カテゴリー別アーカイブ: 知的生産の技術

生き様-知的生産の技術

酔っているときの「豊かな発想」

酔っているときって、素晴らしい考えが浮かびますよね。一人の時も、大勢で飲んでいても。
でも、その多くは、翌朝になると覚えていないし、覚えていたら恥ずかしいような内容です。一部の面ばかりを見ていて、大きな負の面を忘れています。また、実現する過程を、無視しています。
かつては、枕元にメモを置いて書いたのですが、役に立たないことが余りに多く、あほらしくなってやめていました。

ところが、それら荒唐無稽な発想の中に、たまに役に立つこともあります。ふだん考えていないような、広い視野からの話、つながりの薄い話がひょこんと出てくることがあるのです。
最近、その効用を再確認しました。昔ほどバカ飲みせず、適度に酔っているからでしょう。枕元にある携帯電話に鍵となる単語を書いて、自宅パソコンに送るようにしています。翌朝それを読んで、役に立つものは活用し、そうでないものやなんで書いたか思い出せないものは、削除します。

連載を執筆していると、しばしばそのような場面にあいます。「そういえば、こんなことも書いておいた方が良いな」というようなことを、思い出すのです。
年を取ると、「これはよいな」と思ったことを、すぐに忘れてしまいます。思いついたときに、メモをしておかなければなりませんね。

鎌田先生『新版 一生モノの勉強法』

鎌田浩毅先生が『新版 一生モノの勉強法─理系的「知的生産戦略」のすべて』(2020年、ちくま文庫)を出版されました。『一生モノの勉強法』(2009年、東洋経済新報社)を、その後の変化を取り込んで、新しくしたものです。

目次を紹介すると、内容がよくわかるでしょう。
第1章「戦略的」な勉強法は、面白くてためになる
第2章 勉強の時間をつくり出すテクニック
第3章 知的生産の環境と情報をどう整えるか
第4章 知の武器である本の上手な選び方
第5章 最強の「知的生産」読書術はこれだ
第6章 知的生産の「システム作り」のコツ
第7章 人から上手に教わると学びが加速する

勉強の方法は、各人各様です。それぞれが試行錯誤しながら、自分に合った方法を身につけます。でも、先達の苦労を見て、よいところはまねをして、失敗は避けることで、無駄がなくなります。ノウハウとは、そのようなものです。
先生は、「勉強は苦手だと思う人」に「私の50年に及ぶ勉強経験をもとに」「できればラクに進める技術を披露しています」と述べておられます。880円(税込み)で、それを教えてもらえるなら、安いですよね。

時あたかもコロナウィルスで、先生の京都大学だけでなく、4月中は休校の大学も多いでしょう。この時期にこそ、このような本を読む良い時間です(といっても、大学生はこのホームページを見ていないでしょうが)。

万が一、「私の方が、もっと良い方法を身につけている」と思ったら、その自信をつけるための代金だと思うと、これも安いです。拙著『明るい公務員講座』も、そのように利用してください。

価値のある書評、無責任な書評

5月25日の日経新聞読書欄「半歩遅れの読書術」、楠木建さんの「プロの書評は最良の情報源 事後性を克服するため読む」から。

アマゾンが薦めてくれる本が「頓珍漢」であることを批判した次に、
・・・さらに役に立たないのが、ユーザーのコメントだ。ほとんどが匿名で、内容は玉石混交。もちろん玉より石のほうがはるかに多い。評価の星の数となるといよいよ意味がない。本は究極の嗜好品。不特定多数の評価の平均値を本選びの参考にする人の気が知れない。
僕にとっての最良の情報源は、結局のところプロの書いた書評である。ネットでの匿名の評価とは質の次元が異なる。知識・見識はもちろん、自分の名前を出す仕事であるからして、気合とサービス精神が違う。
僕が絶対の信頼を置くのはフランス文学者の鹿島茂。フランス文学には関心がないのだが、氏の人間と社会を視る眼とそこから生まれる大胆不敵な論理展開にいつも深く共感している。あっさりいえば、「面白がりのツボ」が合う・・・

鹿島茂先生の書評は、このホームページでも紹介したことがあります。

インターネットは便利な反面、困ったことも起きます。誰でも、何でも投稿できるのです。嘘も。
匿名の投稿は、書評に限らず、とんでもないのがありますね。匿名だと、大胆になるのでしょうか。書いた人の人間性を、疑いたくなります。閻魔様の前どころか、世間に説明できないような発言は、しない方が良いです。

鎌田浩毅先生、NHKラジオ

鎌田浩毅・京都大学教授の本が、NHKラジオ「私の日本語辞典」で放送されています。「理系学者の“読書”術」です。
第1回目は、昨日、放送されたようですが、今晩、再放送があります。聞き逃した方は、インターネットで聞くことができます。

この本については、このホームページで紹介しました。参考になる本です。私の方法は、「生産の読書、消費の読書、貯蓄の読書」。

東大教師が新入生にすすめる本

東大出版会「UP」4月号は、定例の「東大教師が新入生にすすめる本」特集です。
私が大学を卒業してから、40年余り。いま、先生たちはどのような本を学生に勧めているのか、そして学問の最先端はどうなっているのかを知る良い資料です。当時、このような紹介があったら良かったのに。

紹介されている書名を見て、「これは読んだなあ」「これは買ったけど読んでいない」「こんな本があるのだ」と思いを巡らせます。そして、先生方の紹介文を見て、読もうという意欲が出てきます。「こう読むのか」と。早速、数冊アマゾンで注文してしまいました。

P6で、伊藤亜聖・社会科学研究所准教授が『20世紀システムⅠ 構想と形成』(1998年、東大出版会)を、次のように紹介しておられます。
・・・20世紀の特徴が「設計されたシステム」であることを、「理念国家」アメリカの歴史から国際連合、国際通貨基金、世界貿易機関の設立、そして米ソ冷戦に着目して議論している。21世紀に入って以降に顕在化した所得格差の拡大と反グローバリゼーション、国家以外のアクターの重要性、中国をはじめとする新興国の台頭とパワーバランスの変化などを念頭にいま改めて読むべき本・・・
なるほど。この本も、本棚のどこかにあるはずなんですが・・・。