2月4日の日経新聞に「三井住友海上、スキル軸の人事制度 ジョブ型の修正で組織硬直化防ぐ」が載っていました。
・・・三井住友海上火災保険が社員のスキルを評価基準とする新たな人事制度を導入した。昇進・昇給とリスキリング(学び直し)を連動させ、専門性を高める。一方でキャリアの硬直化を防ぐため、定期的な異動や職種転換も促す。近年は職務内容を限定する「ジョブ型」制度を導入する企業が増えているが、これに修正を加え、人材の流動性も確保しようとの試みだ。
2025年9月、三井住友海上で労務のスキルを高めたい社員の勉強サークルが始動した。労災保険業務の担当者や関連部署への異動を希望する人など約20人が月1回、オンラインで集まる。
「カスタマーハラスメント」や「外国人雇用」など関心のあるテーマの研究発表をしたり、最新制度の状況や資格試験の情報を交換したりする。
業支援部門に所属する三ツ橋沙織さんは、法人向けの労務管理助言サービスなどに携わりたいと考え、参加した。「キャリアの方向性も明確になり、資格試験への意欲も高まった」と語る。
労務の他にもこの1年間に「M&A(合併・買収)」など約10分野で、その道のプロを目指す社員が学ぶ「スキルコミュニティ」が発足した。
社内の学習熱を高める契機となったのが25年4月に導入されたスキル型人事制度だ。グループの多彩な業務を28のジョブに分類した。その担い手となる74種類の「プロ人財」と、必要とされる約800のスキルを定義し、異動や昇進、昇給など全人事をスキルの習得・発揮にひも付けた。
制度の基礎となるスキルデータベースは、社会保険労務士や中小企業診断士などの資格に加え、「適切な調査に基づく損害認定」など具体的な業務遂行力も含め、仕事のレベルに応じて細かく設定。毎年の昇給水準もスキルと連動する・・・
・・・保険業界は業務を限定しない総合職や年功序列型の賃金など、「メンバーシップ型」と呼ばれる日本型雇用が色濃かった。近年はデジタル化など事業構造の変化が加速するなか、ゼネラリスト主体の組織では対応できなくなってきていた。
三井住友海上は22年から人事制度改革に着手。まず検討したのは日本でも広がり始めたジョブ型だった。必要に応じて経験者を採用する欧米の標準で、働き手に求める仕事内容を職務記述書(ジョブディスクリプション)で細かく定義する。長く同じ仕事を担当させることで、専門性を高めやすくする仕組みだ。
だが、欧米の同業他社の運用を調査すると、意外なことが分かった。ジョブ型をベースとする企業でも、事業環境の変化や専門人材の不足に対応するため、固定的なジョブ型の運用を修正し、リスキリングを通じた社内の人材移動を促進する取り組みが広がっていた。
人事部の丸山剛弘氏は「人材の専門性は高めたいが、特定分野しか知らないのも好ましくない。求めるのは総合力のあるスペシャリスト。ジョブ型をベースに、メンバーシップ型の利点も残せる仕組みを模索した」と説明する。
標準的なジョブ型との大きな違いは進化したジョブローテーションの活用だ。
社員には少なくとも4年に1回(ライン長は3年に1回)、社内公募への応募を義務付け、他部署への異動を求める。組織の事情などで例外的に同じ部署にとどまる場合も、経験のない業務への挑戦が必須だ。
従来は会社にあった異動の主導権を社員に移す一方、職種転換も奨励して組織の流動性を確保する狙いだ。25年度は約3千人が公募に応じ、うち3割が希望ポストに異動する見通しという。
課題は適正な評価だ。新制度ではスキル習得に加えて、業務への活用の度合いも考課対象となる。スキル評価を行う組織長をサポートする管理職ポストも新設し、個々の社員のキャリア志向に合わせたリスキリングも助言する。個人の成長を組織の成長につなげられるかが問われている・・・