朝日新聞に登場しました。政治の役割

朝日新聞が3月5日から「首長と震災」の連載を始めています。5日は伊澤史朗・福島県双葉町長、6日は阿部秀保・宮城県東松島市長でした。
阿部市長は発災直後から、すばらしいリーダーシップを発揮して、復興を進められました。がれき片付けについても、がれき置き場を性質別に分類して、市民が運ぶ際に分別するようにしました。たたみ、木材、燃えるゴミ、燃えないゴミ、金属など。混ざっていると、その後で分別する手間が大変なのです。金属類は、売るとお金になります。初めて視察に行ったときは、その手際よさに驚きました。かつての経験があったとのこと。他の市町村では、そこまで気が回りませんでした。この経験は、その後の災害、例えば熊本地震などでも生かされています。
また、新しい町での町内会作りについても、このホームページで、取り上げたとおりです。これらのことも、書いてほしかったですね。

さて、その記事の中に、私の発言が紹介されています。
・・・被災3県では新しいまちが出現しつつある。高台移転と土地のかさ上げによる宅地造成は1万9385戸が計画され、3月末までに69%が完成する。災害公営住宅も含めると、投じられた国費は2兆円。復興庁の前事務次官の岡本全勝(62)は「地元に住み続けたいという情念と、経済合理性は比較不能。それを決断するのが首長の仕事だ」と語る・・・

復興の過程で、時々質問を受けました。「このような大規模な工事をして防潮堤を作ったりや高台移転などせずに、住民に安全なところに引っ越ししてもらった方が、安くできるのではないか」とです。そのような考え方もあります。しかし、ふるさとで暮らしたい、もう一度町を復興したいという住民の気持ちと、外部の人が考える経済合理性とは、同じ尺度で判断できない選択です。諸外国ではこのようなふるさとを復興するのではなく、他の土地に移住する、あるいは国は支援せず住民に任せることが多いようです。これは、このホームページでも書いてきたように、日本の国柄でしょう。
それを前提として、多額の税金でふるさとの復興を支えるのか、引っ越しを勧めてそれを支援するのか。これは、官僚が決めることではないでしょう。民主主義国家、日本国憲法の下では、「比較不可能な複数の価値」に序列をつけるのは、政治家の仕事です。国民にそのために増税をお願いすると判断するのも、政治の役割です。もちろん、任せてもらえれば、官僚が「合理的」と考える判断をします。また、方針が決まれば、最も合理的な方法で工事を行います。
私の発言は、正確には「それを決断するのは政治の仕事だ」です。