投稿者アーカイブ:岡本全勝

引き下げデモクラシー

2021年7月3日   岡本全勝

「引き下げデモクラシー」という言葉を、ご存じですか。宮本太郎著『生活保障ー排除しない社会へ』(2009年、岩波新書)を読み返していて、再発見しました。28ページとあとがきに出てきます。
・・・やみくもに特権や保護を叩き、これを引き下げることで政治的支持を拡げようとする言説である。あるいはそれを見て溜飲を下げる態度である・・・こうした政治スタイルが横行するのは、政治が人々の利益をまとめ上げていくビジョンを示すことができないからである・・・

「引き下げデモクラシー」は、丸山真男先生が、『「文明論之概略」を読む』で使われた言葉です(原典に当たろうと思いましたが、丸山先生の本がどこに埋もれているのか、行方不明です。当たりを付けた場所から見つからないので、今回は断念)。
宮本先生には、麻生内閣の際に、安心社会実現会議委員としてお世話になりました。連載「公共を創る」でも、参考にさせてもらっています。

連載「公共を創る」第85回

2021年7月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第85回「社会の課題の変化―増える引きこもりに居場所の確保を」が、発行されました。前回に続き、孤立の具体例として、引きこもりを説明しています。
彼ら彼女らの内面は、他者からはわかりません。私の読んだ本や見聞から、孤立問題として説明しました。
どのような原因で、引きこもりが起きるのか。本人は、何に困っているのか。何が救いになるのか。そのような状態に追い込む日本社会の「欠点」などを説明しました。
学校や会社などでうまくいかなくなり、居場所がなくなって、引きこもりになるようです。相談できる人がいないことで、一人で悩みます。学校や会社以外の逃げ場、複数の居場所があれば、引きこもりは防げます。

NHKウエッブサイトに、「つらくても相談なんてできないよ 13歳僕の叫び」(6月28日掲載)が載っていました。合わせてお読みください。

仏教、解釈の変遷

2021年7月2日   岡本全勝

植木雅俊著「仏教、本当の教え インド、中国、日本の理解と誤解」(2011年、中公新書)を読みました。
お釈迦さんが説いた仏教が、中国、日本へと伝わる際に、どのように変わっていたったか。原典のサンスクリット語と比べて、意図的な内容の変更や誤訳を指摘しています。最も典型的なのが、本来は男女平等だったのが、中国に来て、男尊女卑に書き換えられたことです。

仏教は、お釈迦さんの死後、インドで広がるとともに、さまざまな解釈が広まりました。そして、大乗仏教、小乗仏教(上座部仏教)、密教などに分かれ、さらにその中で分派しました。お経の数は膨大な数になっているようです。日本に伝わってからも、中国に学びに行き、先端の(異なった)宗派を輸入するとともに、鎌倉時代以降、独自の解釈で宗派ができます。

この本は、積ん読の山から、発掘されました。途中にしおりが入っていて、そこまでは読んだ形跡がありました。かつて、船山徹著「仏典はどう漢訳されたのか」(2013年、岩波書店)を読んで、漢訳する際に先生が読み上げる方法だったと知って、驚いたことがあります。

今日から7月

2021年7月1日   岡本全勝

今日から7月です。カレンダーをめくったら、夏の青空と風景の写真が出てきました。
肝冷斎のカレンダーも、6月のナメクジに代わって、7月は星座です。
ところが、東京は大雨です。各地でも豪雨になっているようです。被害がないことを願っています。

大きな政府、小さな政府

2021年7月1日   岡本全勝

6月26日の日経新聞コラム「大機小機」は「大きな政府 日本の事情」でした。

・・・1980年ごろから続く「小さな政府」への世界の流れは、大きな転換点を迎えつつある。新型コロナウイルス禍を機に政府の役割は飛躍的に高まった。バイデン米政権は米国救済計画に加え、雇用計画、家族計画といった大型財政政策を立て続けに打ち出して「大きな政府」へと明確にかじを切っている。
欧州はもともと日米に比べ「大きな政府」だったが、英国の欧州連合(EU)離脱でその色彩を一段と明確にした。政府は今後、気候変動対策を軸に経済社会への関与をさらに強めていくだろう。

それでは日本も「大きな政府」に向かうのかと考えてみると、事情はかなり違いそうである。その根本には、国民の政府実態への認識の問題がある。財政赤字の大きさから日本政府は大きすぎると思っている人も少なくないようだが、実態は全く異なる。
公務員の数は国際比較でみて圧倒的に少ない。財政支出の国内総生産(GDP)比が極端に低いとはいえないが、世界に冠たる高齢社会で社会保障支出が多いからにすぎない。これを除けば、日本は極めて「小さな政府」だ。新型コロナウイルス禍への対応の失敗にも、デジタル化の遅れといった要素はあるが、自治体や保健所などの人員や権限の不足に起因するところが少なくなかった・・・

・・・それでも消費税増税への反発の強さなどを考えれば、国民の間に政府の役割強化への合意が存在するとは思えない。日本が「大きな政府」に向かうとすれば、それは財政規律喪失の結果である可能性が高い。超低金利に安住して巨額の予備費が設けられるなど、財政規律は一段と緩んでいるように思われるからだ・・・

ここには、いくつかの論点があります。一つは、歳出は大きな政府なのに、負担は小さな政府だと言うことです。その差は、借金で子孫に負担を先送りしています。もう一つは、福祉など政策経費と、人件費などの業務費のどれをもって、大きさを比べるかです。
「小さな政府」という言葉は、有権者に向かっては、心地よい宣伝文句でしょう。その内実を検証せずに、宣伝文句を繰り返しているようです。