岡本全勝 のすべての投稿

今日のささやかな善行

今朝、大学に向かう途中での出来事です。地下鉄新宿駅で、若い女性が、とても大きな旅行鞄を持って、階段を登ろうとしていました。エスカレータがないので、一苦労です。「お手伝いしましょうか」と話しかけたら、「はい」とのこと。そして自分は、すたすたと登っていきます。「???」
鞄はとても重く、ようやく階段上まで運んだら、彼女は「JPに乗るんです」、と少したどたどしい日本語で話し、先に改札を出ていきます。「しゃあないなあ」と思いつつ、「韓国から来たのですか」と聞くと、「台湾です。3年いました。これから、台湾に帰ります」とのこと。鞄にはコロコロが着いているので、押しながらJRの改札の中へ。私は違うホームなのですが、ここで逃げるわけにも行かず、今度は山手線への階段を鞄を持って登りました。
「台湾では、みんなが手伝ってくれますか?」と聞いたら、「ハイ、親切です」とのこと。彼女は、「日本人は冷たいですね」とは、言いませんでしたが。
この記事を書きながら、「日本ではこれは善行だけど、ヨーロッパや台湾では善行に入らない。当たり前のことだろうなあ」と反省しました。

2010.12.18

今日は、日大大学院で講義。第6章「市民の満足」を、お話ししました。私の授業では、第2部で「地域の経営」をお話しし、第3部で「市役所の経営」を解説しています。
すなわち、公共経営を2つの分野に分け、前者の「地域社会の経営」と後者の「行政組織の経営」とを、議論しています。通常の行政管理論は、この第3部に当たります。しかし、行政の任務と目標が明快だった昔と違い、何が市役所の任務なのかから、問わなければならないのです。最近の公共経営論や公共管理論は、そこまで進みつつあります。
そして、第3部の組織管理論の講義も、市役所内部の組織管理(第7章)から、市民の満足(第6章)、さらに第2部の地域社会の経営を視野に入れた経営論(第5章)へと、範囲を広げています。 現実の行政学は、組織の管理や組織のスリム化効率化から始まり、成果を問う・市民の満足を上げるというNPM論に進化し、さらに地域の経営へと発展しています。その順に問題を発見してきました。
私の授業では、問題意識をはっきりさせるために、その逆の順に講義しています。すでに本に書かれていることを講義していては、私が教えに行く意味がありませんからね。特に第7章は、私の30年にわたる経験を基にした、「岡本行政管理論」です。
年内の授業は、これで終わり。新年にもう1回講義をして、終了です。

自治大、模擬講義演習

17日、自治大学校では、第2部研修生188人が6教室に別れて、「模擬講義演習」を行いました。一人持ち時間15分、それぞれが選んだテーマで、同僚研修生を新規採用職員や初任者などに見立てて、講義をするのです。
自治大の卒業生は、派遣元自治体に戻ると、今度は同僚や部下職員を相手に、研修の講師をすることが多いです。それだけではなく、幹部になるので、人前で話すことや、講義をすることも増えます。人前で講義する技術を磨くため、すでにそれに関する授業を受け、事前に講義プランも立てて、この本番に望みます。そして、同僚研修生や本校教授の評価と批判を受けます。
皆さん、事前に練習を重ねて登壇するのですが、思ったようにはいきません。たいがいは、時間が足らなくなるのです。また、同僚からは、「単調で眠くなる」「パワーポイントの使い方が下手だ」「どこが重要なのか伝わらなかった」などなど、厳しい批判が出ます。
でも、それがこの演習の目的です。最初から上手な人はいません。経験を積み、反省を重ね、工夫をして上手になるのですから。

大学での授業

平成14年度と15年度の2年間、東京大学大学院総合文化研究科で、客員教授を勤めました。その際に、学生との連絡のために、ホームページを開設しました。そもそも、このサイトを作ったのは、このためだったのです。
その後、一橋大学に呼んでいただき、2007年度からは、慶應義塾大学法学部で、非常勤講師を勤めました。
2010年度は、日本大学法学部大学院と、再び慶應義塾大学法学部で非常勤講師を勤めています。

1 東京大学大学院総合文化研究科での講義(歴史遺産)
2002年度 2003年度
2002年度の講義録は、加筆して単行本にしました。それが、「新地方自治入門-行政の現在と未来」です。

2 一橋大学公共政策大学院での講義(歴史遺産)
2005年度 2006年度
この講義などを基にして、連載をしました。「行政構造改革」です。

3 慶應義塾大学での講義
2007年春学期 秋学期 2008年春学期 2010年秋学期

4 日本大学法学部大学院での講義
2010年春学期 秋学期

公共サービスと料金

全国市長会の機関誌『市政』2010年12月号に、中邨章明治大学教授の「自治体の信頼と危機管理」が載っています。その中で、アメリカでの消防・救急の費用負担が、紹介されています。
救急車を呼んだら、「料金を支払えるか」と聞かれた例や、あらかじめ75ドルの税金を払っておかないと消防車が来てくれない例が、出ています。後者の場合は、火事になったが事前に75ドルを支払っていなかったので、消防車が来てくれない。しかし、隣の家は支払っていたので、消防車が来てくれた。ただし、規則に忠実な消防隊は、現場に到着しても、出火元が全焼しても活動せず、隣家に延焼始めたら消火活動を始めたという話です。以前、中邨先生にこの話を教えてもらった時には、「忠実な消防隊」を笑うとともに(失礼)、なるほどと感心しました。

私は、消防は地域全体への危険を防止するために、無料でよいと考えます。しかし、救急の場合は、特定個人が利益を受けます。そして、緊急度の低い人が、救急車を呼ぶ例も報道されています。だから、有料にして良いと考えます。
その時は急いでいるので、後払い。または、健康保険の対象にするのも、一つの方法です。往診の場合は、往診料を払います。それとよく似た行為だと、位置づけるのです。医者が来てくれるのか、医者のところに運ぶのかの違いです。もちろん、料金設定をいくらにするのか、少々難しい問題もあります。
無料と言っても、その費用は住民が負担しているのです。その点、山岳救助の費用も、遭難者が負担すべきです。通常の生活ではなく、危険を伴うことを承知で出かけているのですから。「高額だから無理だ」とおっしゃる人もおられますが、保険に入ればよいのです。スポーツ少年団なども、保険に入っています。