投稿者アーカイブ:岡本全勝

政治の役割10

2008年4月28日   岡本全勝
日経新聞連載「日本を磨く」6日は、川勝平太教授の「世界に誇る美の国に」でした。
「日本の世界史的位置はこの20年ほどで劇的に変わった。明治ー昭和期には欧米のキャッチアップを目指す国であったが、昭和末ー平成期にかけアジア地域間競争のリーダー格に転身した・・・日本はアジア域内競争の渦中にあり、アジアの人々から憧れられ、追われ、模倣される立場になっている。ただ、日本はまだ従来のキャッチアップ・システムを引きずっており、国のかたちが、今日の世界史的地位にそぐわなくなっている」
「ここで、問われるべきは・・・富国強兵という近代国家の国のかたちである。富国強兵は明治政府の国是であった。だがそれは当時の西洋諸国のアイデンティティーだったのではない。相手の本質を見抜いた日本人独自の国是である。西洋人は自らをどう認識していたか。『文明』である」
「軍事力も経済力も国の独立には不可欠であっても、十分条件ではない・・・新しい力を加味し米国型の富国強兵路線を超えなければならない。その力を『文化力』と呼びたい」
「端的には生き方である。日本人の生き方こそが、日本の文化なのである・・・それが磁場のように他国の人々を引き付け、魅了し、求心力をもつようになること、それが『文化力』である」
「それは、『美の国』日本を創ることでもある。そのときこそ、日本の『かたち』は中央集権から地域分権へと革命的に変わる。しかもこの大変革を、国内の混乱なく平和裏になしうるところに、日本人の実力と日本の世界的モデル性の神髄があると思われる」
7日は、西垣通教授の「目指せ超多極分散国家、IT文明に適応を」でした。
「国家を成り立たせる要素は多いが、その一つはメディアである・・・国家とは自然発生的共同体ではなく、想像の共同体なのである。そしてその想像の部分をになうのがメディアなのだ。近代国家を支えてきたのはマスコミだった」
「とすれば、インターネットなど新たなITによるメディアの台頭とともに、国家もまた変容を迫られよう。21世紀の望ましい国家像とはいったいいかなるものなのだろうか。結論から言おう。それは中央集権的な国家ではなく、分権的な自治州の連合体のようなものだと考えられる」
「アナログメディアでは、情報は物質と基本的に一体で、容易には操作できない。それ故中央拠点に情報と物質とを集積し、そこで枢要な情報処理と知的生産活動をおこない、その結果を全国一律に提供することが安定した有効性を持つ。こうして、首都に中央官庁や大企業の本社が集まり、そこからマスコミなどをつうじ同一の情報や商品を津々浦々に浸透させるという一極集中社会ができあがる。そして、日本がこういう中央集権的国家として20世紀に大きな成功を収めてきたことは言うまでもない」
「しかし、IT文明の時代、デジタルメディアでは・・・こういう方法が最善とはかぎらない。一極集中によって国内があまりに標準化・均一化されすぎると、国民のユニークなアイデアや創意工夫はとかくつぶされてしまう。それだけではない。情報量の急速な増大は、物質面で国土に過度のアンバランスをもたらす。いわゆる東京一極集中問題はその典型である」
「問題の解決の鍵はITの高度利用にあるのだが、なぜかこの点はあまり議論されない。せっかくの技術革新も、一極集中のままでは大きな影響力を持ち得ないだろう。大都市ばかりが恩恵をうけ、地方は文化的に取り残され、いっそう経済格差が広がりかねない」
「多極分散化はいかに実現されるのだろうか・・・現在検討されている道州制がこの方向と合致していることは指摘するまでもない。首都に集中している行政サービスの多くは州都に移るのだ。しかし、これだけでは単なる地方分散化にすぎない。大切なのは・・」(4月9日)
毎日新聞は26日から、「小泉時代と改革された私」という連載を始めています。27日は「ゼネコン破綻は構造改革が順調に進んでいる表れ」という小泉総理の言葉とともに、不良債権処理を取り上げていました。28日は「たばこ屋の数の2倍もある建設工事、これほど必要か」という言葉で、公共事業の削減と新分野を探す建設業者を取り上げていました。
構造改革の結果を具体現場の例から説明する、良い手法だと思います。抽象的な理論や、集計した数字だけでは分かりませんからね。(4月28日)

ガバナンス、マネージメント、アドミニストレーション

2008年4月28日   岡本全勝
以前から、ガバナンスとマネージメントについて考えています。大連載では第4章で書く予定です。関係する書物を読んで、少しずつ考えが整理できつつあるので、書き留めておきます。
(ガバナンス論の民と官)
ガバナンスが取り上げられるようになったのは、1990年代、コーポレート・ガバナンス(企業統治)からのようです。それに触発されて、パブリック・ガバナンスの議論が盛んになっています。
まず、ガバナンスとマネージメントと、どこが違うか。ガバナンスは統治・支配であり、マネージメントは管理・経営です。前者は、株主が経営者を選び、経営を委任し、その執行を監視することです。会社の目的を決定することも含まれます。株主は会社の所有者です。
後者は、経営者が会社を経営することです。さらに、マネージメントには、狭義のマネージメントとアドミニストレーションがあります。狭義のマネージメントは経営であり、経営者が目的に沿って事業戦略を立て、組織・人員・予算、さらには経営システムを決定します。アドミニストレーションは、より下位の監督で、事務の執行管理です。経営者でなく、各部門の責任者(課長など)が行います。
これを政府に当てはめてみましょう。政府が会社であり、株主は国民です。国民が政府の所有者です。国会を通して内閣に行政を委任します。国民が政府を支配することが、ガバナンスです。かつて、統治といえば、政府が国民を統治しました。主体は政府であり、統治客体は国民でした。被治者とも呼ばれます。しかし、新しいガバナンス概念では、統治(支配)の主体は国民であり、統治されるのは政府です。続く。

わが家のテレビ

2008年4月27日   岡本全勝

先日、日本ビクターがテレビの生産を打ち切る、というニュースがありました。実はわが家のテレビが、ビクター製なのです。もっとも、ニュースになっていたのは薄型テレビであり、わが家のはブラウン管です。もう10数年も使っています。
5年ほど前に、画面が暗くなり、修理に来てもらいました。配線の一部が弱くなっていたとのことで、修理してもらうと、またきれいに映るようになりました。その時の職員さんが、「このテレビを、大切にしてください。まだ当分、きれいに映るでしょう。この型が、日本で製造した最後のテレビです。その後は、アジアに生産を移しました」とおっしゃったのです。
2011年にはアナログ放送が打ち切られるので、それまでには買い換えなければならないのですが。もう少し、このテレビに頑張ってもらいましょう。

3回目

2008年4月26日   岡本全勝
今日は、第3回目の授業。予定より少し遅れていますが、想定内で、順調に進んでいます。春学期は、乗ってくると、すぐに連休なんですよね。遅れているのは、レジュメ以外のことに、「脱線する」からです。今日は、日経新聞社から提供していただいた小冊子を配って、新聞の読み方などもお話ししました。三田までは宅急便で送ってもらったのですが、100冊になると、結構な分量でした。中西編集委員、ありがとうございました。
そこから広がって、記事の作られ方、官僚と新聞記者の関係なども。他の授業では、聞けない話だと思います。昨年秋学期に私の授業を受講した学生さんからも、「面白いので、どんどん喋ってください」と応援をもらいました。
なお、授業で紹介した、ウエッブで読める解説は、例えば「清水真人編集委員」、他の人も。手嶋龍一さんの本は、『外交敗戦―130億ドルは砂に消えた』です。
受講生数は、90人程度になりました。もっとも、小レポートを宿題に出したので(締め切り5月10日)、次回は減るかな。

2008.04.26

2008年4月26日   岡本全勝

矢吹初青山学院大学教授らが、『地域間格差と地方交付税の歪み』(勁草書房、2008年4月)を出版されました。
地方交付税による財政調整の結果を各団体ごとに調べ、通常の値から外れている「外れ値」となっている団体を調べるのです。もちろん、政令市や特別区のように、行財政制度が違う団体は当初から除外しますが、その他の団体は対象とします。小規模団体も豪雪地帯も、貧乏団体も富裕団体もです。すると、「交付税の歪み」が出てくるというのが、先生の主張です。
その際に「遺伝的アルゴリズム」という手法を使って、外れ値を探し出すのです。ここは難しくて、かつて先生に教えてもらった時も、十分理解できませんでした。人為でなく、機械的にシミュレーションするのです。ここが、客観的に「外れ値」を検出する核心です。
ちなみに、交付税の算定には、足し算・引き算・かけ算・割り算しか使っていないので、はるかに簡単な知識で理解できるようになっています。「一般の方でもわかるように」というのが、地方交付税の哲学です。
さて、元交付税課長としては、この外れ値を説明しなければなりません。離島や豪雪地帯では、割高になる行政コストを、算式を使って基準財政需要額に加算します。これが、外れ値になる可能性があります。港湾があるかないかなども、要因となります。
次に、ふるさと創生事業や公共事業促進のため、事業費補正を使って、各団体が発行した地方債の元利償還金の一定割合を算入しました。これは、各団体の発行額という「非客観的数値」を基礎としているので、外れ値になることが多いと思われます。ただし、これについては、2001年以降廃止縮小しました。その後、頑張る地方応援プログラムが始まっており、これは外れ値になる可能性があります。
本には、CDーROMも付いています。各団体でも、調査検証が可能です。ご関心ある方に、お勧めします。