小峰隆夫著『平成の経済』(2019年、東洋経済新報社)を読みました。連載「公共を創る」の執筆に当たって、平成時代の経済をもう一度確認するためにです。読まなければと思いつつ、先延ばししていました。専門家に「どの本がよいですか」と聞いたら、何人かの人が、この本を推薦してくれました。
確かに、よくできています。平成30年間の経済の動きを、いくつかの時期に区切って、その特徴を切り出します。そしてなにより、当時の関係者(政治、行政、産業界、エコノミスト、マスコミ)の意識、取られた政策、その評価が書かれています。これは、官庁エコノミストであった小峰先生でなければ、書くことができなかったでしょう。
平成時代の経済は、バブルで幕を開け、その崩壊、不良債権処理、長引くデフレ、金融危機(金融機関の倒産)、回復、そして世界金融危機(リーマンショック)と、大きな波に翻弄された時代でした。政府も、手をこまねいていたわけではありません。次々と大型の経済対策や、不良債権処理対策、金融危機対策を打ちました。そこには、新しい政治過程も生まれました(与野党協議、財金分離、経済財政諮問会議などなど)。
政策の評価は、なぜそのようなものが採用されたか、なぜその時期になったか、なぜある政策は実行できず、効果が疑問視された政策が実行されたのか。極めて、客観的な評価になっています。
終章は「平成経済から何を学ぶか」と題して、平成の経済政策の失敗から学ぶべき教訓が整理されています。
1 認知が遅れること(バブル、デフレの例)
2 経済学的にあいまいな政策を避けること
3 経済政策を遂行するには、政策立案の分析力とともに実行していく政治力が必要なこと
他に7つの項目が挙げられています。
また、第15章では「これからの経済的課題」として、これまで十分取り組まれなかった課題なども議論されています。
昭和30年(1955年)生まれの私にとって、平成時代は34歳から64歳で、官僚として活動した時代に当たります。ついこの間のことと思えます。しかし、若い人たちにとっては、子供のころのことが多いでしょう。平成元年に20歳だった人は、現在51歳ですから。体験していないこと、学校で教えてもらっていないことが多いと思います。この本は、お勧めです。