カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

集中力、その1。邪魔する要素、外部要因

私は、勉強ができる人、仕事ができる人と、そうでない人との大きな違いは、集中力があるかどうかだと思っています。知能指数の差以上に、集中力の差が、できる人とそうでない人の違いを生みます。
近年、集中力が落ちてきたと思うことが多いので、なぜだろうと考えてみました。どうしたら集中力が高まるかについては、いろんな本が出ているようです。それはそれとして、私の経験から述べます。

集中力には、本人の要素と、外部の要素があります。まず、外部の要素、環境から考えましょう。
邪魔される場合を考えると、わかりやすいですよね。うるさかったり、注意を引くものがあると、どうしてもそちらを見てしまいます。
皆さんも、テレビを見ながら、難しい本は読めないでしょう。私は、音楽を聴きながらの読書はできません。
人の脳は同時に複数のことを処理できず、複数のことをしているように見えても、それは短い時間で脳内での処理を切り替えているのだそうです。よって、集中できず、能率は上がりません。

スマホやパソコンが仕事を邪魔することは、『明るい公務員講座 仕事の達人編』に書きました。
三井住友海上火災保険が、働き方改革で全社員に配った退社時刻宣言POPには、「ただいま集中タイムです」という表示もあります。要するに「いま集中しているので、話しかけないでください」ということです。この項続く

 

指示は明確に、あうんの呼吸は通じない

2月19日の日経新聞夕刊「Bizワザ」は、「あうん捨て外国人と仕事。期日、具体的に指示を」でした。
・・・企業のグローバル化が進むなか、日本人と外国人が一緒に仕事をする職場が増えている。「あうんの呼吸」が通じないことも多い。どう接すればいいか。外国人社員と上手にコミュニケーションを取る方法を専門家に聞いた・・・
外国人社員に通じなかった例として、「できれば・・・をやって」「はやく」が理解されなかったことなどが上げられています。

この記事は外国人労働者の場合ですが、これは日本人職員を相手にする場合も同じです。
何をいつまでにするかを具体的に指示しないと、通じないことがあります。
私の失敗事例と改善策は、『明るい公務員講座 課長に脱皮編』(近く発売)に書きました。参考にしてください。

人事には興味があっても、会社のことには関心がない。業績低下の企業

2月5日の読売新聞「経営者に聞く」は、手代木功・塩野義製薬社長でした。
社長就任時に会社が低迷し、構造改革に苦労されます。1985年に売上高、営業利益とも業界3位だったのが、2010年には売上高は10位、利益も下位に沈みます。

・・・3位の会社が10位に転落すると何が起きるのか。ベテラン社員は「俺たちは凄い。経営が悪いからこうなった」と頑張ってくれません。若手は「期待されて入っていません」と真顔で言う。時間をかけても「名門」の看板を取り戻すしかないと考えました。

3か月に1回、会社の現況を原稿用紙20枚分くらいの文章にし、全社員にメールしました。最初の開封率は5割に満たない。同時に出した人事のお知らせは99%です。人事には興味があっても、会社のことには関心がない。
ならばと、研究・開発から生産、営業まで幅広く若手社員を集めて「語る会」を開きました。でも2時間、質問が出ない。後で聞くと、上司から「自分に跳ね返るから、社長によけいなことを聞くな」と指示が出ていたそうです。オープンに話すことを中間管理職が嫌がる。これも弱い企業の典型です。意識改革に3、4年かかりました・・・

空気の支配、再考

「その場の空気に流される」という表現や事態があります。ウィキペディアには「場の空気」として出ています。
山本七平さんの名著に『空気の研究』(現在は、文春文庫)があります。山本さんの著作は、大学生の頃によく読みました。

冷静にかつ客観的に判断すれば止めることができることを、その場の空気に流されて、(多くの場合は突進して)失敗することです。後になって、なぜ止めることができなかったかと問われ、その場にいた人が「仕方なかった」という言い訳に使われます。
しかし、そのような「空気」という物体があるわけではなく、関係者がそのような意識を共有するのです。
誰か「突進すること」を言い出す人がいます。多くの人がそれを忖度して、賛成します。あるいは、黙っています。そして、それを判断すべき責任者が、その意見を黙認します。その結果、誰が決定したのか、誰の責任かが、不明確になります。その場にいた全員が、責任者になりかねません。

そのような事態を、「部下に判断や実行を委ねるのがよい」という「座り型のリーダー論」が、助長します。その反対は、「決定は責任者が行い、その責任も決定者が負う」という「率い型のリーダー論」です。
前者は、全員参加・全員納得型の決定方法です。日本によくある型と言われました。それが、空気論をはじめとする日本人論です。農耕民族と狩猟民族との違いとも言われました。

日本社会のある面を説明する、説得ある説です。しかし、一皮むけば、決めるべき人が決めない、責任者が責任を取らないということです。時には、若い者の暴発を止めることができないのです。日本陸軍の若手将校を止めることができなかった幹部です。
このような文化論がまかり通ると、無責任組織、無責任社会になります。そのような人たちが国政を担ったり組織の幹部になると、国民や従業員はとんでもない被害に遭うことになります。参考「組織の腐敗」「責任者は何と戦うか

若い頃は、「日本社会や組織の空気の支配説」を納得しましたが、自分が小なりとはいえ責任ある立場になってからは、「あれは言い訳だ」と思うようになりました。責任者は、その場の空気に流されず、冷静な判断をすべきです。また、責任者でなくても、参加者の一員なら「それは違うと思います」と発言すべきです。

私が判断の基準にしたのは、次の2つです。
・後世の人に、説明できるか
・閻魔様の前で、説明できるか
責任者が、自ら下した判断やその結果に責任を持つなら、あるいは責任を追及されるなら、「空気の支配」は続かないと思います。

仕事のやりがい

お読みになった方も、多かったと思います。元日の朝日新聞経済面、「カイシャで生きる1 息苦しい霞が関、折り合えた」。仕事がつらくなって、職場に行けなくなった女性官僚の話です。
・・・入省して半年が経ったころ、法改正の担当になった。深夜帰宅は当たり前で、残業は月200時間を超えた。でも、上司はもっと残業していた。
自分に振られる仕事が、全体のうちのどの部分で、なぜ必要なのかがわからなかった。先輩に質問してみると、「あの人(上司)がそう言っているんだから」という答が返ってきた。そのうちに質問を発することも、自分の意見を言うこともできなくなっていった・・・
そして、彼女は精神科で診断を受け、休職します。復帰後、ある仕事を任され、やりきったことで自信ができました。現在は、元気に活躍しておられるようです。
・・・組織の中で「自分の言葉」を失いかけていた松尾さんは、現場を回り、生産者らと対話を重ねることで「やりがいのタネを見つけられた」・・・

2018年12月30日の日経新聞「スタートアップで修業」は、次のような記事です。
・・・大企業がスタートアップ企業や大学に社員を出向させ、最先端の技術・サービスを吸収しようとする動きが広がっている。パナソニックやIHIなど幅広い企業が導入し、ダイキン工業は若手技術者を東京大学の施設に駐在させる。大企業はイノベーション(革新)を創出しづらい現状を打破しようと、若手中心に新興企業の素早い意思決定などの流儀を学ばせ、人づくりにつなげる・・・
そこに、次のような指摘があります。
・・・「プロ集団の中で、自分に何ができるのか」。当初は環境の違いに戸惑った。だが半年以上たち、自分たち一人ひとりが会社を大きく左右するとの当事者意識を持ったという・・・

そうです。職員は、仕事にやりがいを求めています。少々仕事がつらくても、給料が安くても、やりがいがあれば乗り越えることができます。
大きな組織になると、自分の仕事がどのように役に立っているのか、見えにくくなります。それが、心の病や転職の一因になるのでしょう。
職員にやりがいを持たせるためには、上司が「あなたの仕事は、役所の(会社の)この部分を担っている。これなくしては、××の目的が達成できない重要な仕事だ」と説明しなければなりません。

組織には、役割によって大きな歯車と小さな歯車があります。しかし、小さな歯車もなければ、全体が動きません。そして、職員という歯車は、モーターから回転を伝えられるのではなく、各人が自ら動くモーターにならなければなりません。職員が悩んだり自信を失わないように、上司や同僚が支援して上げなければなりません。
現在編集中の「明るい公務員講座」第3弾に、ちょうどそのことを書いたばかりでした。