毎日新聞8日の社説は「義務教育費、地方に任せ分権のチャンスに」、産経新聞6日の正論は「権益に凝り固まった官僚の横暴を許すな・三位一体改革の行く末を憂う」、産経新聞8日は「地方分権置き去り、政府・与党間の調整混迷」、毎日新聞7日時代の風は「ヤマ場の三位一体改革」を載せていました。(11月8日)
義務教育費負担金の扱いが、クローズアップされています。9日の毎日新聞は「妥協案探る動きも」としつつ、「負担割合を下げ市町村負担を導入する案は、地方団体の猛反発は必至。政府側の受け止めも冷ややかだ」「交付金案は、補助金の一種である以上は、税源移譲の対象とはならない」と、産経新聞は「教育水準の低下は地方交付税法の規定で回避可能」を書いていました。
朝日新聞は「三位一体改革誰のために」を、読売新聞は「混迷の三位一体改革」(上)を解説していました。「中川国会対策委員長がこう言う。『明治以来の中央集権を地方分権に変える改革だ。これに抵抗する省庁と族議員には、国益という大義がないことを民意は見抜いている。小泉総理は民意を基盤に不退転の覚悟だ』」。
新聞は、国会議員の抵抗が強いこと、そしてそれを基に、妥協案の記事や地方案は成案にならないかのような記事を書いています。しかし、6月に閣議決定した「基本方針2004」を破棄するならいざ知らず、これを守ろうとすると選択肢はそう多くありません。
また、族議員のポーズを議員さんたちの本音と取り違えてはいけません。国会議員は自民党の大きな構成要員ですが、自民党の足腰は地方議員であり地方首長です。この人たちを敵に回した場合の結果は・・。この構図を、政治家はよく知っておられます。そして、閣議決定を破った場合の、世論の反発も。さらに、総理のおかれた政治的立場を考えると、この中川委員長の発言が正鵠を射ていると思います。(11月9日)
9日に、地方団体代表と4大臣との協議会が持たれました。10日の各紙は、その模様を伝えています。地方団体側は、省庁案に強く反発しました。当然のことです。国民もそう見ているでしょう(官僚はこうして信頼を落としているんです)。
地方は、「補助率引き下げは、省の権限を温存しようとするもの。交付金化では、省庁が配分する構図は変わらない。『国が責任を持たなければならない』と主張するなら、補助率を4分の3以上に引き上げよ」と主張しました。さらに「補助率引き下げなどを行うなら、受託事務を返上し、国地方係争処理委員会に提訴する」とも主張しました。
もっともなことです。「国が責任を持つために補助金を廃止できない」というのなら、国が10分の10負担するとか、国が直接執行すればいいのです。
東京新聞は、知事会長のインタビューを載せていました。日本経済新聞と産経新聞は、義務教育や社会保障の補助率カット案が、解決案にならないことを解説していました。朝日新聞は「三位一体改革誰のために・ごみ行政」を、日本経済新聞社説は「地方への税源移譲で義務教育の再生を」を主張していました。良い主張です。
「中教審の議論を急ぎ、その結論を待って国庫負担金の一般財源化をする」という案を、書いている新聞もありました。この案は少し考えたら、まっとうでないことがわかります。中教審は会長以下、負担金廃止に反対です。ならば彼らは、負担金存続という結論を出すか、あるいは結論を先延ばしにするでしょう。そんな審議会に「負担金廃止の議論を急げ」と言っても・・・。(11月10日)
何人もの記者が、尋ねてきてくれます。みんな、同じ質問。「三位一体は、この先どうなるのでしょうか?」
記「それはわかっているんですが、毎日記事を書くと、抵抗勢力の記事ばかりなんですよ。ホンネは、族議員の方も、抵抗のポーズに疲れているんですがね・・」
全「民主主義は、手間と暇がかかるね」
記「時間をかけすぎですよ。みんな、改革はしなければならないと思っています。抵抗しながら、改革が潰れたら困るなあと。自民党も、改革つぶしの責任を負わされるし。早く、総理の裁断で改革を押し切ってほしいんですよ」
全「じゃあ、そのような記事を書いてよ」
記「うーん。私たちは政策記者でなく、政局記者ですからね。そっちの方が、デスクも通るし、売れるんですよ」
11日の読売新聞は「混迷の三位一体改革」(下)を、朝日新聞は「三位一体改革誰のために・生活保護も削減優先」を書いていました。
安心なのは、各紙とも抵抗勢力の記事を書きつつ、それについて批判的なことです。また、小泉総理と麻生大臣が、終止ぶれておられないことです。(11月11日)