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頑張れ浅川さん。国際機関での日本の貢献

今日の朝刊に、財務省の浅川雅嗣副財務官が、OECDの租税委員会議長に就任することが載っていました。国際的な税制ルールづくりの場だそうです。国際機関で日本政府や日本人が活躍するのは、うれしいですね。
浅川さんとは、麻生内閣の秘書官として、一緒に仕事をしました。アメリカ発の世界同時不況に際し、日本政府がIMFに1千億ドル(約10兆円)の融資をし、中小国の資金繰りを助けたのは、その時の話です。国際金融の話は、私には新鮮で、たくさんのことを教えてもらいました。今朝、携帯電話にお祝いのメールを打ったら、夕方にパリから返事が来ました。

日本人の活躍とともに、このようなニュースが記事になることが、うれしいです。読者の関心がないのか、書く能力を持った記者が少ないのか、それを理解できる編集長がいないのか。このような記事は、めったにお目にかかれません。また、解説がないと、ほとんどの読者はわからないのではないでしょうか。
たぶん、それを書ける記者を、養成していないのだと思います。かつて書きましたが、日本の新聞やニュースの国内閉鎖性は、世界でも珍しいと思います。1億人の市場、日本(その国)だけで通じる日本語(言葉)、英語でなくてもできる大学教育。これを満たしている国は、日本くらいでしょう。フランス語やドイツ語、ロシア語は、1国だけではありません。エリートと財界人が、外国語(英語)なしで仕事ができる数少ない国なのです。
先に述べた1千億ドルの融資についても、総理記者会見の際に質問をした記者は、一人もいませんでした。また、大きな記事にならなかったので、ほとんどの日本人は知りません。そしてそれがどのような効果を持ったかも、記事になっていません。
日本が国際社会で貢献するには、輸出や援助も一つのバロメーターですが、このような国際経済対策やルールづくりも重要です。そして、それを理解して記事にできる記者を養成することも、必要ですね。次は、浅川議長の活躍を伝える記事を、期待しましょう。

2011.01.26

今日は、慶應義塾大学で期末試験でした。これまでの出講では主にレポートで採点していたのですが、今回は学生数が多いので、筆記試験にしました。
事前に学事担当から、試験会場での注意事項を受け、試験監督の補助をしてくださる院生に助けてもらって、無事に実施できました。100人を超える数になると、問題用紙と解答用紙の配付や、出席者の確認にも、結構な手間がかかります。
試験会場に入るのは学生の時以来(かな?)で、久しぶりにあの緊張感を味わいました。学生諸君の真剣な姿には、感動しました。これから、その成果を、採点します。

校長の日常業務

振り返ると、先週は毎日講義がありました。自治大学校、慶應義塾大学、消防大学校と。大学と大学院での講義も終わり、ほっとしているのですが、来年に向けて自治大学校での研修内容の見直し検討などが続き、毎日忙しくさせてもらっています。まあ、私が職員を忙しくさせているのですが。
現在のカリキュラムはこれまでの経験で積み重ねてきたものですが、違った角度から見ると、いろいろと改革したい点が見えてきます。昨日は税務専門課程会計コースの通信研修と宿泊研修の内容を、会計学や簿記の専門の先生方に検討していただきました。今日は、人事院公務員研修所長に来ていただき、講義をしてもらうとともに、意見の交換をしました。お互いに、より良いものとするべく奮闘中です。参考になりました。
職員研修も、大きな変革期にあります。これまでの教える授業から、考える研修へ。内容や手法が変わっています。そして、誰に何を身につけてもらうかを、はっきりしなければなりません。
たぶんどの分野でも、改革は小さな改善や手直しが積み重ねられ、ある時点で哲学や基本方針が変わって、それら小改革を統合する大改革が行われるのでしょう。それを怠ると、時代遅れの遺物になってしまいます。

部下に信頼される上司

リスクについて、勉強を続けています。連載の範囲からは少し外れるのですが、安心に関する心理学にも興味を持って、いくつか本を読みました。中谷内一也教授の著作が、勉強になりました。人は何を安全と思うか、報道によっていかにイメージがつくられるかなどです。例えば、『安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学』(2008年、ちくま新書)や『リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか』(2006年、NHKブックス)です。食品偽装事件などを例に、わかりやすく書かれています。
ところで、『安全。でも、安心できない…』は、管理職論、人間関係論として、非常に参考になりました。この本は、リスクに関して関係者(製造業者、商店、厚生労働省)や評価機関が信頼できる場合とできない場合を、心理学の知見から解説しています。いくつも勉強になることが書いてあるのですが、その一つに次のようなことがあります。
人が他人や会社を信頼するのは、その「優れた能力」だけでなく、「まじめな姿勢」と「相手への配慮」によるのだそうです。
なるほど。この3つに要約すれば、わかりやすいです。仕事ができる上司でも、一生懸命さが見えない上司は、尊敬しにくいです。仕事ができ、かつまじめな上司でも、部下である私の話に耳を傾けてくれない上司は、とっつきにくいです(反省)。
今まで、部下に信頼される上司のありかたについて考え、話してきましたが、この整理はわかりやすいです。「何だ、当たり前のことじゃないか」とおっしゃる方もおられるでしょうが、なかなか実践はできないものです。私の経験を加味して、使わせてもらいます。

街の姿、日本らしさとは

22日の日経新聞夕刊に、陣内秀信教授のインタビュー、「都市の華やぎ、本物か。街の姿は人の営み」が載っていました。
・・東京では高層ビルの建設が今も続く。都市の活力は健在なのか。陣内さんは懐疑的である・・
「製造業がダメなら次は金融や不動産業だというやり方では、街は魅力的にはなりません。なんだか外国のブランドばかり目立つようになったという印象です」
「日本は明治維新以降、欧米に学び、追い越すことに傾注してきました。戦後はものすごいパワーで復興し、東京オリンピックや大阪万博で都市を改造し、右肩上がりの成長を成し遂げました。しかし今どうしてよいかわからず、右往左往しているのです」
「40年近く付き合ってきて、イタリアはしたたかだなと思いますね。都市の魅力とは何かという概念がローマの時代からあるんです。絶えず危機意識を持って、都市の在り方を着々と変えてきました。戦後、ミラノやトリノなどの大都市を中心に成長しましたが、1973年の石油ショックが転機でした。中規模の都市が見直されて主役になったのです。優れたファッションやデザインによって高付加価値の製品を生む家族経営が各地域でのしてきて、80年代の成長を支えました」
確かに、街の姿が、その国と地域の「生き様」を表しているのでしょうね。日本は、かつての日本の姿を脱ぎ、欧米化することで発展してきました。そして日本らしさは、どんどん消えつつあります。私は「新地方自治入門」で、絵はがきになる街の風景がないことを指摘しました。京都タワーの上から写真を撮っても、もう京都らしい風景はないのです。日本を紹介する写真は、お寺か神社のような点でしかないのです。
先日、中国の経済発展は素晴らしいが、中国らしさはどこにあるのかと書きました(2010年12月27日の記事)。中国でも同じことを感じました。和魂洋才といった言葉も、聞かれなくなりました。畳の暮らしや和食など、日本らしさが残っている分野もありますが。