連載「公共を創る」第243回

2025年12月18日   岡本全勝

12月18日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第243回「政府の役割の再定義ー「役所の経営」を超えた「地域の経営」」が発行されました。

公共経営論は盛んになったのですが、個別事業の有効性は測りにくく、役所全体の目的達成=政策選択についての議論はそれ以上に難しく、進みませんでした。企業にあっては、目的の達成度は全体の売り上げと利益という数字で測ることができ、それを基に事業や商品の取捨選択ができます。それに対し、役所では住民が何を求めているか、施策間の評価と選択が簡単には判断できないからです。
ところが、役所側の施策に着目してその成果を測るのは難しいのですが、「住みやすさ」という観点で地域が良くなっているかどうかを見ることで、役所の活動の成果を測ることができるのです。

すると、自治体幹部が自治体の経営を考える場合には、「役所の経営」とともに「地域の経営」という、二つの違ったものを相手にしなければならないことが分かります。
この二つは異質ですが、別のものではなく、つながっています。すなわち、役所の経営の「成果」が、地域の経営にあっては「投入量」となっているので、地域の経営を目的と考えると、役所の経営については効率性ではなく有効性の観点で考えることが必要になるのです。
結論から考えると、市町村役場の目的は住みよい地域をつくることです。役所の経営は、そのための手段にすぎません。もちろん効率的に仕事をするために行政改革は有意義ですが、予算と人員を削減して効率的に執行することが、市町村役場の最終目的ではありません。

日本が経済発展していた時期には、役所は増大する人口と生活水準の向上に合わせて、行政サービスを確実に提供し、その質量の拡大をしていれば、住民の期待に応えることができました。ところが、高齢化と人口減少が進むと、雇用の場がなくなり、各種サービスが提供されなくなって、暮らしにくい地域が出てきたのです。そこでは、市町村役場が良い行政サービスを提供しているつもりでも、人々は便利に暮らしていくことができません。