組織運営の要諦1

私は官僚になってから、組織を動かす立場や、新しく組織をつくって動かす経験をしました。その経験と、他の組織でうまくいっていない事例を比べて、組織を動かす要諦は、「集権と分散」「社風」の二つだという結論に達しました。企業にも当てはまると思いますが、ここでは役所を念頭に説明します。

「集中と分散」は、幹部がすることと、部下がするべきことを、はっきりさせることです。幹部が組織の目標を提示し、それを部下に割り振ることです。そして、部下の動き把握し、問題があれば修正し、新しい課題が見つかればそれに対応すること(新しい部下を置き、指示を出すこと)です。
幹部が何を処理するか、何を部下に任せるかの判断が、最も重要です。幹部がすべてに指示を出すようだと、部下は自主性を失い指示待ちになります。部下にすべてを任すと、部下は迷走します。

各省や自治体の組織の多くは、長い歴史と経験を持っています。その間に、各組織は何をしなければならないかが、幹部が明示しなくても、構成員と外部に共有されています。
ところが、新しく作られた組織や、××本部のように臨時で編成される組織は、下部組織や構成員が何をしなければならないかが不明確です。幹部が部下に対して、はっきり明示しなければならないのです。
既存組織で管理職だった幹部が、新しい組織に来て「何で、部下は動かないのだろう」と悩むのは、ここに原因があります。既存組織では暗黙知だったことを、新しい組織では明示しなければならないのです。

もっとも、幹部も、全体の方向性は理解していても、下部組織にどのように割り振るとよいのか、誰だどれだけ仕事ができるのか、できないのかは、分かりません。だから、常に部下との対話を通して、進んでいるのかいないのか、どこに問題があるのかを把握する必要があります。自分一人ではすべてを把握することは困難なので、代行してくれる「手下」が必要です。
また、部下からも、自主的に問題点が申告されるような仕組みと雰囲気をつくる必要があります。これは、要諦の2「社風」につもつながります。「組織運営の要諦2