カテゴリー別アーカイブ: 旅行記

生き様-旅行記

2023年スペイン旅行7

2023年スペイン旅行6」の続きになります。

16世紀中頃から17世紀前半までの約80年間は「スペインの黄金時代」と言われますが、どうしてその後に没落したのか。歴史のあるいは政治の大きな主題です。
ヘンリー・ケイメン著『スペインの黄金時代 』(2009年、岩波書店)が本の山から発掘されたので、読んでいきました。かつて読んだ『リシュリューとオリバーレス―17世紀ヨーロッパの抗争』(邦訳1988年、岩波書店)は、内容を覚えていません。反省。現地の案内人も、いくつか説を教えてくれました。私の理解では、次の通り。

・全世界に領土を持ち、ヨーロッパでも各地に大きな領土を持っていたので「帝国」とよばれるが、実体はそんな強い国ではなかった。スペイン国内やヨーロッパでの領土は、それぞれ独自の国であって、国王が兼ねていたから帝国と見えたこと。自らは「帝国」とは名乗らなかった。
・国外の領土は、戦争で獲得したのではなく、婚姻によって手に入れたものであった。それらを強権的・統一的に支配し、徴税や徴兵を行えたわけではなかった。新大陸は、当初は植民地でもなかった。
・新大陸からの金銀がスペインの繁栄をもたらしたが、それは政府が抱えた多額の借金(戦争費用)の他国の金融機関への支払いに消えたこと。そして国内の産業振興に使われなかったこと。
・カタルーニャなどにおいて行政機構を整備することには成功したが、国内の農業や産業は、一部を除き振るわなかったこと。
・財政や金融を担っていたユダヤ人を追放したこと。

歴史の見方」。『スペイン帝国の興亡』(邦訳1982年、岩波書店)は、まだ机の上に眠ったままです。

2023年スペイン旅行6

2023年スペイン旅行5」の続きです。

携帯パソコンは、便利でした。電子メールのやりとりです。便利というか、仕事が追いかけてきます。かつては、海外旅行期間中は音信不通になったのですが、今の時代に、それはかえって不安です。
私がパソコンで作業をするのはホテルでなので、ホテルのワイファイが仕えます。もう、LANケーブルやUSBなどでつなぐことはありませんね。キョーコさんがスマートフォンを持ち歩くので、スペインで使えるワイファイルーターを借りて持っていきました。これも、便利だったようです。

携帯電話は、1度だけ鳴りました。日本でも、めったに鳴らないのですが。「今スペインなので、急ぎでなかったら、電子メールに入れておいてください」と言って、早々と切りました。長々と話すと、かけてきた人の電話代がかさみますよね。

私はスマートフォンを持っていないのですが、特段困ることはありません。でも、世の中はどんどんスマートフォンを前提にした仕組みになっているようです。航空券の確認も博物館の入場券も、多くの人がスマートフォンの画面で二次元コード(二次元符号)をかざしていました。日本でも、そうなりつつあります。展覧会に行くときは、キョーコさんが前売り券を買って、スマートフォンで会場に入っています。

観光地では、多くの人がスマートフォンで写真撮影にいそしんでいました。写真機だったら面倒だったのでしょうが、スマートフォンならいつも持ち歩いているので気軽に写真を撮ることができるのでしょう。でも、実物をゆっくり見学せず、写真を撮ることに熱中しているようにも見えます。

パソコンでニュースの確認をしたり、機中で時間を持て余すので少し原稿を書いたりしました。もっとも遊びに行っているので、仕事には精を出しませんでした。旅行記は、帰国後にホームページに掲載するためのメモを書き留めていました。
ところが、途中でホームページの加筆ができなくなったのです。電子メールで、IT社長に連絡を取って調べてもらいましたが、異常なし。わからないままに帰国したら、日本ではちゃんと使えました。どのような規制に引っかかったのでしょうか。
それに関しては、ヤフー(プロ野球ニュース)は、EUでは見ることができませんでした。「サービス提供を停止しています」と表示が出ました。

2023年スペイン旅行5

2023年スペイン旅行4」の続きです。
スペインの歴史についてです。
この地が、古代ローマ帝国の支配のあと、ゲルマン民族が入り、西ゴートが有力だったこと。その後、イスラムに支配され、キリスト教勢力が国土回復運動で奪還したこと。イスラム文化の方が高く、古代ギリシャの著作もスペインで翻訳され、西欧にもたらされたこと。コロンブスの新世界発見のあと、世界に広がる植民地を持ったこと・・・。第1次大戦後のスペイン内戦、フランコ独裁、民主化。その程度しか知りませんよね。
他には、闘牛、フラメンコ、パエリア、サッカー・・・。

アーヴィング著『アルハンブラ物語』(1997、岩波文庫)をかつて読んだのですが、雰囲気だけしか覚えていません。『ドン・キホーテ』は、分量が多くてまだ挑戦していません。

で、簡単に勉強していきました。といっても、観光のためであって、本格的なものではありません。
概説については、池上俊一著『情熱でたどるスペイン史』(2019年、岩波ジュニア新書)、立石博高著『スペイン史10講』(2021年、岩波新書)を読んでいきました。前者が読みやすいです。田澤耕著『物語 カタルーニャの歴史 増補版-知られざる地中海帝国の興亡』(2019年、中公新書)は、半分だけ読みました。

イスラム支配下の時代はおくとして、レコンキスタ以降の歴史も、複雑です。簡単に「スペイン帝国」ができたのではないのです。そもそも「帝国」は存在しませんでした。いくつもの国があって、それぞれの王を一人の王が兼ねることで、スペインができていました。しかもその王は、時に(ハプスブルク家)オーストリア、イタリアなども支配しています。カタルーニャやバスク地方の分権志向も、なるほどです。カタルーニャはしくじらなかったら、ポルトガルのように別の国になっていたといわれています。
これらを読むと、現地の案内人の説明がよくわかりました。

2023年スペイン旅行4

2023年スペイン旅行3」の続きです。
スペインと日本の違いです。観光客では深いところはわかりませんが、2つ報告します。
一つは、生活習慣です。昼ご飯は14時くらいから。昼寝があり、夕食は20時からとか。演劇は22時から始まったり。旅行中も案内人が「この時間に食堂が開くのは、観光客向け」と繰り返していました。それでも、朝は日本で言う「普通の時間」に働きに出るのです。夏に1か月休暇を取ります。
昼は暑い、そして人生を楽しむからだそうです。私は最近17時過ぎから夕食を始めて、20時過ぎには寝てしまうので、考えられない時間です。

もう一つは、自然です。車窓には、赤茶けた土地が広がり、そこにオリーブの木とブドウの木が植わっています。下草が生えていません。日本の山のように、緑ではないのです。雨が少ないことの結果なのでしょう。

お土産は、まずはいつものように、絵はがきをたくさん買ってきました。お礼状に使うためです。1枚で1ユーロ。「そうか、120円の時代をもあったよな。今は160円か」
日本政府の「貧窮化政策」の結果で、1ユーロ160円です。日本が貧乏になったことを実感する旅でもありました。知人がニューヨークに出張して「昼にラーメン1杯が5千円だった」と聞くと、スペインはまだ安かったです。

ついでに。行きも帰りも、ドイツ(ミュンヘン、フランクフルト)ー羽田間の飛行機は、日本人が少なかったです。観光地でも、日本人をあまり見かけませんでした。現地の案内人は「中国人の観光客は戻ってきている」と話していましたが、私の行った観光地では1団体ずつくらいしか見かけませんでした。日本人観光客は、圧倒的に女性でした。

小さなリュックサックを、カタルーニャ音楽堂下の土産物店で買ってきました。「This is the safe bag 100% Barcelona」と書いてあります。説明を読むと意匠も作成もバルセロナですが、バルセロナらしいのは、「泥棒対策で2方向で使える」と書いてあります。ファスナーで開け閉めするのですが、その面を外向けにしたり、うち向け(ファスナー面が背中にくっつく)にしたりできるのです。うち向けにすると、後ろから来た泥棒は簡単には盗ることができません。ナイフで切り裂けないように、強い布でできています。
インターネットで調べると、U1 miniの色違いで、いろんな色が合わさっています。おしゃれで、小さくたたむと太く短いペットボトルくらいの筒状になります。散歩の時に、携帯電話や財布を入れる鞄を探していたので、ちょうど良いと思って買いました。日本で売っていたら買わない色使いですが、記念にと。90ユーロです。1ユーロが120円だったら、3600円安かったのに・・・。

2023年スペイン旅行3

2023年スペイン旅行2」の続きです。見たところで、印象に残ったところを書いておきます。
史跡や美術館について。
マドリードのプラド美術館は、立派です。大英博物館、ルーブル美術館と並ぶ3大美術館とのことですが、「他の美術館は略奪品で成り立っているが、プラド美術館は王家が買ったものばかり」とのことです。しかもガラスケースに入っておらず、間近に見ることができます。
グレコ、ベラスケス、ゴヤといったスペインの巨匠だけでなく、ブリューゲル、ルーベンス、ラファエロ、ダビンチなどの名品も見ることができます。

ベラスケスの「オリバーレス公伯爵」も見てきました。このホームページでも何度か登場した、フェリーペ4世のスペインを支えたオリバーレス公伯爵です。2017年アメリカ旅行の際にメトロポリタン美術館で見たものと、2022年の国立新美術館の「メトロポリタン美術館展」で見たものは同じものです。それと同じ構図ですが、よく見ると、プラド美術館の馬が茶色で、メトロポリタン美術館のは白のようです。

建物について。
バルセロナのサグラダ・ファミリアは、圧巻でした。言葉では表しにくいので、見に行ってください(これでは説明になりませんね)。7月に近代美術館での展覧会やNHK特別番組で知識を仕入れていったので、よりわかりました。
2026年には完成すると言われていましたが、案内人の説明によると、歴史を紹介した展示に先頃まで書かれていたその言葉が、いつの間にか消えたそうです。
100年かかっているのですから、急ぐことはありませんよね。しかも、工事が進んだのは、1990年代以降拝観客が増えて収入が増えたこと、2010年に教皇ベネディクト16世が訪れるに際して工事を進めたからだそうです。

バルセロナでは、カタルーニャ音楽堂もよかったです。ガウディのお師匠さんの設計と意匠で、1905年にできています。サグラダ・ファミリアと共通する、くねくねと曲がった意匠(アールヌーボー)が奇抜です。

アルハンブラ宮殿も良かったです。トレド、コルドバ、グラナダなど、中世が残っているような街も良かったです。