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経済同友会、長谷川代表幹事

経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業会長)が、今月4月で退任されます。4年前、大震災発災直後に就任され、任期の4年間は復興に重なりました。長谷川代表幹事の指揮の下、同友会と加盟企業の方々は、本当に復興にご協力をいただきました。改めて、お礼を申し上げます。長谷川さんは、退任の記者会見で、復興についても力を込めて振り返っておられます。
ところで、私もこの仕事でなければ、同友会を始め、経団連など日本を代表する企業の方々、さらにはNPOの方々と、こんなに親しくお話し(お願い)をすることはなかったでしょう。被災地視察に同行させてもらうと、これらの方々と1日中バスや会議でご一緒します。すると、復興の話だけでなく、経済や社会、政治まで、話が広がります。視野が広がる、ありがたい場です。役所や同業者との付き合いに閉じこもっていては得られない、人脈と知見です。

長時間労働の割には成果が出ていない

日経新聞土曜日の別刷り「ニュースクール」4月11日は、「朝早くから仕事、どうして」でした。この夏に試みられる国家公務員の朝方勤務が、解説されています。そこに、日本のお父さん、アメリカのお父さん、フランスのお父さんの1日が、グラフになって比較されています。それによると、「家を出る」は、日本7:36、アメリカ7:30、フランス7:42です。ほとんど差がありません。ところが、終業時間は、アメリカ5:03、フランス5:31に対して、日本は6:51です。さらに、帰宅時間は、アメリカ6:05、フランス6:14に対して、日本は8:12です。帰宅時間では、2時間も違います。
さて、これに見合うだけの成果が出ているのか。どうも、そうではなさそうです。記事には、1時間当たりの労働が生みだすGDPも比較されています。当然、日本は低いです。長時間労働をしていながら、成果は少ない。踏んだり蹴ったりです。それぞれのデータには、出所が明記されています。ぜひ、記事をお読みください。課題は、常態化した残業と、夜の付き合いです。

被災地での挑戦

NHKクローズアップ現代、4月14日は「復興イノベーション~被災地発 新ビジネス」でした。
・・多くの命が、町が失われた東日本大震災の被災地。4年あまりたつ今、ここで新たな産業を創出する「イノベーション」が起きている。宮城県山元町では、従来の農業にはなかったブランド戦略で1粒1000円のイチゴを開発。水産業が壊滅的な被害を受けた三陸の沿岸部では、ライバル同士だった各地の若手漁師たちがグループを作り、高品質の魚介類を直接、消費者や海外へ販売する動きを始めている。これらの動きを後押ししているのが、都会の企業でバリバリ働いていた若手の人材たち・・
番組を8分間、無料で見ることができます。ぜひご覧ください。
被災地の復興には、産業・生業の復興が不可欠です。しかし、発災前の産業をそのまま復興しても、じり貧です。どのように新しい産業に取り組むか。これまでは、つくったら売れる、採ったら売れるでした。しかしそれでは、もはや通用しません。これらの成功事例は、「売れるものをつくる」です。重要な要素は、新しいことに挑戦し、地元で頑張る人材。そして、外とつなぐ仕組みや人材です。鍵は「人」です。復興庁でも、民間企業やNPOなどの協力を得て、新しい試みを支援しています。

丸山真男著『政治の世界他十篇』

丸山真男著、松本礼二編注『政治の世界他十篇』(2014年、岩波文庫)を、読みました。丸山先生の『日本の思想』(1961年、岩波新書)、特にそこに収められた『「である」ことと「する」こと』は、読まれた方も多いでしょう。
丸山真男先生は、私が東大に入った頃は既に退官しておられましたが、法学部生にとっては「神様」であり、『現代政治の思想と行動』(未来社、新装版は2006年)は必読書でした。終戦直後に書かれた、戦前戦中の日本政治を鋭く分析した各論文を読んで、知的興奮を覚えました。今年は、先生の生誕100年だそうです。
今回の文庫本に収められたのは、政治学関係それも時事的なものでなく、政治学の特質や政治の特質を論じたものです。1947年(昭和22年、終戦から2年目)から1960年(昭和35年、日米安保闘争)までに書かれたものですが、今読んでも、古さを感じさせません。いくつか共感するか所を、紹介しましょう。
・・政治的認識が高度であるということは、その個人、あるいはその国民にとっての政治的な成熟の度合を示すバロメーターです・・それは政治的な場で、あるいは政治的な状況で行動する時に、そういう考え方が、いいかえれば、政治的な思考法というものが不足しておりますとどういうことになるかというと、自分のせっかくの意図や目的というものと著しく違った結果が出てくるわけであります。いわゆる政治的なリアリズムの不足、政治的な事象のリアルな認識についての訓練の不足がありますと、ある目的をもって行動しても、必ずしも結果はその通りにならない。つまり、意図とはなはだしく違った結果が出てくるということになりがちなのであります。
よくそういう場合に、自分たちの政治的な成熟度の不足を隠蔽するために、自分たちの意図と違った結果が出てきた時に、意識的に、あるいは無意識的になんらかのあるわるもの、あるいは敵の陰謀のせいでこういう結果になったというふうに説明する。また説明して自分で納得するということがよくあります。
つまり、ずるい敵に、あるいはずるい悪者にだまされたというのであります。しかしながら、ずるい敵にだまされたという泣き言は、少なくとも政治的な状況におきましては最悪な弁解なのであります。最も弁解にならない弁解であります。つまりそれは、自分が政治的に未成熟であったということの告白なのです・・p341。
この項、続く。

岩手県沿岸南部視察

今日14日は、岩手県宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市を視察し、市町長と意見交換してきました。特に、山田町、大槌町、陸前高田市は、市の中心部がすべて津波で流され、役場機能も失うという大きな被害を受けた町です。そのため他の町に比べ、復旧・復興事業が遅れていたのですが、最近になって大きく進みました。
すなわち、住民の意見集約ができて、高台移転や区画整理の計画ができあがり、用地買収もほぼできました。工事も着実に進んでいます。また、早い地区では公営住宅や宅地造成が完成し、引き渡しも始まっています。首長さんたちも、自信を持ったお顔です。工事完成までには、まだ2~3年かかりますが、見通しが立っていること、順次完成することで、住民の方にも安心してもらえます。
その他の市も、順調に工事が進み、次の課題は生業の再生や集団移転跡地の利用計画などに移っています。新しい街並みができると、仮設商店街から本設の商店街に移転してもらう算段が必要になります。また仮設住宅での孤立防止見守りや新しい住宅地でのコミュニティ再建支援の他に、自宅を再建するか公営住宅に入るかを決めかねている家族への相談なども必要になります。現場に行くと、新しい課題やそれに対する新しい試みなども勉強になります。工事の完成時期や残る事業とあわせ、後期5か年の財政要望なども聞いてきました。
時間を有効利用するために、昨日夜に盛岡まで入り、今朝から一筆書きで、回ってきました。今日も、強行軍でした。