カテゴリー別アーカイブ: 報道機関

退官してからしゃべること?

1月11日付のN新聞読書欄で、ある本について、次のような書評が載っていました。「W大学教授の著者は、××省××局長時代に××処理に取り組んだ・・。(この本に書いてある)『円高は予想以上の効果を及ぼし日本経済は自壊した』といったセリフは、現役時代には決して漏らせなかっただろう・・・」
ふーん。そうなんだ。この書評が正しいのなら、官僚は現役時代には真実(あるいは、書評で取り上げられるほど重大なこと)を、しゃべってはいけないんだ。少なくとも、書評を書いた人はそう思っているらしい。ということは、この新聞社が書く「官僚の発言」はすべては真実ではないと、思わなければならないのか(でも、このセリフって、そんなに「漏らせない」内容かなあ)。
そんな官僚に仕事を任せている国民は、不幸せですね。そんな新聞を読まされる国民も、不幸せですね。私も、この本が単なる回顧談なら、この評価もなるほどと思います。もっとも、それなら新聞の書評の、しかも第1には取り上げられないでしょう。この書評を書いた記者が、この記述に感激したか、著者に恩義があるのですかね。
このような書評を書かれて、著者はどう思っておられるのでしょうか。後輩に、「現役時代には、真実はしゃべるな。大学教授になるまで取っておけ」ということでしょうか。

確認を忘れた記事

国の予算の大臣折衝の結果が、昨日のテレビニュースや今朝の新聞に載っています。次の記事を読んで、変だと思いませんか。
「財務大臣は、警察庁については、地方警察官を3150人増員し、3.5億円を認めた」
ふーん、これだと1人あたり10万円あまりですよね。それなら3千人といわず、30万人ぐらい増員すればいいのに。僕のポケットマネーで、2人ぐらい雇おうかなあ。年間10万円なら。
たぶん、こういうことだと推測します。警察官は県の職員で、その給与や活動費は県庁が負担しています。国が負担しているのは、ピストル代です。これは、国の現物支給です。警察官は一般職員より給料も高く、経費も含めると1人あたり1千万円を超えます。その経費は、地方財政計画に計上します。それは総務大臣の仕事です(拙著p90)。16年度の地財対策には、この増員分も織り込んであります。
地方公務員の数を、財務省が決めているような報道。そして、「1人あたり10万円」を、変だと思わない記者。予算編成とその報道については、まだまだおかしなことがありますが、それについてはまたの機会に。

前年どおりの記事、発表資料を鵜呑みにする記事

地方自治体の予算の基礎になるのは、国の予算ではなく、地方財政計画です。また、国民生活に影響することも、国の予算より、地方財政計画や市町村の予算の方が大きいのです(参照地方財政の仕組み・マクロ)。
ほとんどの行政サービスは、地方自治体が行っています。国の予算の多くは一般会計で実施されるのではなく、地方財政計画を通して実施されます。また、国の予算をもらわずに地方自治体が実施するサービスもたくさんあります。(拙著第4章)。
国の一般会計予算は「国の都合」であって、それがそのまま地方自治体や国民生活に影響するわけではありません。交付税の金額も国の一般会計の数字ではなく、実際に配られる金額(地財計画計上額)が意味があります。でも新聞は、毎年国の予算を大きく取り上げます。
慣習(去年の紙面)に縛られ、財務省の発表に依存し、国民(読者)への影響を忘れているのは、マスコミです。また、国の予算を非常に大きく報道して、中央集権を再生産しているのも、マスコミの罪です。