

・・・本を読むことで教養を形成するという価値観は、近代だからこそ成り立っていたのかもしれません。
インターネットによってあらゆるものが可視化された現代では、世界は無限に広がっていて、全てを把握するなんて無理だと事前にわかってしまっています。
しかし手に入る情報が限られていた時代には、必読リストを読破すれば世界の全てがわかるはずと思い込めました。冊数が限られ、頑張ればゴールまで行けそうな気がするからこそ挑む気になれたのでしょうね。
本には目次があります。1章、2章と番号を振って情報に序列を付け、スタートからゴールまで一直線に構築された体系性があります。前へ前へ、より高く、と駆り立てるその構造は、人格を高めたい、賢くなりたいという「教養主義」の上昇欲に合致していました。

一方、目次のないネットの世界はすべてがバラバラで、序列も体系もあいまいです。情報が無限にあってゴールが見えないため目指そうともしなくなります。
そもそも、誰もが共有すべき知識や価値観があるという考え方は、権威を崩してみんな対等だとみなす20世紀後半からのポストモダンの時代に、力を失いました。多様性が重視される時代を背景に「この本は読んで当たり前」という同調圧力は働きにくくなり、教養は雑学や趣味のようなものに変わってきています。

気になるのは、多様化の中でむしろ権威主義化が進んでいることです。専門の島宇宙それぞれに小さな王様がいて、よその島から口を出すなという雰囲気がある。これでは全体の見取り図は描けません。教養主義が内包する「他者を知りたい」という知的欲求は手放すべきではないでしょう。
いま必要なのは島と島をつなぐ対話的教養です。自分の島の知を元手に、他の島の知への推測を働かせ、共通点を探る。そんな「比喩」や「要約」の力を磨くことが大切になります・・・

小中学生が使う情報端末

3月23日の朝日新聞「「1人1台」はいま 上」「学校端末でゲーム、戸惑う現場」から。
・・・小中学生が学校で使う1人1台の情報端末で、授業中や休み時間にゲームをする子がいる――。朝日新聞教育班にそんなメールが届きました。実態と対処法について、2回に分けて報告します。まずは実態から。

メールの送り主は、さいたま市で学習塾を経営する吉田雅人さん(74)。塾生の小学生から、学校で使う端末で児童が自由に使えるプログラミング学習ソフトを開くと、本格的なゲームが体験できるようになっていると聞いたという。
「使用が長時間になり、端末への『依存度』が高まっている。最近、子どもの読解力や表現力が落ちていると感じており、関係がないか、心配している」
この小学生たちに話を聞かせてもらった。
さいたま市立小4年の女子児童(10)によると、クラスの担任の若手教員は余裕がなさそうな様子で、休み時間は不在にすることが多かった。児童らは、休み時間に果物を用いたパズルに似たゲームなどをするようになり、やがて、端末を使う授業の際にこっそりやる子が出てきた。このソフトは教材として使用を推奨しているものだけに、担任は発見しても強く注意できなかったようで、歯止めはかからなかった。
担任は授業にこなくなった。その後、別の教員が授業を担当するようになり、プログラミングソフトでのゲームは禁止に。ただ、自習が多くなる日もあり、漢字や計算などゲーム形式のドリルに夢中になる子もいるという・・・

・・・さらに、別の小学校の6年の女子児童(12)によると、端末の利用を制限するフィルターを解除する方法が児童の間で広がっている。なかには解除したうえでオンラインゲームをする子がいるという。
文章を書く宿題をする際、多くの子が生成AIを利用しており、でてきた文章をほとんど変えずに提出する子もいる・・・

小学校の教科書ページ数が3倍に

3月23日の日経新聞1面に「分厚い教科書 理想手探り 20年で3倍」が載っていました。
・・・小中高で使用する教科書が厚みを増している。小学校の教科書のページ数は20年で3倍近く、中学校は2倍近くに膨れ上がった。「脱ゆとり教育」以降、児童生徒が学ぶ量は増えたが、学習指導要領が掲げる主体的な学びをサポートする教員の育成は追いついていない・・・
・・・学習範囲が広くなるとともに、近年は考えを手助けするヒント付きの解説や、ケーススタディーのような発展的な問題が盛り込まれ、厚みが増した。2020年度の学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」が導入され、さらに流れは強まった。
授業時間も増えた。小学校6年間の標準授業時数はゆとり教育時の02~10年度は5367コマ。20年度には418コマ増の5785コマになった。文科省の24年度調査では、年間の標準授業時数を超える公立学校は、小学5年で89%、中学2年で84%に上る・・・

14歳で83.2%が近視

3月19日の朝日新聞に「子どもの近視、発症率8歳ピーク 14歳で83.2%が近視、進んだ若年化」が載っていました。
・・・研究グループは、国が管理するレセプト情報などに関する全国規模のデータベースを活用し、2014~20年の間で0~14歳児での近視・強度近視の登録数を調べ、有病率と年間発症率を分析した。
その結果、20年10月1日時点で近視(強度近視も含む)と診断された0~14歳児は約550万人で、有病率は36・8%。近視の有病率は年齢とともに蓄積していき、14歳では83・2%まで上がった。性別で見ると、女児の有病率が男児より高い傾向だった。
年齢ごとの近視の新規発症率は8歳が最も高く、20年では1万人あたり911人。3~8歳の各年齢での発症率は14年から20年にかけて増加傾向だった・・・

・・・田村寛・京大国際高等教育院教授は「近視の原因としては7割が遺伝的要因で3割が生活習慣など環境要因とみられてきた。子どもたちの生活の中で屋外での遊びが減る一方、デジタル機器を使ったゲームや勉強などの手元の作業が増えた結果、近視になるのが若年化した可能性もある」と指摘する・・・

中学で8割とは驚きです。
子どもがスマホを長時間見るようになると、近視は進むでしょうね。猫背も。

子どもの花粉症

2月25日の日経新聞夕刊に「子供もツラい花粉症 10代の5割発症、無呼吸症候群リスク」が載っていました。

・・・今年も花粉症の季節がやってきた。つらいのは大人だけではない。最近の調査によると、10代の半数がスギ花粉症にかかっている。鼻詰まりや目のかゆみで、勉強にも支障が出かねない。子どもの花粉症の予防法や治療法について、耳鼻咽喉科医で日本医科大学大学院教授の大久保公裕さんの助言を紹介する。

子どもの花粉症はスギ花粉によるものが大半だ。全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象としたアンケート結果によると、5〜9歳でスギ花粉症にかかっている割合は1998年に7.2%だったが、2019年には30.1%を占めた。
全世代で1番多かったのは10〜19歳。98年の19.7%から19年には49.5%に増えた。
ロート製薬が24年に実施した調査では、小中学生の48%が花粉症の症状を感じていた。発症年齢は平均で6.5歳だった。

スギ花粉症はかつて成人が発症するものとされていたが、今では年代を問わない病気となっている。子どもの頃から適切な予防と治療が必要だ。
症状は大人と同じように、鼻水や鼻詰まり、くしゃみなどがみられる。花粉自体に害があるわけではなく、体の免疫が花粉に過剰反応することで、こうした症状を引き起こす。
鼻で呼吸しづらくなり、夜熟睡できなくなる子どももいる。鼻呼吸は大人より重要で、詰まっていると睡眠時無呼吸症候群になってしまう恐れもある。睡眠不足になって学校で勉強に集中できず、授業中に寝てしまう子どももいる。

花粉症の子どもが増えている要因の一つは、子どもたちの体が「自然に負けやすくなっている」ことだ。
家の中でテレビゲームやスマートフォンで遊ぶことが増えて、外で土と触れ合ったり、細菌と接触したりする機会が減った。自然の環境に体が慣れておらず、花粉に過剰に反応している可能性がある。
このため、花粉症にかかりにくくする予防策として、普段から外でよく遊ぶようにしてほしい。毎日バランスのよい食事をとり、免疫力を高めておくことも大切だ・・・