連載「公共を創る」第274回

2026年10月15日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第274回「これまでの議論ー新しい課題に対応する行政への転換」が発行されました。
政府・市場・社会三元論で見ると、政府と市場との関係も「市場への介入」とは違ったものが見えてきます。政府は市場に対し、経済活動が機能する基盤整備や市場経済の欠陥の是正とともに、国民の生活を守り向上させるため、規制をかけ誘導をします。ここでは、長期にわたる経済停滞に関連した産業政策について述べます。

産業政策は明治以来、国を豊かにするという国家目標に向けた政府の主要な政策でした。政府がもたらす新しい知識や、業界の競争と保護を兼ね合わせた行政指導と民間の努力により、産業化と高度化に成功しました。日本は、優れた産業政策によって世界の最先端を行く経済大国になり、目的を達したのです。他方で、1980年代から西欧先進国で始まった新自由主義的改革を日本も採用し、「官から民へ」「小さな政府」へと舵かじを切りました。そこには、民営化などの官の改革のほかに、規制改革、事前調整から事後監視への転換など統治手法の変更も含まれていました。
こうして、政府の産業政策は縮小されました。ところが世界では、先進国も後発国も産業政策に力を入れていたのです。
「骨太の方針2026」(7月21日閣議決定)では、「主要先進国では、官民が連携して大規模かつ長期的な財政支出を伴う産業政策が大きな潮流。経済財政運営の在り方そのものに関するコペルニクス的転回であり、我が国も、こうした時代の変化を踏まえた国家運営が求められている」と方向転換が示されました。

これまで、政府・市場・社会三元論では企業がその活動を通じて世の中を支えていると説明しました。各種のサービスを提供するとともに、働く場を提供することによってです。そして生活者の側からも、安心の基礎には働く場の提供による雇用があります。企業は、経営と引き換えになっているはずの雇用の提供と所得の保障という役割を、十分には果たさなかったのです。

振り返ってみると、どこかで発想の転換はできなかったのでしょうか。それは、企業が新しい分野への投資をし、安定した雇用と給与を確保することと、政府も予算と人員の削減ばかり続けないよう軌道修正することです。もちろん、業績の悪い企業にそれを期待することは無理ですが、政府が何らかの手を打つことはできなかったのかという疑問は生じます。政府がなさねばならなかったのは、そのような発想の提示であり、自らの実行と企業への支援だったのではないでしょうか。

官共業三元論では、政府・市場・非営利活動の3部門が国民にサービスを提供します。その前に課題を見つけることがあります。これについても、三つの部門に属する主体がそれぞれ、あるいは協力し合って、世の中の課題を見つけ、対策を考えることになります。
NPOが困った人を支援し、世の中の課題に取り組んでいます。なぜ行政には孤立防止や子ども食堂への取り組みができなかったのでしょうか。非営利活動家の感度の良さと熱意の強さに、公務員たちが負けているのではないでしょうか。